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Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


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第47話「先生も知らないこと」

 朝の授業が終わると、シアラは子どもたちを資料室へ集めた。


 今日は文字ではない。


 机の上には、いくつかの植物が並べられていた。


 赤い花。


 細長い葉。


 丸い実。


 見たことのあるものもあれば、初めて見るものもある。


◆


「今日は観察の勉強をします。」


 シアラは一枚の葉を手に取る。


「大切なのは、名前を覚えることではありません。」


「まずは、よく見ることです。」


◆


 子どもたちは植物を囲んだ。


 アレンは葉っぱを裏返したり、匂いを嗅いだりしている。


「これ、いい匂い!」


 ミレアは花びらを数えていた。


「七枚……かな?」


◆


 エリシアは何も触らなかった。


 ただ、じっと見ていた。


◆


(……あ。)


◆


 一枚だけ。


 葉の色が少し違う。


 同じ植物なのに、端だけ少し黄色くなっている。


◆


「先生。」


◆


「はい。」


◆


「……これ。」


 小さな指で葉を指差す。


◆


「……いろ。」


「ちがう。」


◆


 シアラは葉を受け取り、しばらく眺めた。


◆


「本当ですね。」


 少し驚いたように笑う。


◆


「どうしてだと思いますか?」


◆


 子どもたちは首を傾げる。


「病気?」


「虫かな?」


「日焼け?」


 いろいろな答えが飛び交う。


◆


 シアラは頷いた。


◆


「どれも考えられます。」


◆


「でも――」


 葉をそっと机へ戻す。


◆


「先生にも、まだ分かりません。」


◆


 教室が静かになる。


◆


 アレンが驚いた顔をした。


「先生でも?」


◆


 シアラは笑う。


◆


「ええ。」


◆


「先生だからといって、全部知っているわけではありません。」


◆


「知らないことは、調べます。」


◆


「分からないことは、考えます。」


◆


「それが勉強なんです。」


◆


 エリシアはその言葉を、心の中で何度も繰り返した。


◆


(……先生も。)


◆


(……しらない。)


◆


 それは不思議だった。


 でも、少し嬉しくもあった。


◆


 授業が終わると、エリシアは記録帳を開いた。


 葉っぱの絵を描く。


 黄色い部分だけ、少し濃く塗る。


 その横に、小さな「?」を書く。


◆


「おっ。」


 後ろからアレンが覗き込む。


◆


「これ、なに?」


◆


「……わかんない。」


◆


「だから。」


◆


「……かいた。」


◆


 アレンは少し考えてから笑った。


◆


「じゃあさ!」


◆


「分かったら、あとで書けばいいね!」


◆


 エリシアは目を丸くする。


◆


(……あとで。)


◆


 そうか。


 今日答えが出なくてもいいんだ。


◆


 分かった日が来たら、その時に続きを書けばいい。


◆


 記録帳は、一日で終わるものじゃない。


 少しずつ増えていくものなんだ。


◆


 その日の夕方。


 シアラは局長へ今日の授業の報告をしていた。


◆


「エリシアは、葉の色の違いに気付きました。」


◆


 局長は微笑む。


◆


「観察力が育っていますね。」


◆


「それだけではありません。」


◆


「答えが出ないことも、そのまま記録していました。」


◆


 局長は静かに窓の外を見る。


◆


「それでいい。」


◆


「研究とは、答えを書くことではない。」


◆


「問いを残すことでもある。」


◆


 その頃。


 部屋へ戻ったエリシアは、記録帳をもう一度開いていた。


◆


 葉っぱの横の「?」を見つめる。


◆


(……いつか。)


◆


(……わかるかな。)


◆


 小さく微笑む。


◆


 答えは、まだない。


 だから面白い。


 その日、エリシアは初めて――


「分からないことがあるのは、悪いことじゃない。」


と、心から思えた。

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