表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/145

防御も大事

 フォートモーラーは、古い砦をベースにしたダンジョンだ。石造りの砦の様相で、地下へ伸びている。地下十二階まで踏破されているが、何階まであるのかはわからない。十三階への扉をバルログが守護していているらしい。いまだに誰も倒せていないと聞いた。


 俺の記憶ではバルログは火の悪魔だ。全身から業火を噴き出し、片手に炎の剣、片手に炎の鞭を持っている。身体は大きく、翼を持っていて飛ぶことができる。エルフの天敵と言われている。


 ダンジョン化する前のフォートモーラーの砦は地下一階か二階程度だったのだろう。魔族がそれを拡張し、モンスターと罠を配置し、ダンジョンにした。フォートモーラーでは魔族の存在は確認されていない。いるとしたら最下層だろう。


 左肩にペプを乗せ、右手に剣を持って進んだ。地下二階までは特に何もなかった。比較的広い通路と広間があった。壁に松明が掛けてある。外側から見ると城塞があったが、すぐ地下に入ったせいか、その入り口は見当たらなかった。


 地下三階から先は、何かある、ここ絶対何がある、と思わせるような、おどろおどろしい通路が伸びている。松明もこの先にはない。


「待って、罠です」


 エミリーは指をさした。俺には何も見えない。


 光る石ころを投げた。石ころに、というよりおそらくエンチャントされたマナに反応して罠が稼働し、壁から火が出た。


「タクヤさん、なんですかその魔法?」

「ただのライトだ」

「そんなの見たことないですよ。ライトを放り投げるなんて」

「ただの石ころだ」


 ダイヤモンドと変わらないただの石っころだ。


 マナに反応ことはするって、なぜかマナが一切無い不思議体質の俺は罠を素通りできるのかなあ? やってみたらダメだった。炎で袖が焦げた。そういや手と足と首にマジックアイテムが付いてる。プロテクションもかけてる。


 右腕なら熱に耐えられるので、盾で炎の射出口を塞いで歩いていった。


「武器だけじゃなく盾も出てくるんですね」

「まあな、防御も大事だ」


 通路を出ると大オオカミが二匹いて、襲い掛かってきた。通路で光る石ころを投げたら、気付いて襲ってくると思ったのに、待ってたのか? 罠があるのを知ってたのか? 


 マジックアローとファイアボルトを混ぜて撃ち込み、剣で仕留める。ストレージショットを当てれば、ペプを抱いたままでもこの程度の敵は問題ない。


 こんな感じでどんどん進んでいった。分かれ道もあったが、まだこの階は迷路って程じゃなかった。思ったより広くて、合計で二十匹の大オオカミを狩った。それ以外は大ネズミとスライムだった。ほぼ無視した。


 地下四階も似たような感じだった。手練のパーティならまず死ぬどころか怪我することもないだろう。問題は地下五階に降りる階段の前だった。


 守護モンスターがいた。


 俺は柱の陰から観察した。キマイラ、だと思う。頭がライオンで胴体がたぶん山羊、尻尾や胸など、要所要所が鱗に覆われている。とにかくなんか混ざってればキメラって言われている昨今、オリジナルが何と何が混ざってたかは覚えてないが、一つはっきり覚えてるのは、あいつは火を吐く事だ。


 キマイラの側に、黒焦げになった人間のものと思われる死体がある。


「エミリー、あれかどうか……わかんないよな……」

「はい……」


 倒すしかないか。死体だけストレージに入れて速攻戻ってくることもできるけど。


「あいつ、火を吹くと思うんだが、なんか便利な魔法ないか?」

「アイスボールならあります」


 ここからアイスボールを撃ったら、あいつどうするかな? 向かってくるかな? 門番だから避けて終わりかな? さてどうするかな。俺、結構、優柔不断なんだよね。普段は即断できるんだけど、一度迷い始めるとずっと答えが出ないタイプ。


 あいつが吐いてくるのがファイアボールなら余裕だけど、ブレスを吐かれたらストレージに吸い込めるかどうか、疑問だ。今回はミッションがあるから、遊ばず、敵に攻撃させずに倒そうか。


 よし、こうしよう、吸い込めなかったら、燃やされながら死体を回収して逃げる。


 それより気になるのは、あいつは頭だけライオン、先日襲われたグリフォンは胴体がライオン。もしかして……って、違うか。


 俺はペプをエミリーに預け、持ってる武器の中で一番攻撃力がある、トゲハルバードを構えた。そして小走りに走った。確か、棒高跳びの選手がこんな感じのはずだ。だんだん大股になって距離感を掴んで、振りかぶったところに、キマイラが口を開く。


——ストレージ!


