↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/54

第38話「はじめての図鑑」

 朝の鐘が鳴る前。


 エリシアはもう目を覚ましていた。


 窓から差し込む朝日を見ながら、小さく伸びをする。


(……きょうも。)


 起きる。


 食べる。


 訓練する。


 勉強する。


 少し前までは毎日同じだと思っていた。


 でも今は違う。


 毎日、何か一つ新しいことを知る。


 それが少し楽しみになっていた。


◆


 朝食を終えたあと。


 エリシアは訓練場ではなく資料室へ向かっていた。


 まだ授業までは少し時間がある。


 昨日借りた植物図鑑を返すためだ。


◆


 資料室にはシアラがいた。


 本棚を整理している。


「おはようございます。」


「……おはよ。」


 まだ少し言葉はぎこちない。


 でも以前よりは、はっきり話せるようになっていた。


◆


 図鑑を返す。


「全部見ましたか?」


「……うん。」


「でも。」


 少し考える。


「……もじ。」


「まだ、わかんない。」


 シアラが優しく笑う。


「それでいいんです。」


◆


「絵を見ることも勉強です。」


「名前を知ることも勉強です。」


「分からないと思うことも勉強なんですよ。」


◆


(……わからないも。)


 その言葉が少し不思議だった。


◆


「先生。」


「……どうして?」


◆


 シアラはしゃがみ、エリシアと目線を合わせる。


「分からないから、人は知ろうとするんです。」


◆


「もし全部知っていたら。」


「本なんて読む必要もありません。」


◆


 エリシアは小さく頷いた。


◆


(……そっか。)


◆


 知らない。


 だから知りたい。


◆


 それでいいんだ。


◆


「これ。」


 シアラは棚から一冊の小さな本を取り出した。


◆


 今度は図鑑ではない。


◆


 大きな文字が並んでいる。


 その横には可愛らしい絵。


◆


「文字の本です。」


◆


「一日一つ。」


「覚えていきましょう。」


◆


 エリシアは大事そうに受け取った。


◆


 表紙には大きく一文字。


◆


『あ』


◆


(……あ。)


 昨日覚えた文字だった。


◆


「読めましたね。」


◆


 シアラが嬉しそうに言う。


◆


 エリシアも少しだけ嬉しくなる。


◆


「……よめた。」


◆


 その時だった。


◆


「エリシア!」


◆


 元気な声が資料室に響く。


◆


 アレンだった。


 勢いよく入ってきて、慌てて立ち止まる。


◆


「あ……。」


◆


「ご、ごめんなさい。」


◆


 シアラは苦笑した。


「ここでは静かに、ですよ。」


◆


「はーい……。」


◆


 少ししょんぼりするアレン。


◆


 その様子がおかしくて。


◆


 エリシアは思わず笑った。


◆


「……ふふ。」


◆


「あっ!」


 アレンが驚く。


◆


「エリシア、笑った!」


◆


「え?」


 エリシアはきょとんとする。


◆


「いつもあんまり笑わないのに!」


◆


 そう言われると少し恥ずかしい。


◆


「……そう?」


◆


「うん!」


◆


「笑ったほうがかわいい!」


◆


 その一言で。


◆


 エリシアは顔を赤くした。


◆


「…………。」


◆


 言葉が出ない。


◆


 シアラが小さく笑う。


◆


「アレン。」


「女の子は照れるものですよ。」


◆


「え?」


◆


「そうなの?」


◆


 本気で首を傾げるアレン。


◆


 その姿に。


◆


 今度は三人とも笑ってしまった。


◆


 資料室には。


 久しぶりに、子どもたちの笑い声が響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。