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渋い男

 夢を見た。


 電車に乗っている。座席はない。目の前に魔法陣がある。地下神殿にあるやつだ。ピカッと光って、スケルトンがくるくる回りながらせり上がってきた。そして吊革を掴む。またスケルトンがせり上がる。別の吊革を掴む。どんどんスケルトンが出てくる。電車内はギューギュー詰めになった。



  ◇◇◇◇◇



 目が覚めた。疲れが取り切れていない。朝のルーチンをこなすが、ダルいので筋トレは省いた。


 ペプと一緒に魔術師ギルドへ向かう。ギルドではみんな忙しそうに作業していた。


 ヴァレリウスとエミリーは、そのまま召喚魔法陣があった部屋にいた。憔悴している。俺は二人をギルドホールへ連れて行った。


 テーブルの上に朝食を出した。大きな鍋で作った味の薄いイノシシのスープ、干し肉、パン、フルーツを並べた。ギルド員は食べたが、ヴァレリウスは受け付けないようだ。


 朝食を済ませて、何か手伝えないことがないか探す。捕虜を取り返しに襲撃してこないとも限らない。王都まで護衛するべきだろう。


 味方の遺体は棺桶に入れているが、棺桶の数が足りない。敵の死体は部屋の隅に積み上げている。外に出すと腐敗が早く進む。俺は石ころに冷気をエンチャントして、棺桶に入れ、積み上がった死体の側に置いた。


 爆発の矢で殺した死体があった。ルスランを庇って命を投げ出したやつだ。胸と腹が大きく抉れて大きな穴が空いている。損傷がエグい。これはなるべく人間相手には使いたくなかった。



 午後に王都からの馬車が十台、到着した。それぞれ二~三人の兵士が乗っている。兵士は黒光りするピカピカの鎧で揃えている。よくみるとどうやら大アリの甲殻でできているようだ。槍の先にも黒い刃が付いている。大アリかなんかの足でできているのか。


 馬車に捕虜と死体を積み込み、ギルド員全員で王都へ向かった。馬車の上で泣いてる者も多かった。



 王都に着くと、ヴァレリウスとルーカスは王へ謁見を命じられた。俺も一緒に行くことになっていた。


 王城に着くとすでに国王、宰相、リーゼロッテが謁見室で待っていた。リーゼロッテの部屋で会った護衛たちも同席している。王族はあとから来そうなもんだが、ハロン王国は小国だからなのか、こういうところで変に格式張らない。王女の部屋に窓から入ると怒られるが……。


 その他にもう一人、長身で銀髪の男がいる。年齢は俺の実年齢よりちょい上か。大アリの甲殻の鎧を着ている。王国軍軍団長のエドモントと紹介された。


 こちらからは俺とペプが参加だ。



 ヴァレリウスは昨夜起こったことをそのまま報告した。骨のお友達のことは内緒にしてくれた。


「またタクヤ殿に助けられたな。礼を言う。ところで、なぜ魔術師ギルドの襲撃を知ったのかな?」

「突然、シスターが現れて教えてくれた。半信半疑だったが、本当なら大変だと思い、駆けつけた」


 本当のことだが、客観的に見るとちょっと怪しいぞ、俺。


「彼女は、俺の居場所が分かるスキルの所有を認めた。おそらく今も探られているだろう。おそらく召喚者だ」

「もしかしたら、一年ほど前に召喚した者かも知れない。覚えているか? ルーカス」

「はい。火の魔法を放って逃げていきました。ずっと探させていましたが消息不明でした」


 俺とかシスターとか、召喚者にちょくちょく逃げられてるのか……。もしかしたらまだ他に逃げたやつがいるのか? すぐにダンジョンで死んだやつもいたし、効率めちゃめちゃ悪くないか……? 異世界から誘拐してきてこれじゃやばくない? しかも、俺はギョロ目に襲われて逃げるどころか死んでたかも知れなかった。



 王様は俺の返答で納得したようだ。俺のことを信用してくれたのかな。


「ダミアンよ、開戦の危険を冒してまで魔術師ギルドを襲った理由は何だと考える?」


 王様が宰相に聞いた。


「召喚魔方陣の破壊でしょう。シスターなる女はイグレヴ王国の間者かと思われます。召喚者の詳細についてイグレヴ王国に知られているでしょう。脅威と考えて奇襲を仕掛けてきたと考えられます」

「召喚者は、俺とシスターの他には何人いるんだ?」


 それにはルーカスが答える。


「他にはいない。全員死亡している。今ハロン王国にいる召喚者はタクヤだけだ」


——ってことは、俺が脅威と思われてこの騒ぎ……?


