↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/145

洞窟

お読みいただきありがとうございます。ブックマークや評価を頂けると本当に励みになります。是非よろしくお願いします。

 夢を見た。


 戦闘で左肘から先を失ってしまった。ヒール魔法で治したが、やり過ぎて左腕が何本も生えてきた。生えてきた左腕は実は作り物で、抜くと中からビームガンが生えている。左手に何本もビームガンが付いてるが、一斉発射しかできないため、撃つと明後日の方向にもビームが飛んでいく、とても使いにくい代物であった。



  ◇◇◇◇◇



 朝のルーチンをこなしてから、シャワーを浴びた。桶に焼け石で温水を作り、頭上から流した。思ったよりたくさんの焼け石が必要だった。そして石の汚れでシャワーが濁る。一応作り貯めをしておくが、鍋で湯を沸かした方がいいのかな。



 シスターと待ち合わせのため、冒険者ギルドへ向かった。鎧を着て、帯剣して、ヘルメットとバックラーを持って、空の鞄を肩からかけて、ペプを抱いて歩く。帯剣なんて初めてだ。思ったよりぶらんぶらんする。歩きにくい。めんどくさい依頼を受けてしまった。ちょっと後悔し始めた。でも、ああいうタイプに頼まれると断れないんだよな。


 何か期待しているわけじゃない。下心は全くありません。元の世界に妻がいるし。もう色恋沙汰で盛り上がる年齢でもない。純粋に助けてあげたいと思うだけだ。美人だから。


 冒険者ギルド前についたら、もうシスターが待っていた。鞄一つだ。身軽だな……。


「おはよう、シスター」

「おはよう。ペプちゃんも一緒にいくのね」

「ああ、いつでもいっしょだ」


 目的地はそう遠くないところにあるらしい。てくてく歩いて行く。しかし荷物が重い。歩いてるだけで汗が出る。魔法の鞄作戦にすればよかったか。でもこの子、なんとなく勘が良さそうだから、ストレージ魔法がばれそうで危険なんだよな。


——ペプを置いてきたことにすればよかったか……


 いや、そうすると設定が崩れる。ああ、なんかもう……。



「シスター、ヒール魔法ってかけすぎるとどうなる?」

「どうもならないわよ。マナがもったいないだけよ」

「手足が切れても治るのか?」

「治らないわよ。病気も治らないわよ」


 なるほど、そういうもんか。ヒールの仕組みが自己治癒力の補助と促進と考えると、ヒールの効果は、適切な治療と時間をかけて治癒できる範囲、を超えないんだろう。つまり、腕を切られたら必ず拾って逃げなきゃダメだ。


「鎧を着ると雰囲気変わるわね」

「そう? どんな風に?」

「強そうに見えるわよ」

「それで、今日はどうして俺が必要なんだ?」

「ゾンビ以外にモンスターがいそうなの」


 モンスター退治のヘルプか。そもそも俺って戦えるって言ったっけ? 盗賊を殲滅したとか思ってるのかな? やったことはやったけど。ディスアームとかロックフォールとかはこの子には隠しておきたい。


 歩いていたら目的地についた。洞窟だ。暗い穴がぽっかり空いている。何かいそうな気配はないが、まあいるんだろう。


「ペプ、ちょっとここで待ってて」


 そう言いながらこっそりハウスに入れる。そしてメットを被り、バックラーを腕に固定し、剣を抜き、ストレージから松明を出した。準備オッケーだ。


「先に行って」


 先を歩かされた。まあ、女性を庇うのは当たり前か。


 洞窟は一本道らしい。カーブしていて先が見えないが、分かれ道はなさそうだ。もう陽の光は届かない。松明を頼りに歩いて行くと、前方の闇の中で何かが動いた。


 暗闇から蜘蛛が現れた。黒い。そしてデカい。トイプードルくらいある。細めのボディに長い八本の脚が生えている。尻に黄色いラインが入ってる。手足が茶色いのがグロさをソソる。


「いや、ちょっと待て、無理! 蜘蛛無理!」

「ちょっと! なんとかしてよ! あたし昆虫ダメなの! 昆虫全部ダメなの!!」


 蜘蛛は昆虫ではないが、まあわかる。俺は松明の火で牽制しつつ、少しずつ後ろに下がる。グロい。脚から生えてる毛がキモい。背中がゾワゾワする。


「ちょっと! このために連れてきたんだからなんとかして! 男の子でしょ!?」

 

