第51話「本部からの便り」
朝の訓練を終えた頃だった。
管理局の門の前で、一頭の大きな鳥が羽ばたいた。
白い羽。
足には小さな筒が結ばれている。
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「伝書鳥だ。」
局員の一人が小さく呟く。
鳥は迷うことなく局長の肩へ降り立った。
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局長は慣れた手つきで筒を外す。
中から一枚の書状を取り出した。
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周りの局員たちの表情が少し引き締まる。
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(……なんだろ。)
エリシアは遠くからその様子を見つめていた。
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昼。
食堂には少しだけいつもと違う空気が流れていた。
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「本部からですって。」
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「今年も来るらしい。」
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「もうそんな時期か。」
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局員たちが話している。
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(……ほんぶ。)
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知らない言葉。
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食事を終えたあと。
エリシアはシアラのところへ向かった。
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「先生。」
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「はい。」
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「……ほんぶ?」
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シアラは少し驚いたあと、優しく笑った。
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「気になったんですね。」
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エリシアは頷く。
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「本部は、管理局が始まった場所です。」
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「世界中の支部をまとめる、とても大きな場所ですよ。」
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エリシアは静かに聞いていた。
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(……おおきい。)
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この支部よりも。
もっと大きい場所。
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「先生も行ったことある?」
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「ありますよ。」
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「勉強をしに。」
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その一言で、エリシアの目が少し輝いた。
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「……べんきょう。」
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「ええ。」
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「先生も昔は教わる側でした。」
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エリシアは少し意外そうな顔をする。
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「先生も?」
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「もちろんです。」
シアラは笑う。
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「今でも分からないことがあれば、本部へ教わりに行くこともあります。」
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その言葉は、エリシアの胸に残った。
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(……先生も。)
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(……ならう。)
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先生も学び続けている。
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午後。
訓練場。
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アレンが息を切らしながら走ってきた。
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「聞いた!?」
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「本部から先生が来るんだって!」
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「先生?」
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「うん!」
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「父さんが言ってた!」
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「すっごく強い先生なんだって!」
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アレンは木剣を振りながら目を輝かせる。
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「ぼく、見てみたい!」
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エリシアは少し考えた。
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(……つよい。)
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でも。
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(……どんなひと。)
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強いだけじゃない気がした。
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シアラも、本部で学んできた。
局長も、きっとそうだ。
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(……しりたい。)
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その日の夜。
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局長室。
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机の上には、本部から届いた書状が広げられていた。
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局長はゆっくりと目を通す。
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「今年は……。」
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小さく呟く。
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「来られるのですね。」
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シアラが静かに言った。
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「ああ。」
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局長は微笑む。
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「久しぶりに。」
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「私の先生が来る。」
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その一言だけで十分だった。
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部屋は静かになる。
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窓の外では、夜風が木々を揺らしている。
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まだエリシアは知らない。
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本部とはどんな場所なのか。
先生の先生とは、どんな人なのか。
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けれど。
その出会いは、少しずつ近づいていた。




