シャワー
「おはようペプ」
目が覚めたがまだ薄暗かった。早いうちに街の方へ歩いて行き、街の近くの森で朝のスパーリングをする。昨日、丸盾、バックラーというんだろうか、それがいい仕事をしたので、左手にバックラー、右手に木刀を持って、骨先生とスパーする。バックラーは、左腕に固定するよりも、左手に持って敵の剣を受け流すように使うのがいいみたいだ。
剣も盾も独学で大丈夫だろうか? まあこの歳で骨じゃない先生に教えを請うのもなんだかな。どうせ目潰しして剣を振るからなんでもいいか。
そして気持ちよく汗をかいたら、お楽しみのシャワータイムである。新しいシャワールーム、当然ストレージの中なので、誰に遠慮することなく全裸。頭より高い位置に桶が設置してある。そこにストレージから水を適量いれると、桶の穴から水が出て、頭の上から浴びることができるというものだ。まあ、水が放射状に出てくるわけではないのだが、なんとなくシャワーと呼んでいる。金物屋に依頼すればシャワーヘッドを作ってもらえるだろうか? 見つけたら聞いてみよう。それよりも欲しいのは石けんとシャンプーだ。あと温水か。
シャワールームと言っても結構広い。湯船ができたら設置して、三点ユニットバスになる。トイレは、実用を重視して宝箱だ。蓋がぴったり閉じて匂いが漏れない。が、木製なので長くは保たないかも。やっぱダメか。汚物をストレージの別のポケットに溜めればいいじゃん、と思うかも知れないが、それはやりたくない。なんとなく気分の問題で。
照明はもちろん光石だ。柱にちょっとした物が置ける棚を付けてもらった。柱の上の方に釘を打って、紐でぶら下げてもいいな。
シャワールームの床は簀の子になっている。シャワーの水は簀の子の隙間から下に落ちる。その後どうなるかは知らない。こまめに捨てた方がいいだろうか……。
朝飯は街で食べたかったのだが、ここの人たちは朝飯を食べるという習慣がない。必然的に店が開いてない。いつも通りハウスでペプと一緒にストレージから出した朝飯を食べる。ストレージ内は時間が止まっているので、食事はいつでも新鮮だ。
冒険者ギルドに来た。五人パーティがいる。これからダンジョンに潜るんだろうか。フォーメーションについて話してるようだ。
掲示板を見てみる。前に来た時よりも依頼内容が読めるようになった。港町への護衛依頼はなさそうだ。というか、護衛依頼がない。ここが宿場町だからだろう。
掲示板の横には伝言板がある。賞金のかからない捜索依頼が貼ってあるようだ。かなりの枚数がある。
俺はカウンターに向かった。
「おはよう。聞きたいことがあるんだがいいかな?」
「おはようございます、猫ちゃんも」
俺はエリース村のことを説明して光石を見せた。
「魔石ですね。これが木の成長に影響を与えて森が活性化したのだと思います。前例があります」
よかった、放射性物質じゃないんだ。ほっとした。まあ、違うと思ってたけど。
「魔石は非常に珍しいんです。熟練の冒険者でも見たことない人がたくさんいらっしゃいます。この大きさでしたら…… そうですね、金貨二十枚で買い取ります」
「え? え? えー?!」
思わず声が出た。ゴルフボール大の魔石が金貨二十枚。ハウスにいっぱい転がってるよ。ペプが転がして遊んでるよ。俺、働かずに暮らしていけるじゃん! ちょっと地下神殿行ってくる。
「もう一つ持ってるんだが、こちらはいくらかな?」
俺は親指大の魔石を取り出して見せた。
「これなら金貨十枚ですね。大きければ大きいほど価値が上がります」
「ちなみにこのくらいだと?」
俺は握り拳を見せる。ちなみに俺の手は体格に比べて生まれつきかなりデカい。
「金貨百枚くらいでしょうか。ギルドを通さずに直接売るか、魔術師ギルドに持ち込んたほうが高く売れると思います。ダンジョンで取れたものならギルドを通して欲しいのですが」
魔石は魔道具のエネルギー源になるらしい。永久電池だ。たくさん集めれば空飛ぶ城とか作れるかも知れない。空を飛ぶ魔法があるのかどうか知らないけど。
俺は金貨十枚を受け取り、お礼を言って冒険者ギルドを後にした。
市場へ向かって歩いていると、向こうからシスターがやってきた。
「ちょっと、探したのよ? ゾンビ退治に付き合って欲しいの」
明日の朝、準備して冒険者ギルド前で待ち合わせになった。
ランチは市場で摂った。魚の煮込みとパン。ペプには生魚。美味しかったのでお土産も買った。ストレージに入れておいて、いつか食べる。
午後は服屋に行って、服をオーダーした。スカート風じゃなくてズボンが欲しい。街の人たちの三割くらいはパンツルックだ。王都なら既製品が売ってるらしいんだが、王都に行ったことないのでオーダーした。膝下までの丈の綿パン、半袖Tシャツ。何しろ金はあるので。色は漆黒を注文したが、それだけだと周りから浮くので、普通のベージュのパンツと白いシャツを注文した。
次に武具屋に行って、弓矢とクロスボウのボルトとスリングを買った。鎧をオーダーしたかったが、受け付けていないとのこと。王都ならあるらしい。
さらに次は靴屋に行った。今履いている靴は武具屋で買ったショートブーツだが、どうも足に合わない。そこで今回は奮発してオーダーしようと思う。厚底のブーツだ。歩きやすく疲れにくいものを作ってもらおうと思ったら、靴底を何枚か重ねて厚くする加工は王都の靴屋じゃないとできないとのこと。また王都。ぐぬぬ。
やっぱ王都に行くべきか。地下神殿でたくさん稼いで引っ越すか……。でも待てよ、住みたいのはビーチだな。王都に住んでビーチに別荘を建てるか。何しろ金はあるので。
冒険者ギルドから西に少し行ったところを今夜の宿にした。ストレージハウスだが。森の中に誰かが野営した跡があり、そこで石を組んで簡単な竈を作った。
一週間前に買ってあったフライパンが新品なので、まずは慣らしをする。当たり前にテフロンなどない。鉄のフライパンだ。外だから火をがんがん強くできるので気持ちいい。油を多めに入れて、慣らし終わった後にその辺に油を捨てられるのも、ちょっとした背徳感があっていい。
テーブルを出し、猪の肉を載せ、手頃な大きさに切る。ストレージに入ったから、寄生虫はいないはず。フライパンに油をひいて、肉を焼く。ステーキだ。塩を多めに振りかけて、ナイフで切って食べる。ちょっと臭みがあるが美味い。ハーブやレモンも欲しいな。
ペプには塩を掛けてない肉片をよく冷ましてからあげた。フガフガいいながらかじりついた。気に入ったようだ。前足と口がべっちょべちょだ。
何枚か焼いて、皿に載せてストレージに入れた。ペプの分もだ。いつでも美味しいステーキを。焼ききれない肉はストレージに戻しておいた。ものすごい量がある。火さえ使えれば飢えの心配はないな。
火を焚いた目的はもう一つある。焼け石を作ることだ。温水を作ってシャワーに使いたいし、今、作ってもらってる湯船に入れてお風呂にするためだ。一応、武器にもなるかと思うが、使いどころは限られてくるだろう。ペプを抱いてなでなでしながら、石が焼けるのを待つ。時間が経ったらストレージに入れて別の石を焼く。そうやってしばらく過ごした。




