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熱い

「なあペプ、どう思った?」

「ナア」


 俺はペプのお腹に顔を埋めた。スーハーした。猫のお腹に顔を埋めている時が一番幸せだ。ペプは嫌がらない。なんてできた猫だ。充分に堪能できたら、ペプが俺の顎を舐め始めた。


 いろいろわかったことを整理する。


 まずは、元の世界には戻れない。いや、戻る方法は今のところ無い、くらいに考えておこうか。戻る努力はするし、こっちの世界でこのまま一生を過ごすための努力もする。


 次に、俺は魔法は使えない。実際マナを持っててストレージ魔法とヒール魔法を使ってるんだが、俺には魔法が使えないってことになるらしい。基本五領域以外の魔法が使えるのかも知れないって言われたが、ヒール魔法が使えるのに魔法が使えないっていうことだから、そもそもなんか違うんだろう。詠唱無しで使えるのも謎だ。俺のは魔法じゃなくて違う何かだろうか? 超能力? エスパーか。サイキックの方がかっこいいか。


 しかし、インプのファイアボールは学習した。魔法だよな。発射できないけど。あ、できないっていうか、試してないや。やってみるか……。


 俺はIDEを開いて、ファイアボールのアイコンを、下部の魔法発動領域にコピーした。赤い炎のマークのアイコンだ。そしてハウスの外に出て、木に向かって右手を前に出し、魔法を発射しようと集中した。マナを赤いイメージに変換して右手に集める……


——あっちいい!


 右手が燃えた。比喩的に。実際は発火しなかった。強烈に熱くなっただけだ。ボール的なものの発射もしない。咄嗟に水で冷やし、その後でヒールをした。


——やっべえ、危険だ


 俺はハウスに入り、IDEを開いて、ファイアボールのアイコンを元に戻した。どこで間違ったんだろう。そもそも無理なのか。



 考察に戻る。


 土魔法が使えなかったのは予想外だった。ブラインドは土魔法じゃないのか。っていうかIDEにも出てこない。この魔法はなんだ? 超能力か? そういうの、この世界にあるのか? わけわからないからいったんブラインドのことは省いて考えようか……。


 そうすると、俺の魔法も魔法には違いないが、一般的な魔法とはどうも違うようだ。主にやり方が。詠唱の代わりにマナの流れをイメージして使ったり、ストレージに関しては集中しなくても思った瞬間に使えたり。


「ペプ、謎だよ」


 ペプは大あくびで答えた。


 あとは、ユニークスキルってやつだ。召喚者にはもれなくついているらしい。俺が幼女神からもらったストレージ魔法、これは俺が召喚者として選ばれてからもらった魔法だから、ユニークスキルじゃないよな。順番的に、俺が何かスキルを持っているから呼ぶ、呼ぶ途中で死んだお詫びに神様がストレージ魔法をプレゼントっていうことのはず。じゃあ俺のユニークスキルって……? ブラインドか。地味だな……そんな地味なやつ呼ぶ?


 強制的に拉致されて連れてこられたことについては、俺は気にしていない。怒って当然のところだが、前の世界でのサラリーマン生活に嫌気がさしてたのもあるだろう。剣と魔法の世界には憧れていた。と言ってもこの年齢で連れてこられても勇者にはとてもなれないと思うので、憧れとは全然違うことになってはいる。


 ストレージハウスがなかったらまた違ったかも知れない。ハウスがあれば野獣や盗賊に襲われるリスクがなくなる。なにより虫と不衛生は我慢できない。この世界をまるごとクリーンに変えるのはいくらなんでも無理なので、俺だけでもハウスの中で衛生的に生きていこうと思う。そろそろ加齢臭も気になるので、アロマに手を出してみたい。


 やはり一番は便所問題だ。幸いストレージの中にシャワールーム兼トイレを作ったから、トイレの度に外に出るような事にはなってない。しかし紙がない。布ってのは気分的になんか嫌だ。なんだろう、残るからかな。トイレットペーパーは水で分解されるようにできている。その辺に捨てても、雨が降れば無くなる。しかし布は残る。燃やせば無くなるが、それは拭いとったものも一緒に燃やすことになる。煙を吸いたくない。


 できればウォシュレットが欲しい。元の世界では自宅でも会社でもウォシュレットが当然あった。これに慣れてしまうと、ウォシュレットが無い生活が厳しい。不衛生と言うよりもスッキリ感の問題だ。魔法でなんとかできないものだろうか? そもそもまともな便器が無いからな……。


 それはそれとして……ショックだったのは、魔族を倒さないと魔王が現れて世界が滅ぶということ。そういう風に言われて、自分では何も努力しないで他人に運命を任せるのって、俺はだめなんだよなあ。俺が魔族を倒せるとは思わないけど、やるだけやってみないと。どうせあと二、三十年で寿命なんだけどな、魔王さんこんにちは、俺は寿命でさようなら、みたいなことにもなりそうだが。


 まあ、帰るための魔法を探すことと、魔族に対抗するために強くなることってのはそんなにかけ離れちゃいない。世界中駆け回って敵倒してレベルアップしていけばいいんだろう、パターン的に。ダンジョンの攻略方法も覚えなきゃ。ヨーギのダンジョンに行ってみるかな。


 そういえば寿命で思い出したが、ヒールの細胞の若返りのコード。多分、テロメアとかを回復させてるんだよな。回復量を増やしたら細胞自体が若返って、自己治癒しない俺の膝の痛みとか治るんじゃね? 試してみよう。


 ってわけで早速IDEを開く。ヒールのコードの該当部分を開く。


 この魔法のプログラムコードはところどころしか理解できない。ロシア語、フランス語、英語、数字が混ざった文章で書かれていて、英語の部分しか理解できない、数字は弄れる、例えればそういう感じだ。ヒールのコードの該当部分は幸運なことに英語のようなので、なんとかなりそうだ。ちなみに話し言葉の言語とは丸っきり違う。詠唱で使う魔法言語なのかも知れない。その可能性は高いな。


 魔法実行スロットにセットされたヒールのコードを修正し、IDEを閉じた。そしてヒールを身体中に巡らせると……マナが一気になくなった……。


——うお! なにこれ!


 なんか変な物をいじってしまったかと思ったが、もしかしてこれ、当たりか?


 該当パラメータの値を緩やかな値に書き直した。マナがないので実験はまたあとにする。


 考えがまとまったので、外に出て歩き始めた。何しろハウスに引き籠もっていても暇で。ゲーム機が欲しいなあ。ネットに繋がってて対戦もできて、新作映画もレンタルして見れるやつ。


 日が暮れる前にキャンプ地を見つけ、牡丹鍋を作った。猪肉と、市場で買っておいた鍋に入れるっぽい野菜類とキノコ類。出汁が全然足りなくて、塩をいっぱいかけて食べた。鍋はずっと火にかけておいて、寝る前にストレージへ。また煮詰めて出汁にしよう。


 寝る前にヒールをかけた。マナ使用量は以前より少し増えたが、実用には全く問題ない程度。足の疲れがとれてすっきり。


 読み書きの勉強をしながら寝た。





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