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召喚者

 目が覚めて、朝のルーチンをこなした。ペプと一緒に朝食を食べた。なんとなくまだだるい。しばらくごろごろして、もう一度寝た。



  ◇◇◇◇◇



 午後は、ずっと行こうと思ってて行けなかった魔法屋に行こうと思う。魔法の何かを扱っているが、詳しくは分からない。きっと王都の方がずっと充実してるんだろうけど、俺は魔法のことは何もわからないので、とりあえずヨーギの街の店に行ってみる。


 魔法屋は街の中心から少し外れた、どちらかというと高級ではない店が建ち並ぶ通りの入り口にある。通りを入って行くと、元の世界で言うところのスナックがある。とは言ってもこの街自体が栄えているわけではないので、軒数は少ない。俺は結婚してからはそういう酒の飲み方を止めたので久しく行ってない。まあ、この世界のスナックに行っても会話が弾むはずがなく、楽しめないだろう。そしてきっと店を出るときに思うんだ、妻に会いたいと。



 魔法屋に入ろうとしたら、店から他の客が出てきた。二人組の男。お揃いの深緑のローブ姿、いかにも魔術師ですという雰囲気。魔術師ギルドの人間に違いない、そう思ったらピクッと反応してしまった。


「君は……確か……」 


 俺は知らないふりをして通り過ぎようとしたが、


「待ってくれ、君は召喚者だろう? 話をしたい」

 

 まあ、猫連れて歩いてるのでバレバレか。っていうか俺は召喚者って呼ばれてるのか。俺は無言で振り向いた。


「私は魔術師ギルドのギルド長をしているヴァレリウスという。こちらは補佐で上級魔術師のルーカス。君は覚えていないだろうが、君とその猫を召喚したのは私なんだ」

「おまえが……?」


 こいつのせいで一回死んで、妻と離ればなれになって、殺されかけたのか。でも、ペプとまた一緒にいられるし、ストレージ魔法が便利だし、仕事しないでいいし、結局生きて人生を満喫してるし、いろいろ不便だけど、特に恨みとかは感じないな。


「イーサンはどうした? 君もイーサンも行方が知れず困っていたんだ」

「イーサン?」

「召喚した日に君の世話をするよう言いつけたんだが」


 ギョロ目か。


「逃げた」


 嘘だ。俺のストレージに入ってる。


「そうか。金貨と剣に目が眩んだか……。君はその後はどうしていた?」

「俺はこの街の周りで野宿して暮らしている」

「そうか。どうやら君には苦労を強いてしまったようだ。本意ではない。謝罪と説明をしたい。明日、魔術師ギルドへ来てもらえないだろうか」


 ヴァレリウスは信用できそうだ。ひょっとしたら元の世界に帰してもらえるかも。話を聞くだけ聞いてみるか。しかし、隣りにいるやつが悪者顔だ。友達になりたくないな。もっとも、顔の怖さなら俺のほうが上だろう。元の世界でさんざん言われてきた。


「わかった」


 俺は短く返答し、その場を立ち去った。いや、魔法屋に行きたかったんだけど、雰囲気的にスルーするしかないじゃん?



 街で食料を買い増して、今日のうちに魔術師ギルドへ向かうこととする。ギルドは街道を四、五時間歩いた辺りにある。そのまま街道を真っ直ぐ行けば王都に着く。馬車もあるが、なるべく人と接触したくないので今まで使わなかった。しかし、魔術師ギルドに見つかったからもういいのか。


 乗合馬車でヨーギの街まで行く。ヨーギの手前に魔術師ギルドがあるんだが、先に地下神殿に行きたいのでスルーした。



 地下神殿では、前回と同じようにモンスターが沸いていた。まず一匹目のインプをハメ技で殺す。二部屋目のインプは、少し離れて何発もファイアボールを撃たせ、ストレージに吸い込む。十発吸い込んだところで弾切れのようだ。近付いてサクッと剣で倒した。


 第三の部屋は簡単だった。新しいスケルトンがいたので、ストレージに吸い込んだ。


 今日は下の階層まで攻略するつもりはない。魔石を集めて帰る。前回は大きめの魔石からゲットしたが、今日は持っていっても明るさにあまり影響しそうにない小さい魔石を中心にゲットした。


 ふふふ……、また金が増えた。まあ、そうは言っても換金が問題だが。冒険者ギルドでたくさん換金するとどこでどうやって手に入れたのか怪しまれそう。魔術師ギルドは買い取ってくれるだろうか? しかしあれだ、魔石を売ったら、ダンジョンを攻略する力がある、もしくはなんかヤバい特殊能力を持っていると思われそうだ。後者なんだが。


 そう考えると、結局換金できないのか…… 派手に金を使うのはやめよう……。


 地下神殿を出て、魔術師ギルドの方へ歩いて行き、日が暮れたらハウスに入った。今日は戦ったし結構歩いたので足が痛い。特に左膝が力が抜けるような痛み。


 歩きながら、ヒールについて考えてみたんだが、自己治癒を促進ってことは、筋トレで壊した筋肉、筋線維の修復にも効くよな。そうするとそこで超回復が発生するわけで……筋トレとヒールを繰り返せば俺も簡単にマッチョマンになれる?


 以前にジムに通っていた時に、筋トレの効果についてはガッツリ調べた。筋肉を強くするためには、まずは筋肉を効果的に壊す。すると成長ホルモンやら男性ホルモンやらが出てきて、そこにタンパク質を送り込んでやると筋線維が修復される。修復の時に、以前より強くしとかないとヤバいって筋肉が言うらしい。それが超回復ってやつだ。そうしてムキムキになっていく。だいたいこんな感じのはず。インターネットがないので確認できない。スマホでいいから欲しい。


 筋トレ、というか筋肉を作るのに一番難しいのが、タンパク質の摂取だ。基本的に通常の食事だけではタンパク質は足りない。最大の効果を得るためには、通常の食事を減らして、その分タンパク質だけを摂取するという方法が必要になる。ところがこの世界、マナがタンパク質を生み出しているのではないか、と考えられる。もしくはタンパク質を飛ばして直接細胞を修復しているか。そうなると超回復するのかどうか分からないんだけど。


 とりあえず、今日使った足と膝を中心に体全体をヒールする。痛みは消えた。前より強くなってるかどうかはさっぱり分らない。


 試しに腕立て伏せと腹筋をして、またヒールする。分らない。突然ムキムキになってもおかしい。ちょっとずつにするか。筋肉が急に増えたら皮膚が破けるし。あ、それもヒールすればいいのか……?


 とりあえず腕立て、腹筋してヒールってのを朝のルーチンに加えることにする。筋力がないからすっげえ短時間で済むし……。


 ペプにご飯をあげるのを忘れてた。俺も食事して、マットの上でゴロゴロしながら、読み書きの勉強をしたりして、ペプと一緒に寝た。





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