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背中の剣

 アーベルたちにはすぐ追いついた。というか、大地の入り口のキャンプにみんないた。とっくに帰ってると思ってた。



 魔法の武器を渡した冒険者が近づいてきた。


「タクヤさん、これはお返しします。ありがとうございました。少し使いました」


 聞くと、ファイアショットの杖で遠くのジャイアントを釣って倒していたところ、そのうちティラノサウルスも釣れたのて、全員でタコ殴りにしてなんとか倒したという。食料が増えたのでもう一泊しているとのこと。なぜかオレンジと梨と林檎の木がにょきにょき生えてきて実をつけたので、栄養のバランスもオッケーらしい。


「その木の隣に芋が埋まってるぞ」


 冒険者たちが掘り出すと、大きいジャガイモが沢山とれて、歓喜に湧いた。そして祭りが始まった。


「エミリー、ここで眠らせてもらおうか」

「そうしましょう」



 俺はキャンプの端の方にベッドロールを敷いた。エミリーの寝袋をバッグから出して渡した。ペプの水とごはんを出した。トイレは穴を掘って作った。


「タクヤさん、周りがうるさくて寝つけそうにありません。スリープをかけてください」


——自分じゃかけられないのか


 俺は試しに作っておいたスリープの杖を出し、エミリーの手に当てて魔法を撃った。しかし、三回撃っても眠らない。


「あれ?」


 エミリーは無言で俺の杖を奪い取り、自分の頭に当てて、倒れるように眠った。


——頭じゃなきゃ効かないのか……


 俺は杖を回収し、バッグに入れた。これ、アイテムを使うとは言え、無詠唱で瞬時に人を眠らせられるってヤバいな……念のため接触型の魔法にしたけど、遠隔からかけられるようにもできるんだよな。相当ヤバい……これは世の中に広めないようにしないと。


 俺は杖を使わずに自前でスリープがかけられるので、ペプを抱いて寝た。



  ◇◇◇◇◇



 夢を見た。


 見が覚めると、冒険者たちもエミリーもいなかった。置いて行かれたのだ。巨大な首長竜、ブラキオサウルスが俺を慰めてくれた。ペプはでかい恐竜に驚いて走って逃げた。


 俺は恐竜の頭に乗って、一番高いところまで持ち上げられた。高所恐怖症なので心臓がキュンとなって全身が震えた。そして滑って落ちた。


 落ちて、真下にいたステゴザウルスの背中に生えてる剣先に刺さった。



  ◇◇◇◇◇



 目が覚めた。みんないた。エミリーも起きている。ペプは寝た時と同じ体制で、俺の腕に頭を乗せていた。


「タクヤさん、私はもうご飯を頂きました。タクヤさんもどうですか?」


——ティラノサウルスの肉か……ちょっとな……


「ありがとう、俺には自分のメシがある」


 鞄から肉串と梨を出して食べた。


——このままここにいてもしょうがないな


「エミリー、帰ろうか」

「はい」


 冒険者の一人に声をかけて、先に帰ると告げた。何かごちゃごちゃ言ってるが、


「心配するな、帰り道のモンスターはやっつけておく」


 と言ったら納得したようだ。アーベルたちにも先に帰ると告げて、街へ向かった。



 帰路にはファイアトロールがいた。前と同じ位置だ。こんな変な突然変異種がそうポコポコ生まれてくる訳はない。生態系システムではないのだろうか? それともこれはこれで種として確立されているのだろうか? こんなところに一匹ずつ現れたら狩られて絶滅しそうだが。突然リポップするダンジョンシステムのなのだろう。


 って言うことは、俺の勘ではここを運営している魔族がいるはず。元の世界ではそういうシステムのゲームがあった。ダンジョンに勇者が攻めてくる。部屋を作ってモンスターや罠を設置して撃退する。あのゲームはかなりハマった。


「あれはできれば火を消さずに倒したいな」


 俺はペプをエミリーに任せ、スリープの杖を構えて走った。トロールの頭に触れ、


——スリープ!


 俺は胸を殴られて吹っ飛ばされた。


「タクヤさん、スリープは人間相手じゃないと効きませんよ」


 エミリーが半分呆れたように言った。いや、そういうの俺、知らないし。殴られた箇所は魔闘気の集中が間に合ったおかげもあり、無傷だ。コートは耐熱だが、表面が焦げた。



 俺はロングメイスを構えた。


――アイスショットガン!