 もう男の子って年齢でもないが、生理的に厳しい。俺も蜘蛛と昆虫は苦手だ。いや、デカくなきゃいいよ? 一部の昆虫はデカくなくてもダメだけど。


「いったん出るぞ」


 とりあえず、明るい所まで撤退。


「戦えないんだよな? じゃあここで待っててくれ」


 一人ならなんてことはない。ストレージからボルトを発射。予備動作なしで発射される矢に蜘蛛は反応できない。さくっと刺さった。


 ボルトは発射時に、運動方向をうまく合わせて思った通りに狙いが決められる。おかげでかなりの命中精度だ。百発百中と言ってもいいかも知れない。


 動きを止めた蜘蛛に剣でトドメをさす。ボルトだけストレージに吸い込んで証拠隠滅。


 さて、パターンとしては一匹で済むわけないんだよな……。


 俺は暗いのを嫌って、ストレージから火がついた薪を出し、左右の壁に投げた。たいして明るくはならないが蜘蛛がいれはわかるはずだ。警戒しながら進む。


 次の蜘蛛が現れた。地面を這っている。壁と天井も警戒していたんだが、もしかしてこいつら、自重でのせいで壁に張り付けないんじゃないだろうか?


 一匹目をさくっと殺したが、二匹目が俺の顔めがけて飛んできた! バックラーで防いで落としてから、反射的にロックフォールを落とした。怖い。相当ヤバい。


 より警戒を強めて歩いて行き、五匹ほど飛びかかられる前に倒したところで、洞窟内の蜘蛛の巣が増えてきた。蜘蛛の巣というが、実際は巣として機能していない残骸だ。壁と天井からレースカーテンのようにぶら下がっている。そしてそのすぐ奥に、機能している蜘蛛の巣があるんだろう。何が居るかだいたい想像がつく。これもパターンだ。お約束だ。果たして、そいつはいた。


 上下二段、四つずつ並んだ黒い目に松明の炎が反射して光る。その下には左右に分かれ前方に突き出た顎と、黒く光る牙がある。それに頭を挟まれたらヘルメットは簡単に潰されそうだ。口元から涎が垂れているように見えるが、あれは毒液なのかも知れない。


 最も恐怖を煽るのはその大蜘蛛の大きさだ。頭部胸部でそれぞれ大型犬くらいある。腹部も同じくらい。そして節が二つあり剛毛でびっしりと覆われている長い足が八本。前方の二本は特に長い。足先は槍のように鋭く尖っている。一メートルまで近づかないとロックフォールは使えない。やつの前足が邪魔だ。


 迫ってきた。蜘蛛の独特の歩法。前足を振り上げ、殴ってきた。いや、刺してきた。俺は松明で振り払おうとするが、効果が薄い。松明は目の前に捨ててバックラーを構えた。


 一撃、二撃をバックラーを当てて防ぐ。剣で左前脚を斬ったが硬く、刃が通らなかった。いつものコンビネーションをやるしかないか。


 右前脚の攻撃をバックラーで防ぎ、同時に蜘蛛の眼前に潜り込む。


——ブラインド!


 怯んだ! そして……。


——石!


 効いた! 蜘蛛の動きが鈍った。俺はバックラーを捨て、剣を両手で持ち、思いきり振りかぶって蜘蛛の頭に振り下ろした。硬い。蜘蛛が吠えるように口を開けたところに剣を突いた。蜘蛛は動かなくなった。


 洞窟の奥を見ると、蜘蛛の巣に捕まり、糸で繭のように包まれている何かがいた。ピクピク動く。生きているようだ。いや、死んでいるのか。これがおそらくゾンビだ。


 他に蜘蛛はいないようなので、シスターを呼びに行った。


「片付いたぞ」

「ちょっと、ペプちゃんがいないよ?」

「大丈夫だ、呼べば来る。ペプー、ペプー」


 俺は探しに行く振りをして、物陰でペプを出した。


「ペプ、お待たせ、片付いたよ」


 シスターを蜘蛛の巣まで案内する。


「イヤーーー!こんなの無理!」


 ボス蜘蛛の死骸を見てシスターは泣きそうだ。蜘蛛は何かに使えないだろうか? 大量のシルクが取れそうだが。毒もある。


 シスターが蜘蛛の巣に捕まってる何かの頭部の繭を慎重に切った。予想通りゾンビだった。シスターは無言でバッグからメイスを取り出し、ゾンビの頭を振りかぶって一撃。


「##########……ファイアウォール」


 ゾンビの死骸が大きな炎に包まれる。蜘蛛の巣にも燃え広がり、明るくなったが、ヤバそうな黒煙が出てる。


「無言で火をつけるなよ!言えよ!」


 俺の言葉を無視してシスターは一目散に逃げた。俺はこっそりボス蜘蛛の死骸をストレージに入れてから追いかけた。


「次からは俺が火をつけるから」

「わかったわ」


 冒険者ギルドまで戻り、丁寧にお礼を言われ、解散した。


 めちゃめちゃ疲れたので、街を出て森に入り、ゆっくり過ごして寝た。 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。