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Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


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第50話「一冊の記録帳」

 翌朝。


 エリシアが資料室へ入ると、いつもとは少し違う光景が広がっていた。


 机の上に、小さなノートが三冊並んでいる。


 どれも真新しい。


◆


「おはようございます。」


 シアラが笑顔で迎えた。


◆


「……おはよう。」


◆


 すると、後ろから元気な声が響く。


「見て見て!」


 アレンだった。


 得意げに一冊のノートを掲げている。


◆


「ぼくももらった!」


◆


 エリシアは目を丸くした。


◆


「……ノート。」


◆


「うん!」


「昨日、先生にもらった!」


◆


 ミレアも自分のノートを見せる。


「わたしも。」


「絵を描くんだって。」


◆


 エリシアは三冊のノートを見比べた。


◆


(……みんな。)


◆


(……はじめる。)


◆


 なんだか少し嬉しかった。


◆


 シアラは子どもたちを見渡す。


◆


「エリシアの記録を見て、私も思ったんです。」


◆


「気付いたことを残すのは、とても良い勉強になる。」


◆


「だから今日から、みんなも自分だけの記録帳を持ちます。」


◆


 子どもたちの目が輝く。


◆


「絵でもいい。」


「文字でもいい。」


「上手じゃなくてもいい。」


◆


「大切なのは。」


◆


「昨日の自分より、一つ多く気付くこと。」


◆


 エリシアは、その言葉を静かに聞いていた。


◆


 昼休み。


 アレンが走ってくる。


◆


「エリシア!」


◆


「ぼく、今日ね!」


◆


 ノートを開く。


◆


 そこには丸い絵。


 横には何か長いもの。


◆


「これ!」


◆


「トカゲ!」


◆


 誇らしそうに笑う。


◆


「しっぽが切れた!」


◆


 エリシアはノートをじっと見る。


◆


(……そうか。)


◆


 同じ記録帳でも。


 見るものは人それぞれなんだ。


◆


「エリシアは?」


◆


 聞かれて、自分の記録帳を開く。


◆


 今日は木の絵。


 その横に、小さな丸がいくつも描かれている。


◆


「……これ?」


 アレンが首を傾げる。


◆


「……あり。」


◆


「いっぱい。」


◆


「はこんでた。」


◆


 アレンは目を丸くした。


◆


「ほんとだ!」


◆


「ぼく、気付かなかった!」


◆


 二人はそのまま地面を見る。


 蟻たちは列になって餌を運んでいる。


◆


「ねぇ。」


 アレンが小さく笑う。


◆


「エリシアってさ。」


◆


「よく見てるね。」


◆


 エリシアは少し照れながら首を傾げる。


◆


「……そう?」


◆


「うん!」


◆


「ぼくは走ってばっかりだから!」


◆


 二人は笑った。


◆


 その様子を、少し離れた場所から局長が見ていた。


◆


 隣にはシアラ。


◆


「エリシアだけの習慣が、周りへ広がっています。」


◆


 局長は穏やかに頷く。


◆


「良い影響とは。」


◆


「言葉で教えるものではない。」


◆


「生き方で伝わるものだ。」


◆


◆


 夕暮れ。


 子どもたちは、それぞれ記録帳を抱えて部屋へ戻っていく。


◆


 トカゲを描いた子。


 雲を描いた子。


 花を描いた子。


 蟻を描いた子。


◆


 どれも違う。


◆


 だから面白い。


◆


 部屋へ戻る前。


 エリシアは今日の最後の一行を書いた。


◆


「みんな ちがう」


◆


 少し考えて。


 もう一行。


◆


「だから おもしろい」


◆


 文字はまだ拙い。


 それでも、その言葉には今のエリシアの気持ちが、そのまま詰まっていた。

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