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Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


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第3話 はじめての距離

 外に出る回数が、少しずつ増えていた。


 理由は単純だ。


 母が連れ出すようになったから——というのもあるが。


 もう一つ。


「エリシアー!」


 遠くからでも分かる声。


 静かな村の中で、やけに響く。


(……また来た)


 視線を向ける。


 自分より少し大きい影が、まっすぐこちらに向かってくる。


 止まる気配はない。


「おっはよぉぉ!!」


 目の前で止まる。


 少し息を切らしながら、それでも笑っている。


「今日も来たよっ!」


(……そうか)


 来たのは分かっている。


 というか——


(毎日来てるだろ)


 声には出さない。


 まだ、うまく喋れないというのもあるが。


 仮に話せたとしても、同じことを言うかは分からない。


「エリシア、今日はね——」


 そのまま話し始める。


 止まらない。


 何の迷いもなく、距離を詰めてくる。


(……近いな)


 自然と、少しだけ体を引く。


 その動きに気づいたのか。


「ん?」


 一瞬だけ首を傾げて——


「そっか、まだちょっと怖い?」


 あっさり言った。


(……怖い、か)


 違う気もする。


 でも、完全に違うとも言い切れない。


 距離の取り方が分からないだけだ。


 どう近づけばいいのか。


 どこまで踏み込んでいいのか。


(……まあ)


 考える。


(前も、こんな感じだったか)


 うまくやれなかった。


 距離を詰めすぎるか、離れすぎるか。


 ちょうどいい場所が、分からなかった。


「じゃあ、ここにするね」


 少しだけ離れる。


 でも、いなくなるわけじゃない。


 その位置で、また笑う。


「これくらいなら大丈夫でしょ?」


 自然だった。


 押し付けない。


 でも、離れない。


(……変なやつ)


 そう思う。


 でも——


 悪くない、とも思っている。



「ねえ、これ見て!」


 手に何かを持っている。


 小さな花だった。


 色は薄く、目立つものじゃない。


 でも、丁寧に持っている。


「さっき見つけたんだ!」


 そう言って、差し出してくる。


(……どうする)


 一瞬だけ迷う。


 受け取るべきか。


 それとも、何もしないか。


 前なら——


(いらない、で終わりだな)


 でも、それはやらない。


 少しだけ手を動かす。


 ぎこちなく。


 小さな手で、花に触れる。


「……あ」


 ルナが、少しだけ目を見開く。


 そのあと——


「やった!」


 大げさなくらい、喜んだ。


「えらいね、エリシア」


(……そこまでか)


 少し驚く。


 ただ触れただけだ。


 それだけで、こんなに喜ぶものなのか。


「エリシア、ちゃんと受け取ってくれた!」


 違う。


 まだ、受け取ってはいない。


 ただ触れただけだ。


 でも——


(……まあ、いいか)


 否定はしなかった。



 それからも。


 ルナは、よく来るようになった。


 毎日、同じ時間。


 何かを持ってきたり。


 話をしたり。


 ただ隣に座っていたり。


 やることに一貫性はない。


 でも——


 来る。


 必ず。


(……なんでだ)


 疑問に思う。


 理由が分からない。


 自分といて、何が楽しいのか。


 話せるわけでもない。


 何かできるわけでもない。


 それでも——


 来る。


「また来たよ」


 今日も、同じ言葉。


 同じ笑顔。


(……分からないな)


 理解はできない。


 でも。


 嫌ではなかった。


 それどころか——


 少しだけ。


 ほんの少しだけ。


 その時間を、待っている自分がいた。

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