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第一章07 「レーディアント」

俺とカレンで6匹のゴブリンを倒した後も旅路は続く。

何度かモンスターに襲われたりもしたが、

カレンの強さの前には大した問題にならなかった。

基本はセレナがリゼを守る形で立ち、俺が切り込みカレンが適宜それを援護する形で戦うことがほとんどだった。

なんとは無しにカレンが手を抜いて俺に経験を積ませようとしているのがわかるので、安心して俺はモンスターと対峙を続けていく。

「やっぱりカレンさん強いね」

戦闘が終わり余韻もそこそこに歩を進めていると、リゼが俺の元へやってきた。

「そりゃもう、手も足も出ないくらいにな」

ぶっちゃけ正面からはもちろん、奇襲を仕掛けても最後は負けてしまうのではないかと思う。

隙を探ろうにも常時戦場とでも言うのか、熱波のような覇気に満ち溢れてその姿は映った。

カレンは戦闘終わりの儀式のように、一瞬だけ大剣に炎をまといその汚れを焼き払った。すると、汚れがチリとなり風に吹かれた。

原理的には俺のウォーターリフレッシュと同じで、武器の手入れだが感じる熱量もその精度も比べ物にならない。

「ウォーターリフレッシュ」

ぽとぽと剣から雫が滴り落ちて、それに合わせて剣を振るった。

そこそこ奇麗に払えて切れ味的には問題ないが、だがそこそこだ。

「そう悲観することはないさ」

カレンが振り返り俺たちに話しかけきた。

「それもこれもスキル因子のおかげだからな。私のスキル:剣士にはエレメント因子として炎、そしてその炎を強化するためのカタリスト因子が多数つくことで極上の炎へ昇華している」

語りながら、その大剣を腰の鞘へ納めた。

「逆にロワイが水を戦闘に生かし切れていないのはそこにある」

「俺がダメ剣士と言われる所以だな」

水平に掲げた剣からダバダバと水が滴るがそこにカレンのような脅威は全く感じない。

俺がもし炎因子を持っていてもこの剣の上で焼き肉ができる程度だろう。

「現状だけの話さ、それは年齢的に仕方がない部分でもあるからな」

「それってどういうことでしたっけ?」

「因子はモンスターが持っていて、その命を奪うことで獲得できる。様々なモンスターを倒し自らを強くしていくことが可能だ。だが、ダンジョン以外のモンスターが因子を持っていることはほとんどない」

「だから、ダンジョンなんですね」

カレンが頷いた。

「成人しないとダンジョンには規定的には潜ることができない、16歳の君たちが武術を修める以外に強くなる方法はないと言っても過言ではないというわけだ」

「だから、俺たちは今まで剣の腕だけは磨き続けてきたってわけだ」

実際大人たちに交じってルミナスで哨戒任務をこなしても、ダンジョン帰りのやつらには全く及ばなかった。水が出せるだけのダメ剣士。でも、ようやく話の繋がりを実感できた。

「では、今君たちがなろうとしている冒険者とは何か、というと因子を手に入れて強くなりたい者達だけではない。それだとダンジョンに潜るのは武人や騎士団などの戦うことを生業にしている人種だけになるからな」

