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Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


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37/54

第37話「名前」

 資料室へ通うようになってから、数日が過ぎた。


 朝は木剣の訓練。


 昼は文字の勉強。


 時間があれば資料室。


 それが、エリシアの日課になり始めていた。


◆


 午後の訓練が終わる。


 子どもたちは、それぞれ好きな場所へ散っていく。


 エリシアは木剣を抱えながら、いつもの訓練場へ向かった。


 そこには、やっぱりあの少年がいた。


 金色の髪。


 今日も一人で木剣を振っている。


◆


(……また。)


 少しだけ笑う。


 自然と足が向いた。


◆


「……やる?」


 少年が振り返る。


◆


「……うん。」


 エリシアも木剣を構える。


 二人で並ぶ。


◆


 ブン。


 ブン。


◆


 木剣の音だけが響く。


◆


 しばらくして。


 少年が木剣を肩に乗せた。


◆


「あ!」


◆


「そういえば!」


◆


 何か思い出したように笑う。


◆


「ぼくたち!」


「まだ名前知らない!」


◆


 エリシアも目を丸くする。


◆


(……ほんとだ。)


◆


 毎日一緒にいたのに。


 今まで気づかなかった。


◆


 少年は胸を張る。


◆


「ぼく、アレン!」


◆


 にこっと笑う。


◆


「アレンだよ!」


◆


 エリシアも少し照れながら答える。


◆


「……エリシア。」


◆


「エリシア!」


◆


 アレンは嬉しそうに名前を繰り返した。


◆


「よろしく!」


◆


 小さな手を差し出す。


◆


 エリシアは少しだけ迷う。


 それから、そっとその手を握った。


◆


「……よろしく。」


◆


 二人とも笑う。


◆


 それだけ。


◆


 でも。


 昨日までより、少しだけ近くなった気がした。


◆


 少し離れた場所では、ミレアがその様子を見ていた。


◆


「やっと名前聞いたね。」


◆


 くすっと笑う。


◆


「おそいよ。」


◆


 シアラも穏やかに頷く。


◆


「名前を知るということは。」


◆


「その人を知る最初の一歩です。」


◆


 その言葉に、エリシアは小さく頷いた。


◆


 夕方。


 掃除を終えたエリシアは、廊下で一冊の古いノートを見つけた。


◆


「?」


◆


 そっと持ち上げる。


 その時。


◆


「それは私のだ。」


◆


 局長だった。


◆


「……ご、ごめんなさい。」


◆


 慌てて返そうとする。


 局長は優しく笑う。


◆


「いい。」


◆


「少しだけ見るか?」


◆


 エリシアは目を輝かせた。


◆


 ページを開く。


◆


 文字。


 絵。


 地図。


 植物。


 魔法陣。


 影喰いのような絵。


◆


 全部に、小さな書き込みがある。


◆


「これ……」


◆


「私が若い頃に調べた記録だ。」


◆


「分からないことを書いて。」


「調べて。」


「また書いて。」


◆


 局長は静かに笑う。


◆


「最初から答えはなかった。」


◆


「だから、自分で探した。」


◆


 エリシアはノートをじっと見つめる。


◆


(……すごい。)


◆


 こんなふうに。


 自分だけの記録を残せるんだ。


◆


「……わたしも。」


◆


 思わず呟く。


◆


「いつか。」


◆


「かいてみたい。」


◆


 局長は優しく頷いた。


◆


「きっと書ける。」


◆


「君だけの一冊を。」


◆


 その日。


 エリシアの胸に、小さな夢がまた一つ増えた。


“知ったことを、自分の言葉で残したい。”

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