表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/25

第4話 ずれているもの

 ルナが来るのが、当たり前になっていた。


 決まった時間。


 決まった声。


「エリシアー!」


 今日も、同じように始まる。


(……来たな)


 視線を向ける。


 走ってくる影。


 変わらない。


 少しだけ、安心する。



「ねえ、今日はちょっとだけ向こうに行かない?」


 ルナが指差す。


 村の端。


 その先には、木が増えている場所がある。


 森、と呼ぶほどではないが。


 奥までは、あまり行かない場所だ。


(……あっちか)


 なんとなく、視線を向ける。


 いつもと同じ景色。


 のはずなのに——


(……?)


 少しだけ、引っかかる。


 理由は分からない。


 でも。


 ほんのわずかに、“違う気がした”。


「大丈夫だよ、すぐ戻るし!」


 ルナは気にしていない。


(……どうする)


 一瞬、迷う。


 前なら——


(面倒だからやめる、だな)


 でも、それはしない。


「……うん。わかった」


 小さく、声が出る。


 まだぎこちない。


 でも、言葉になっていた。


「ほんと!? やった!」


 ルナが笑う。


 そのまま、手を引かれる。


 少し強い。


 でも——嫌じゃない。



 村の端。


 草が少し伸びている。


 人の気配は、少し遠い。


(……静かだな)


 風はある。


 葉も揺れている。


 でも——


(何か、足りない)


 そう思った。


 音。


 鳥の声が、ほとんどない。


 虫の音も、少ない。


「ねえ見て、これ!」


 ルナがしゃがみ込む。


 その先に視線を落とす。


 小さな動物がいた。


 動かない。


 倒れている。


「大丈夫かな……」


 ルナがそっと手を伸ばす。


(……待て)


 反射的に思う。


(なんか、変だ)


 怪我はない。


 血も出ていない。


 でも。


 様子が、どこかおかしい。


 呼吸はしている。


 なのに——違う。


「……エリシア?」


 ルナが振り返る。


(……どうする)


 考える。


 前なら、関わらない。


 でも——


(それでいいのか)


 小さく息を吐く。


 足を動かす。


 近づく。


 しゃがむ。


 手を伸ばす。


(……やっぱり、変だ)


 触れる前に、分かる。


 空気が、少しだけ歪んでいる気がする。


 言葉にできない違和感。


 それでも——


 手で、触れる。


 その瞬間。


 じわり、と。


 何かが流れた。


(……また、これか)


 以前、感じたもの。


 でも、今回は違う。


 触れた場所から、広がる。


 何かを“整える”ように。


 小さな動物の呼吸が、わずかに安定する。


「……あ」


 ルナが小さく声を漏らす。


「今、ちょっと……」


 言葉が続かない。


 何が起きたのか、分からないからだ。


(……なんだ、これ)


 理解できない。


 でも——起きたことだけは分かる。


 その時だった。


 風が、止まる。


(——来る)


 頭の奥で、声がする。


 理屈じゃない。


 でも、確信がある。


「……ルナ」


「え?」


「……いこ」


 短く言う。


 ルナは少し戸惑う。


 でも——


「……うん」


 すぐに頷いた。



 そのまま立ち上がる。


 背を向ける。


 歩き出す。


 振り返らない。


 何がいるか分からない。


 でも——見ない方がいいと分かっていた。


 しばらく歩く。


 何も起きない。


 それでも——緊張は消えない。


 村の音が戻ってきたとき。


 ようやく、息を吐いた。


「ねえ、さっきの……」


 ルナが小さく言う。


 エリシアは、答えない。


 答えられない。


(……分からない)


 ただ一つ。


 はっきりしていることがあった。


 あの場所は——普通じゃない。


 そして。


 その違和感は——


 まだ、終わっていない気がしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