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Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


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第5話 近づくもの

 その日は、少しだけ静かだった。


 いつもと同じ時間。


 なのに——


「……エリシアー!」


 聞こえてくる声が、少し遅い。


(……遅いな)


 視線を向ける。


 走ってくる影。


 変わらない。


 でも——


(……なんか、違う)


 うまく言えない。


 けれど、昨日のあの場所の感覚が、頭の奥に残っている。


(……来る、ってやつ)


 無意識に、手を握る。



「ねえ、エリシア」


 ルナが近づいてくる。


 少し息が上がっている。


「今日も、あっち行く?」


 軽い調子。


 昨日のことを、あまり気にしていないように見える。


(……行かない方がいい)


 そう思う。


 はっきりとした理由はない。


 でも——嫌な感じがする。


「……だめ」


 短く言う。


 言葉は、まだぎこちない。


 それでも、はっきりと否定した。


「え?」


 ルナが目を瞬く。


「どうして?」


(……説明できない)


 分かっている。


 自分でも分からないのだから。


 でも——


「……あぶない」


「危ない?」


 ルナが首を傾げる。


 少しだけ考えて——


「……昨日の?」


 そこまで言って、少し黙る。


 完全に信じているわけではない。


 でも、無視もしていない。


「……じゃあ、やめとく」


 あっさりと言った。


(……いいのか)


 少し意外だった。


 もっと強く言われると思っていた。


 でも——


「エリシアがそう言うなら、やめる」


 その言葉に、少しだけ胸が引っかかる。


(……慣れないな)


 そういうのは。



 そのまま、二人で村の中を歩く。


 人の声。


 生活の音。


 いつもの空気。


 なのに——


(……まだ、ある)


 違和感が消えない。


 むしろ、少しだけ強くなっている。


 方向は——分かる。


 昨日の場所。


(……来てる)


 そう思った瞬間だった。


 ざわり、と。


 空気が揺れた。


「……え?」


 ルナが立ち止まる。


 周囲を見回す。


「今、なんか……」


 言いかけて、止まる。


 言葉にできないからだ。


 でも、感じている。


 確実に。


(……やっぱり)


 来ている。


 音が消える。


 風が止まる。


 人の声が、遠くなる。


 代わりに——


 何かが近づいてくる気配。


「エリシア……」


 ルナの声が小さくなる。


 怖がっている。


(……守る、か)


 小さく息を吐く。


 考えるより先に、体が動く。


 手を伸ばす。


 ルナの服を、掴む。


「……そば」


 言葉が足りない。


「……いて」


 それでも、伝える。


 ルナが、こくりと頷く。


 次の瞬間。


 草が、揺れた。


 ——何かがいる。


 見えない。


 でも、いる。


 確実に。


(……来る)


 息を止める。


 逃げるか。


 動くか。


 判断する時間は——もう、ほとんど残っていなかった。

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