 飛んできたのはファイアボールだった。それなら問題ない。インプのハメ技を使う。驚いたキマイラのライオン頭にハルバードの刃がめり込む。そしてトゲが発動。


 あっさり勝った。



「エミリー、どうだ?」

「うん、間違いない、召喚者です。名前は知りませんが」


 くそ、しょうがない、死体を持って帰るか。同じ召喚者だ。せめて埋葬してやりたい。また一つストレージ魔法の能力がバレる……。


「なに? 死体をどうしたんですか?」

「埋葬するために持って帰る」

「そういうこともできるんですね……秘密が多いですね」

「保身のためだ」

「そうですね……」


 バレたついでにキマイラの死体ももらった。身体は山羊だから食べられるよな。あれ? 山羊の肉って食べないっけ? 羊はよく食べたけど。元の世界で食べれたラムもマトンも羊だよな。山羊って食べない? 食べないか。何しろ頭がライオンだしな。切り離してグリフォンの胴体と合わせてみたい。


 ダンジョンの帰り道は楽ちんだった。ただ、お互い口数が少なかった。



 ダンジョンから出て、街に戻ったのは日が暮れてからだった。


「話し合う必要があるかな?」

「ええ」


 俺達は居酒屋に入った。


「エミリーは全然活躍しなかったな」

「ええ? それ言いますか。タクヤさんが全部片付けたからじゃないですか。あなた、隠し事多過ぎですよ」


 軽いジャブのつもりがめっちゃ反撃きた。


「で、死んだ召喚者についてはどう思う?」

「キマイラにやられたとみて間違いないでしょうね。そして落とした剣をアーベルが拾った」

「剣の性能のおかげで快進撃をしていたが、ファイアボールを吐く相手には敵わなかった」

「剣の強さを自分の強さと勘違いしたんでしょうね」


 しかし一つ気になる事がある。召喚者が剣を携えて召喚されたことだ。元の世界には、俺と同じ世界とは限らないが、あんな切れ味の剣はないはずだ。元々持っていたとしたらおそらく戦士か剣士、ファイアボール程度では死なないだろう。剣を持っているユニークスキルっていうのも何か違う気がする。


 ってことは幼女神にもらったのか? するとあの剣は、神が作った剣。最強の剣とかなんでも切れる剣とかリクエストしたんだろうか。防御力はなさそうだし。幼女神に聞けるなら手っ取り早いな。空かなんかに向かって呼んだらくるかな?


——って、俺、幼女神の名前知らねえ……


 まあ、それはいいだろ。アーベルはいいやつそうだし。


「で、どう報告するつもりだ?」

「そうね、オーガについてはタクヤさんのストーリーでいいです。召喚者については、それらしき死体はあったけどキマイラがいて確認できなかった」

「俺については?」

「そうですね、真面目に修行してる魔法が使えない冒険者、ってところでしょうか」

「俺のスキルを秘密にしてくれるのか?」

「報告したら間違いなく大騒ぎになって戦争に巻き込まれます。ヴァレリウスは裏表がない人だからルーカスにも情報を教えるはずです」


 ルーカスは副ギルド長だったっけ。


「エミリーはこれからどうするつもりなんだ?」

「今までと同じですよ。ヴァレリウスをサポートしながら、強くなって、戦争を防ぎます。タクヤさんは?」

「俺か。実のところ、はっきりとした目的はないんだ。魔族を倒さないと世界が滅ぶって言われたから強くなろうとしているだけで、誰かが魔族を倒してくれたらそれでいいんだ。戦争も巻き込まれない限りはどうでもいい。遠くに逃げるだけだ」

「力があるのに、積極的に使おうとは思わないんですね」

「俺はもう若くない。もともと体力もないんだ。鍛えたところで、限界はすぐ見えるだろう。俺よりも若い適任者がいるはずだ」

「若くないって、十分若いじゃないですか」

「お世辞を言っても何も出ないぞ。ああ、ダンジョンで見つけたアクセサリーをあげようか」

「お世辞じゃありませんよ。ほら」


 エミリーは俺に手鏡を渡した。ものすごく高価な物のはずだ。土魔法で作れるんだろうか?


 俺は手鏡の中を覗いてみた。


「……え? これは…………?」


 手鏡の中の俺の顔は、三十代前半の男の顔だった。皺が消えている。皮膚も張っている。残念ながらイケメンではないが。怖い顔だ。しかし、間違いなく俺の顔だ。


「……魔法の鏡……?」

「違いますよ」


 若返った。毎日、若返りヒールをかけてるからか。やばい、世の中の理をひっくり返した。神様に怒られないだろうか? 人間どもが俺の血の奪い合いをするかも知れない。吸血鬼だという噂が流れるかも知れない。


「怖い顔になってますよ? 大丈夫ですか?」

「いや、ちょっと、言葉が出ない……」

「もしかして、若返ったんですか?」


 この娘、鋭い。まあ、普通、話の流れで分かるか。話の内容がトンデモだから普通は信じないと思うが。


「ああ、若返ってる」


 隠しても外見で丸わかりなので正直に言った。


「召喚の影響ですか?」

「いや、スキルだ。心当たりはある」

「本当にいろいろ隠してるんですね。もう、魔族なんか簡単に倒せるんじゃないですか?」


 簡単ではなかったが一匹やっつけた。これも秘密にしている。有名人になって、若返り、不老不死とか噂されたら街に入れなくなる。


「そのうち、若返りすぎて赤ちゃんになるかも知れない」

「もう。その時はわたしが育ててあげますよ」


 あ、なんかこういう会話いいな。しばらくしてなかった。惚れてまうやろ。あれ、ちょっとまて、若返ったってことは、恋愛しても不自然じゃないのか。既婚者だけど。なんだか俺の目から見える世界がほんのり明るさを増した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