 ファイアトロールの顔を凍り漬けにした。そしてロングメイスを思い切り、振りかぶって頭に打ち下ろした。ファイアトロールは地面にうつ伏せに倒れ、動かなくなった。火は付いたままだ。俺はそのままストレージに入れた。



 それから先は、トロールが二匹、大ネズミが一匹出たが、問題なく丸焦げにした。光る石ころを多めに投げて歩き、無事に洞窟を出た。

 


 地上に出たら、太陽がほぼ真上を差していた。俺たちは冒険者ギルドへ行った。


 普段は数人がギルドホールにたむろしているものだが、前回に引き続き今日もがらーんとしている。みんなトロールケイブにいるからな。


「すまない、フィリーネはいるか?」

「お待ちくださいー」


 俺たちは奥の部屋へ通された。フィリーネがいた。エミリーが驚いて言う。


「叔母さん?!」

「エミリーね。久しぶり」

「こんなところで何をしてるんですか?」

「ルーンビアから派遣されたのよ。貴方こそ何をやってるの? 冒険者になりたければルーンビアの方がいいんじゃない?」


 何やら複雑な話があるらしい。俺はしばらく聞いていたが、止まりそうにないので口を挟んだ。


「すまない、先に用事を済ませたいんだがいいだろうか? 燃えているファイアトロールの死体がある」


 フィリーネは俺の方に向き直って聞き直した。


「燃えてる?」

「ああ、火を消さないように倒して持ってきた」

「倉庫には置けないわね。受け取りの準備が出来たら声をかけるから、それまで持っててくれる?」

「いいだろう。だがそれとは別に、トロールの死体を三体、今、換金してくれ」

「ありがたいわ。トロールの肉は貴族に高く売れるのよ」


 倉庫にトロールを置いて、金貨十二枚を受け取り、エミリーに半分渡した。


「こんなにもらっていいんですか?」

「当たり前だろう。ファイアトロールも換金出来たら渡すよ」

「冒険者って儲かるんですね……いえ、タクヤさんが何でも持って帰れるからですね……」



 受付のオネーチャン――未だに名前がわからないので受子ちゃんと呼ぶ――とフィリーネに、トロールケイブの報告をした。


「そうすると、そのブロック状の部屋が回転しているわけね」

「うむ、巨大な建造物だ。部屋がその外周を回っていると考えられる」

「聞いたことないわ。この王国のダンジョンって独特ね」

「ルーンビアは違うのか?」

「ええ、至って普通の、洞窟や地下迷宮のようなものよ」


 普通ってのがわからないようで、なんとなくわかる。


 立体ダンジョンの攻略情報はないのか。下に降りてみるしかないのかな。冒険だ。怖い。高いところで、地面が動く。怖い。命綱が欲しい。命綱を結ぶところがないが。あ、あの鉄格子がある。そうすると罠の部屋から遠くへ行けないな。だめか。



「タクヤさん、お腹が減りました」

「ギルドホールでランチにしようか」

「ナア」


 俺たちはギルドホールのテーブルに座った。鞄経由でストレージから猪のステーキ、野菜と魚のスープ、パンをテーブルに並べた。無論、鞄から熱々のスープが入ったボウル皿が出てくる様は不自然なのでこっそり出した。


「エミリー、魔術師ギルドでは、マジックアイテムのマナの充填ってどうやるんだ?」

「チャージっていう、自分のマナを移す呪文があります」

「へえ、ちょっとやってみてくれないか?」


 エミリーは俺の手をとって詠唱した。


「#####チャージ」


 手がジワーッと暖かくなった。


「タクヤさんにはマナが流れませんね」

「そうなのか。さっきマナを使ったので満タンではないはずだが」


 俺はIDEを開いてみた。このスキルも秘密なのでこっそりだ。呪文エリアにチャージ魔法のアイコンが増えてた。IDEから戻ってきたら、エミリーが俺の顔を覗き込んでいた。


「今……俺、変な顔してたか?」

「タクヤさんは魔法をそうやって覚えるんですね。スリープもそれで覚えたんですね」


——バレてる……


「うむ、まあ俺には使えないけどな」

「じゃあいったいなんのために……そもそもエンチャンターなんだから、元からチャージ出来ましたよね?」

「俺のやり方は他人とちょっと違うみたいなので興味があって……」


 うやむやにした。それはそうと、チャージ魔法にはものすごい使い道があるはず。一人でじっくりコード解析するのが楽しみだ。



「冒険者育成のために、マジックアイテムを懸賞にしてクエストにしようと思ってな。それで、マジックアイテムのマナの充填はどうやるのかと聞いたんだ。マナはいずれなくなるからな」

「どんなマジックアイテムを提供するんですか?」

「剣は比較的マナがすぐ切れるからやめておいて、敏捷性アップのアクセサリーか、魔術師用スタッフに攻撃魔法かライトをエンチャントするか……」

「それはいいですね!」


 そんな話をしていると、アーベルたちが帰ってきた。テーブルに並べられた食事を見てつぶやく。


「うまそうだなぁ」


 俺は笑いながら、


「やるよ」


 と言って、鞄からヒートプレートとスープ入りの大きい鍋を取り出し、テーブルに設置した。パンと生肉、皿も出した。


 酒が好きそうなカールのために、酒樽とコップも並べた。カールが飛びついてきたので俺と二人で飲み始めた。


 他の冒険者たちも帰ってきて、次々と合流した。がたいのいい冒険者の男に金を握らせ、近くの居酒屋から買えるだけの酒とメシを買ってこさせた。


 そして大宴会となった。



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