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Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


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第49話「昨日の答え」

 朝。


 いつものように中庭へ出ると、シアラが花壇の前で首を傾げていた。


「……おかしいですね。」


 花壇の植物を一つひとつ見ている。


 葉の色。


 茎の様子。


 土の湿り気。


◆


 エリシアも近寄った。


「……どうしたの?」


◆


 シアラは振り向く。


「この苗だけ元気がないんです。」


◆


 昨日までは元気だった。


 それなのに、一晩で葉が少し垂れていた。


◆


 アレンもやって来る。


「水が足りないの?」


◆


 シアラは首を横に振る。


「昨日は十分あげています。」


◆


 子どもたちは苗を囲む。


 でも理由は分からない。


◆


 その時だった。


◆


(……あ。)


◆


 エリシアは何かを思い出した。


◆


「……まって。」


◆


 急いで部屋へ戻る。


 少し転びそうになりながら記録帳を抱えて戻ってきた。


◆


 ページをめくる。


 昨日描いた葉っぱ。


 その横の文字。


◆


「ちがう」


◆


 さらに前のページ。


 黄色くなった葉。


 小さな「?」。


◆


「……これ。」


◆


 シアラは記録帳を受け取った。


◆


 しばらく見つめる。


◆


「あ……。」


◆


 小さく声を漏らした。


◆


「昨日、この苗の葉が少し黄色くなっていたんですね。」


◆


 エリシアは頷く。


◆


「……うん。」


◆


「きのう。」


「……もう。」


「ちがった。」


◆


 シアラは優しく微笑む。


◆


「だから気付けたんですね。」


◆


 局員を呼び、苗を調べてもらう。


◆


 しばらくして、一人の局員が戻ってきた。


◆


「根に小さな虫がいました。」


◆


「早く気付けたので、この程度なら大丈夫です。」


◆


 シアラは安心したように息をついた。


◆


「ありがとう、エリシア。」


◆


「記録を残していたおかげですね。」


◆


 エリシアは少し驚いた。


◆


(……やくに。)


◆


(……たった。)


◆


 初めてだった。


 自分が書いたものが。


 誰かの役に立った。


◆


 昼休み。


 アレンが隣へ座る。


◆


「すごかったね!」


◆


「ぼく、全然気付かなかった!」


◆


 エリシアは照れくさそうに笑う。


◆


「……たまたま。」


◆


「でも!」


◆


 アレンは記録帳を見る。


◆


「ぼくも書いてみようかな!」


◆


「昨日のこと!」


◆


 エリシアは嬉しそうに頷いた。


◆


「……うん。」


◆


「かいて。」


◆


「……おもしろい。」


◆


 二人は顔を見合わせて笑った。


◆


 その日の夕方。


 局長室。


◆


 シアラは今日の出来事を話していた。


◆


「エリシアの記録が、苗を助けました。」


◆


 局長は静かに目を閉じる。


◆


「それは。」


◆


「良い経験になりましたね。」


◆


「はい。」


◆


「自分のためだけではなく。」


◆


「誰かのためにも記録は残せる。」


◆


 局長は窓の外を見る。


◆


「知識とは。」


◆


「しまい込むものではない。」


◆


「次の誰かを助けるために残すものだ。」


◆


 その言葉は、シアラの胸にも深く残った。


◆


 夜。


◆


 エリシアは記録帳を開く。


◆


 新しいページに、小さな苗を描く。


 その横に、少しだけ丁寧に文字を書く。


「たすかった」


◆


 まだ文字は曲がっている。


 それでも。


 今日は少しだけ誇らしかった。


◆


 記録帳を閉じる。


 胸に抱える。


◆


(……あしたも。)


◆


(……みてみよう。)


◆


 小さな「知りたい」は、少しずつ「役に立ちたい」へと形を変え始めていた。

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