第一章05 「旅立ちの覚悟」
「はい、リゼ」
「なに、ロワイ?」
「話があります」
「はい、どうぞ」
「流石になんかおかしいだろぉ!」
俺たちはゴブリン討伐後、無事にルミナスへ帰りついていた。大量の討伐の証と共に。
「私もそれは薄々勘づいてはいたけど、そうね?」
「そうね?じゃない!!」
「まぁまぁ、たぶんこれ、ルミナス始まって以来の快挙だよ?」
「やったぁー!わーい!って手放しで喜べたらどれだけよかったか!」
俺は少し上げすぎたテンションを落ち着けて、リゼに確信へと至る話をする。
「これ、どう考えてもスキル:勇者が消えたことでの弊害だろ……」
「タイミング的にはそれしかないよね、やっぱり」
「それしかないだろうな。今から思うとワイバーンに襲われたのもこれのせいだろうな。あの時は本当に死ぬかと覚悟したぞ」
「でも、結果的に何とかなったじゃない?リゼ様やるね!」
むきっ!っと自らを誇るようにリゼは言う。
「結果的に!だろ。実際これがずっと続くのはかなりしんどいぞ?たまたま属性的な幸運が噛み合ったからなんとかなったようなもんだ」
「それはそうだけど!でも、だからってこれをどうするっていうの?」
「探すしかないだろうな。あの、ふざけたハルキってやつらを」
俺はあの時、何も出来なかったことに思い出し、唇を少し噛んだ。俺は続けて言う。
「それに、敢えて表現を選ばなければゴブリン程度にあの体たらくだ。ルミナスで若い順で見たらまだ俺たちは強い方ではあるが、カレンがワイバーンの時に垣間見せたあの強さに比べたらまだまだだと実感した。そして、ハルキ達だ何をされたか未だによくわからんが、話し合いではいそうですかと、スキルを返してくれるとはとても思えない」
「それなら初めから力づくで奪うこともしなかっただろうしね」
「そういうことだ。だから、強くならないとダメだ。何もわからないままにやられっぱなしってのはごめん願いたいね」
「ついでに言うなら、私が襲われても守れる強さもね!」
「自衛くらいしろよ……」
勇者は本来皆を守るものだが、この勇者様は守られるものらしい。
「そうなってくると、カレンさんの話に乗っかる方が良さそうよね」
「そうだな。元々リゼを目的に来ていたのもあるし、渡りに船だからそのまま乗っからせてもらおう」
「勿論、ロワイも来るわよね?」
そうなのだ、この話はリゼに来ている話で俺に振られている話ではないのだ。それに、リゼが襲われているだけで、リゼが俺の元から離れるなら俺の命の安全だけを考えるとここでリゼを送り出す選択肢は十分にある。が、しかし。
「当たり前だろ。一緒に強くなるぞ」
「そうこなくっちゃね!!」
リゼは満面の笑みを浮かべて俺に手を伸ばした。
「私を守ってね!」
「いや、自衛できるようになれ!!」
ぱしっとその手を叩くこともできたが、俺はその手を取ったのだ。
何だかんだ、物心ついた頃からの仲だ。今更この幼なじみを一人で外に出すほど、俺は薄情ではない。
翌日になり、待ち合わせなどは特に決めてはいなかったが、大通りを歩いているとコソコソと端っこを目立たないように歩いているセレナを見つけた。
どうやら俺たちを探していたらしく、丁度良いのでカレンの元へ案内してもらった。
「やあ、来たな。昨日は大活躍だったそうじゃないか」
「もう、カレンさんまで話が回っているのか」
そこは、裏路地にあるバーのような場所だった。まだ日も高いのでクダを巻いているようなやつは居ないが端っこでチビチビと一人で酒を飲んでいるやつもいるし、カードゲームに興じる2人組も見受けられた。
この辺りは路地も入り組んでおり、なんとなく店があることは認知していたが、当然入ったことはない店だった。
俺とリゼは勧められた席に腰を落ち着けた。
奥でグラスを磨いているマスターに飲み物をオーダーし俺はカレンの話に耳を傾ける。
「情報は常に集めているからな。それにそんなことしなくても、冒険者協会周りは今その話題で持ちきりだ。残念ながらロワイとリゼの話題というわけではなく、ゴブリンが大量発生しているのでは?という話題ではあるがね」
「なるほど、そういうことなんですね」
リゼが納得の声をあげた。
うむ、とカレンが一呼吸置き、
「だが、内情を多少なりとも知っている人間からするとまた別の面が見えてくる。もう気がついているだろうが、本来勇者は魔物を引き寄せる。だが、同時に抑える術も心得ている。リゼ君にはその抑える力だけが抜け落ちているように見える」
「そうですね。正直外を歩くまでその事に気がついていませんでした……」
リゼは自らの迂闊さを疎むように視線を下げた。
それも仕方がない。街中は基本的には安全なのだ。ワイバーンが強襲してくるほうが稀と言える。
「街中でワイバーンが飛んでくるなんて普通は想像もしないからな」
俺は助け舟を出すついでに話題に入った。
「正直、俺は同行していただけだったが、今後もあの感じで魔物に襲われるのは勘弁願いたいな。だからリゼには是非ともスキル:勇者を取り戻してもらうか、あの魔物呼び寄せ体質をなんとかして欲しいんだ。その為には、ハルキってやつを打ち負かしてスキル:勇者を取り戻すための力がいる」
「だから、私の話に乗って王都に行きたいと」
「そういうことです」
リゼが神妙に頷いた。俺も隣でうんうんと頷く。
「私としてもその提案はありがたい。強いやつは何人いてもいいからな。それに、私は今勇者を招集する任務に着いている。何れは他の勇者に会うこともあるだろう。そうすれば、その勇者から魔物を呼ぶ力を抑える術も知れるかも知れない」
「正に、一石二鳥ってわけか」
ひとつの行動で2度美味しいならやらない手はないだろう。
「そうだな。追加するならハルキとかいう輩についても王都の方が情報を集めやすいだろう。私としても願ったり叶ったりの話だ。改めてこう問おう。王都に来て強くならないか?」
「もちろんです!よろしくお願いします!」
「ついでってわけではないけど、俺も着いていくことにした。よろしく頼む」
俺もリゼに続いて表明をする。カレンはわかっていたのだろう。
「それは重畳。では、改めて頼まれた」
と、満足そうに笑っていた。