「でも、実際はそうではないってことですね」

「その通りです。こういうリングですね…」

そこで語尾が消え入りそうなセレナが会話に入ってきた。手には幾つかのリングを携えて。

「スコープリングとか五徳リングとかもだけど、街で普通に生活していたら見かけるわよね」

「リングやそれを動かす魔石のほとんどはダンジョン産です…。水、火、灯り、冷却……色んなところで使われています…」

これまでの生活や今回の旅を通してリングについてかなりわかってきたな。

俺は改めてセレナの手元に目を落とす。大小様々で白や黄色のリングではあるが、旅の中で何度もお世話になった。

「生活する中で、需要があるから小さい魔石ですら多少なりとも価値がある。売れるっていうことはそれを生業にしている人種がいる。それが冒険者ってことか」

「そういうことです…。リングは更に高価ですが、使い続けることで劣化もするので常に新しいリングが求められます…」

「それが産出するダンジョンを抱えた王都がでかくなるわけだ」

こういう見方をすると、ダンジョンはほとんど鉱山と同じじゃないか。

「ダンジョンを中心に人が集まり、街ができ、国になった。それが今の時代だ」

背後から強めの風が吹き砂塵が舞う。目をすぼめていると、カレンが続けて言った。

「さて、旅もいよいよ大詰めだ」

俺たちは気がつけばいつの間にか小高い丘の上から王都レーディアントを見下ろす位置にいた。

正面からは石畳で綺麗に整備された道が延々と伸び、どこか違う丘の向こうへ消えていった。

出入りが多いのだろう、街道には幾人もの人々や馬車などの往来が遠くからだが豆粒のように確認できた。

街道からなる王都は大きな門を構え、人だかりができており、入都を心待ちにする人達に湧いていた。ぐるりと取り囲む城壁がその経済力を表しているかのようだ。そして、門の内側に繰り広げられる街並みはごちゃごちゃして生活感も溢れている。整然とした市内の道は中央に聳える城の周りぐらいなものだろうか。それもそのはずか、レーディアントは元々がダンジョンを中心にした冒険者都市だ。時代の流れと共に街ができたのだろう。最後に城から遠い場所だが確実にそことわかる場所。ダンジョンがその口を大きく開いていた。

一見するとそれは山だ。黒い岩肌の岩石が鎮座しているようにも見えるが、その存在感がそれをダンジョンと思わせるに十分な迫力を放っている。

俺はごクリと唾を飲んだ。

「大きいだろう。世界には幾つかのダンジョンが確認されているが、ここが世界最高の大きさを誇る、ワールドエンドホールだ。その最終回層は未だ不明!現在は地下32階層まで到達を確認しているが、全貌がまだまだ掴めないとても夢の詰まった魔境だ」

「私には凄く禍々しい様に感じられます」

「はっはっは!印象はそれぞれだろうな!なんせあれだけの大きさだ」

「あ、あぁ、そうだな」

圧倒されてそれだけを答えた。

俺とリゼがそれぞれ驚き散らかしたからだろう。それともリゼが、俺が、いつもならお互いを弄るところを弄らなかったのを見てカレンが、

「なんだ、ロワイ怖気付いのか?」

「そんなこと……ない!」

意地が勝ったのか俺は語気を強く言い返すようにカレンに答えた。

隙を見つけたのかリゼもが、

「なーんだ、ロワイは一人で怖がっていたのか〜」

ご丁寧に一人でを強調してリゼが追撃をかましてくる。

「はぁ!?怖がってたのはどっちだよ!」

すぐさま俺はリゼに向かって言い返した。

「怖がってません〜。ちょっと禍々しいなって思っただけです〜!」

「それを怖がってるって言うんだよ!!」

「あ、あの、どちらも怖がっていたんだと思います?」

するりと間を抜けて出てきたセレナがしれっと言い放った一言は俺たちの矛先を変えるには十分だった。

「「怖がってませんけどっ!?」」

「なら、2人とも怖がってなかった。武者震いだったでいいじゃないですか……カレン様も変に2人を煽らないでください……」

「ハハハ!すまないな!どうにも2人がこれから楽しい楽しいダンジョンに潜るというのにビビり散らかしているから、思わずな」

「「だからぁ〜!」」

「あぁ、もうなんでこうなるんでしょう……」

まだ、俺たちには言いたいことがある!

だが、緊張していた雰囲気は霧散し俺たちは心持ちは穏やかではないが、力んでいた肩から力が抜けていた。

完全にリゼに巻き込まれた形ではあるが、力をつける事に興味が無いわけがない。

「さぁ、行くぞ!」

俺たちはカレンの掛け声に続きまた足を進めた。好奇心に塗り替えられた気持ちで。

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