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第一章09 「冒険者協会」

カレンの邸宅を後にした。

そのままカレンに連れられ、冒険者協会の前まで来ていた。

散策はまた今度だな。

「では、私はこれで。良き冒険を」

「ああ、助かった」

「ありがとうございました」

カレンを見送り、俺たちはレーディアントの冒険者協会へと向き合った。

立派だ。ルミナスの冒険者協会も貧相と言う訳ではなかったが、ここの冒険者協会は明らかに金がかかっている。ダンジョンからなる産業の賜物ということか。

木造で凝った装飾が随所に散りばめられており、手入れが行き届いた床板は荒くれが多い冒険者が普段使うには少し似つかわしくないと思ってしまう。だが、使用感がないわけではなく、掃除が行き届き、整備されていることがわかる。

「さぁ、行くか」

「そうね」

軽い木材でできた扉を開き、

俺たちはまず受付をしてくれているであろう、女の人へ声をかけた。

「あら、初めましてですね?」

「そうです」

「ようこそ、冒険者協会へ。本日はどう言った御用ですか?」

その人は人のいい笑顔を浮かべ、俺たちを迎え入れてくれた。

「実は今朝この街へ来たばかりなんだが、ダンジョンに潜ろうとしていて、ここに来れば手引きをして貰えると教えてもらったんだが、あっているか?」

「その通りです。失礼ですが冒険者の方ですか?」

「はい、そうです」

リゼが答えて俺とリゼは胸元から小さく、くすんだ銅片のタグを取り出して見せた。

「少しよろしいですか?」

「はい、どうぞ」

リゼは冒険者タグを首から外し、その人に渡した。

俺も無言でそれに続き、タグを手渡した。

「お二人共にルミナスの冒険者でランクはベースランクの銅級ですね。ルミナスでされていた活動はこちらとは同期しませんので、1からのスタートになります。こちらのタグでレーディアントの登録も行ってよろしいですか?」

「あ、そうなんですね」

リゼが答える傍ら俺は今更ながらに当たり前のことに気がついた。

「そうか、これだけだと、新米冒険者と同じってことか。ルミナスで銀級まであげていたら違ったのか?」

「そうですね、ランクの共有はされますが、実績はその登録のある冒険者協会に蓄積しますので、ここでは登録直後と変わらない扱いですね」

「そうみたいね。仕方ないけど、今更ルミナスで等級昇進テストをして戻ってくるのも無理な話だし、このままで進めてもらいましょう」

「大した実績ではなかったしそうだな」

実際俺たちは自己鍛錬の延長で冒険者の真似事をしていたに過ぎない。そもそも銀級に上がるには実績が足りていなかっただろう。

「では、問題無いようなので登録を進めさせていただきますね」

受付の人は俺たちのタグを隣に控えていた別の人に渡して登録の手続きを引き継いだようだった。

「ルミナスでの活動もなされていたとのことですが、レーディアントでのルールも説明させていただきますね。まずご存知の通り世界の裏表ワールドエンドホールという名前のダンジョンがあります」

「大それた名前だな」

さすが王国最大というべきか。思わず、名前を聞くだけで生唾を飲んでしまった。

受付の女性は気にも留めず続けた。

「ここの冒険者協会が特殊なのはその門番を務めている点にあります。通常業務として冒険者向けの、採取依頼や討伐依頼、哨戒依頼なども随時受けつつ、ダンジョンからの採取と攻略が追加されている形になります。そのどちらもこの協会では等級昇進のポイントとして加算されます」

「つまり、ダンジョンに潜るだけでも実績になるってことか?」

「はい。もちろん、成果次第ですが」

「その成果って具体的にはなんですか?」

追加でリゼが口をはさむ。

「そこも含めて説明しますね。ダンジョンでは冒険者の方々は自由に採取や討伐、採掘と行った活動をして頂くことができます。ただし、入場料をいただかない代わりにダンジョンでの取得物は一旦提出いただきます。アイテムはここで買取を行わせていただき、冒険者の方々の収入になります。そして、ここで提出いただいたアイテムが先程の昇進ポイントになりますので、しっかり提出いただくようにお願いします」

「つまり、全部一旦協会を通すのね」

「ええ。流通管理も兼ねていますので」

成果の換算と発展への貢献を一括して管理しているということらしい。

更に、受付嬢の話はこう続く。

「その後、買取をさせて頂いたアイテムに関しては格安で販売させていただきます。販売の形式を取るのはダンジョン使用の使用料金になるので、ご了承ください。また断っておきますが、ダンジョンは国有です。この協会もまた国営になるので、あんまりおいたはなされませんように」

最後ににこりと笑いその受付の女の人は話を締めくくった。

「つまり、勝手に持ち帰るなってことか?」

「ええ。正確には“未申告”ですね」

「なるほどな」

つまり、下手なことをするなと釘を刺されたのだ。

ダンジョン産のアイテムはそのままこの都市の産業に直接繋がっている。いざこざを極力減らしておきたいのは理解できる。

「わかりました。他に気をつけることはありますか?」

リゼが素直に頷きを返し、気になることはないかと確認する。

「ございますよ。生きて、帰ってきてくださいね」

そうすると、先程の笑顔のまま、彼女はそういった。

「なるほど、それは大切だ」

管理はするし脅しはするが、別に死んで欲しくてダンジョンに送り込んでいるわけではないのだ。それはどこの協会も同じことか。

ギャップに可笑しくなり、くっくっと俺は笑った。

「あとは、緊入依頼だったり、昇格試験依頼だったりと、種別はありますがそれはその都度また説明しますね。あんまり話が長くても覚えきることは難しいと思うので」

「それはそうだ」

既にダンジョンの情報でお腹はいっぱいだ。

必要がある時にまた教えてもらうことにしよう。

「それで、いかがされますか?このままダンジョンに入られますか?」

俺はリゼに目配せをして確認を取る。リゼもそれに頷いたので、答えを決めた。

「では、そうさせてもらおうかな。準備期間は有効活用しないといけないからな」

カレン邸を出なければ行けない日が近いのは確かだ。それまでに生活基盤を作れるように動けないといけない。

ダンジョンで生活する。危険なダンジョンに飛び込み強くなり、そして生き残る。その結果の対価だ。悪くない。

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