「フライターク伯爵のゾンビ計画を阻止する過程で、タクヤの能力がシスターを通じてイグレヴ王国に知られたものと考えられます」


 俺のせいにされそうなところをうまくヴァレリウスがフォローしてくれた。いい人だ。


「さて、魔術師ギルドのことだが……ダミアン」

「はっ。当王国の魔術師ギルドは、魔術師冒険者、魔法兵の育成はもちろんですが、ユニークスキル所持者の召喚と運用を目的としておりました。召喚魔方陣の破壊及び事実上の戦争状態であることを鑑みれば、戦争が終結するまで魔術師ギルドは解散、魔術師ギルド員を王国軍へ吸収することが最も望ましいかと」

「ヴァレリウスは異存ないな」

「はい。魔法兵の部隊長にルーカスを推薦致します」

「ヴァレリウス、おまえではないのか?」

「私の魔術は戦闘向きではありませんので……」

「ふむ、分かった。エドモントも異存ないな」

「御意に」


 渋いなこの男。


「タクヤ殿に参戦頂きたいのだが」

「断る。だが、イグレヴ王国のルスランとは少なからず因縁がある。やつが攻めてくるなら引き受けよう」


 渋い男がガタッと椅子の音を立てて向き直り、俺をにらんだ。


「あのなあ、タクヤとやら。国が攻めこまれてるんだぞ。戦わなきゃ国がなくなるんだぞ」


 渋い男が上から物を言う。ちょっとムカつくな。


「はっきり言うぞ。この国がどうなろうと俺には関係ない。居心地がいいから味方してるだけのことだ。そもそもお前ら、俺を元の世界から誘拐しておいて、詫びも何もなしに戦争に参加しろとかよく言えるな」


 エドモントが剣に手を掛けた。王と王女の護衛が反応する。エドモントが剣を抜いたらディスアームしようと思ったが、堪えたようだ。睨まれている。顔が怖い。悪者ではなさそうだがめっちゃ怖い。


「世界が滅ぶのは困るから魔族の退治は手伝ってやる。だがこの国が滅んでも俺は生きていける。俺には関係ない。俺は戦争はしない」


 目を逸らさずに言ってやった。そして席を立った。



「ペプ、あいつめっちゃ怖かったな」

「ナア」


 城を出て、緊張が解れたらだんだん腹立ってきた。リーゼロッテが話したがっていたようだが機会を失った。まあしょうがないか。後日でいいから戦争の方針とか聞きたい。


 もう日が暮れそうだ。昨日までの疲労が残っている。しばらくゆっくりしたい。差し当たって、今日は今から飲みに行く。昨日も飲んたけど。



 バーに入り、だいたい決まってきたいつもの席に座る。混んでなければペプをカウンターに乗せて座らせる。するとマスターが水と小魚を出してくれる。


 明日は休みにするつもりなので、強い酒、ウイスキーのロックを注文する。と言っても翌日の予定にかかわらずいつもこれだが。元の世界でサラリーマンをしていた時もそうだった。平日前でも構わずがんがん飲んでたから、よく二日酔いになって度々きつい一日を過ごしていた。もう酒は飲まないと何度も思った。不思議と夕方になるとまた飲みたくなったもんだ。


「魔術師ギルドの件は街で噂になっております。大変でしたな」

「ああ、強敵だった。逃がしちまった」


 強敵と書くけど友とは読まないタイプの男だ。前に戦った時より厄介になってた感じがした。


 他に客がいない時はペプに話しかける。


「なあペプ、ルスランに勝てそうになかったよ。どうすればよかったかな」


 ペプはゴロゴロと喉を鳴らしている。満足そうだ。俺の問いかけは無視だ。


 ルスランに攻撃が全く当たらなかった。あいつのパンチも俺にはノーダメージだったが、それは素手だったからだ。カールのように短剣に魔闘気を纏わせて刺されたら、プロテクションを貫通されるかもしれない。倒されてサブミッションに持ち込まれたらかなりヤバい。


 ショットガンなどの飛び道具からロックフォールのクリーンヒットに繋げれば勝てると思う。俺の得意のスタイルに持ち込む戦法だ。しかし、相手の体術が俺のレベルを遥かに上回っているのが怖い。やつのフィールドで戦ったらあっという間に殺されそうだ。


 なりふり構わず、数十発同時発射のショットガンやファイアボールのショットガンを撃てれば俺にかなり有利だ。しかし、昨日のような乱戦では無理だ。


「ペプ、明日からまた修行だな」


 ペプは俺の顔をじっと見て、長いまばたきをした。



 バーを出て、路地裏からハウスに入る。光る石ころを大量に消費したので補充しておく。その他武器を作ったり骨のお友達を増やしたりしてマナを使い、ペプと一緒に飲み直して寝た。




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