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Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


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52/54

第52話「先生の先生」

 翌朝。


 管理局はいつもより少しだけ慌ただしかった。


 廊下を行き交う局員たち。


 普段より掃除も念入りに行われている。


◆


「なんか今日、みんな忙しそうだね。」


 アレンがきょろきょろと辺りを見回す。


◆


「……うん。」


 エリシアも頷いた。


 昨日の「本部から来る先生」の話が頭に残っている。


◆


 午前の訓練が終わると、子どもたちは中庭で休憩をしていた。


 その時だった。


◆


 ガラガラと荷車の音が近づいてくる。


 荷物を運ぶ局員たち。


 本箱や木箱が次々と運び込まれていく。


◆


「本だ!」


 ミレアが嬉しそうに声を上げた。


◆


 木箱には、


『本部資料室』


と刻まれている。


◆


(……ほんぶ。)


◆


 エリシアは思わず近づいた。


◆


 局員が木箱を開ける。


 中には見たこともない分厚い本が何冊も入っていた。


◆


 地図。


 植物。


 魔物。


 歴史。


 そして、見たことのない文字で書かれた古い本。


◆


(……いっぱい。)


◆


 その光景だけで胸が高鳴る。


◆


「触ってもいいですか?」


 シアラが局員へ尋ねる。


◆


「子どもたちにはまだ難しい内容ですが。」


「見るくらいなら構いませんよ。」


◆


 エリシアはそっと一冊を開いた。


◆


 読めない。


 文字はほとんど分からない。


◆


 でも。


◆


 そこには綺麗な挿絵が描かれていた。


◆


 巨大な樹。


 空を飛ぶ竜。


 見たこともない街。


◆


(……せかい。)


◆


 自分が知っている世界なんて、本当に小さい。


◆


「気になる?」


 シアラが隣へ来た。


◆


「……うん。」


◆


「全部読みたい?」


◆


 エリシアは迷わず頷く。


◆


「……よみたい。」


◆


 シアラは嬉しそうに笑う。


◆


「その気持ちを忘れないでください。」


◆


「文字を覚えれば、少しずつ読めるようになります。」


◆


 エリシアは本をそっと閉じる。


◆


(……はやく。)


◆


(……よめるように。)


◆


 そう思った。


◆


 その日の午後。


◆


 局長室。


◆


 一人の局員が報告へ来ていた。


◆


「明日の昼頃には到着予定です。」


◆


 局長は静かに頷く。


◆


「そうか。」


◆


「久しぶりですね。」


 シアラが微笑む。


◆


「ああ。」


◆


「十年ぶりになる。」


◆


 少しだけ懐かしそうな表情を浮かべる。


◆


「昔は毎日のように叱られた。」


◆


 シアラは思わず笑った。


◆


「局長でもですか?」


◆


「もちろんだ。」


◆


「未熟だったからな。」


◆


 その言葉を、部屋の外で偶然聞いてしまったエリシアは目を丸くする。


◆


(……きょくちょうも。)


◆


(……しかられた。)


◆


 なんだか少し安心した。


◆


 局長も。


 先生も。


 最初からすごかったわけじゃない。


◆


(……じゃあ。)


◆


(……わたしも。)


◆


 少しずつでいい。


 昨日より今日。


 今日より明日。


◆


 その日の夜。


◆


 記録帳を開く。


◆


 今日描いたのは、一冊の本。


 その横に、小さく文字を書く。


◆


「ほん」


◆


 少し考えて。


 もう一行。


◆


「よみたい」


◆


 文字はまだ曲がっている。


 それでも、その二つの言葉には、今のエリシアの素直な願いが込められていた。


◆


 窓の外では、静かな夜風が吹いている。


◆


 そして翌日。


 本部から、一人の”先生”がこの支部へやって来る。


 その出会いが、エリシアの世界をもう一歩広げることになる。

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