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Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


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第8話「外の気配」

 翌朝。


 目が覚めたとき、体の重さは少しだけ抜けていた。


 まだ完全じゃない。


 でも、昨日よりは動く。


(……戻ってるな)


 ゆっくりと体を起こす。


 部屋の中は静かだった。


 いつもより、人の気配が少ない。


(……?)


 少しだけ引っかかる。


 そのまま、足を下ろす。


 まだ不安定だが、立てないほどじゃない。


 扉の方を見る。


 開いている。


 普段なら、母が閉めているはずだ。


(……珍しいな)


 小さく思いながら、外に出る。



 家の外。


 朝の空気は、いつもと同じはずだった。


 風もある。


 光もある。


 人もいる。


 なのに——


(……なんだ)


 少しだけ、ざわついている。


 声が小さい。


 いつもより、落ち着かない。


 人の動きも、どこかぎこちない。


 目が合う。


 すぐ逸らされる。


(……見てるな)


 昨日と同じ。


 でも、少し違う。


 “知っている”ような視線。


 その理由を考える前に——


「エリシア!」


 声が飛んできた。


 ルナだ。


 いつもより少し早い。


 息を切らして、こちらに来る。


「だいじょうぶ!? もう動いていいの?」


 距離が近い。


 でも、昨日よりは嫌じゃない。


「……だいじょぶ」


 短く答える。


 ルナは少しだけ安心したように笑う。


 そのあと、周囲を気にするように視線を動かした。


「なんかね……へんなの」


 小さな声で言う。


「みんな、ちょっとおかしいっていうか……」


(……やっぱりか)


 感じていたものと一致する。


「きのうのこと、話した?」


 ルナは少しだけ困った顔をする。


「うん……おかあさんにだけ」


「でも、村の人も知ってるみたいで……」


 言いながら、また周囲を見る。


 確かに。


 さっきから視線を感じる。


 直接ではない。


 でも、意識されている。


(……広がってるな)


 小さく思う。


 あの出来事は、思っていたより軽くない。



「エリシア」


 後ろから声がした。


 振り向く。


 父だ。


 ガイル。


 その表情は、昨日よりも固い。


「来なさい」


 短く言う。


 それだけで、空気が変わる。


 断れない雰囲気。


「……うん」


 小さく頷く。


 ルナが少し不安そうにこちらを見る。


 軽く頷き返す。


 父の後についていく。



 連れて行かれたのは、村の少し外れだった。


 人が少ない場所。


 昨日、ルナと行こうとした方向とは逆。


(……避けてるな)


 なんとなく分かる。


 あの場所には、近づかないようにしている。


 しばらく歩いて、止まる。


「ここでいい」


 父が言う。


 振り返る。


 視線が、まっすぐ向けられる。


「……もう一度だ」


(……やっぱりか)


 予想はしていた。


 昨日のこと。


 ルナの話。


 そして、自分の様子。


 何もないはずがない。


「なにがあったか、話してごらん」


(……分からない)


 そう答えるしかない。


 でも——


「……さわった」


 それだけは言える。


「それで……消えちゃった」


 言葉は足りない。


 でも、事実はそれだけだ。


 父は少しだけ目を細める。


 考えている。


 疑っているわけではない。


 確かめている。


「もう一度、出来るか」


(……やるのか)


 正直、分からない。


 できる保証はない。


 むしろ——


(……こわいな)


 自分の手を見る。


 昨日と同じ。


 何も変わらない。


 でも——


(……違ったはずだ)


 あの時は、確かに何かがあった。


「……わからない」


 正直に言う。


 父は、少しだけ息を吐く。


「そうか」


 それ以上は言わない。


 無理にやらせようとはしない。


 その沈黙の中で——


 ふと、感じた。


(……ある)


 微かに。


 ほんの少しだけ。


 昨日と同じ違和感。


 遠く。


 弱い。


 でも、確かにある。


(……まだ、いる)


 顔を上げる。


 無意識に、視線が向く。


「どうした」


 父の声。


「……あっち」


 指を向ける。


 昨日とは違う方向。


 でも、似ている。


「……なんだ」


 父の目が変わる。


 さっきまでより、鋭い。


 そして——


 少しだけ、緊張が走る。


(……やっぱり、終わってない)


 小さく息を吐く。


 昨日のことは、偶然じゃない。


 あれは、一回で終わるものじゃない。


 そして——


(……外にも、ある)


 村の中だけじゃない。


 もっと広い。


 もっと遠く。


 その気配が、わずかに広がっている。


 まだはっきりとは分からない。


 でも——


 確実に。


 世界のどこかで、同じものが動いている。


 そう感じていた。

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