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Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


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35/54

第35話「どうして?」

 朝の訓練が終わる。


 子どもたちは木剣を片付け、それぞれ休憩へ向かっていく。


 今日も汗をかいた。


 腕も少しだけ重い。


 でも、不思議と嫌ではない。


◆


 エリシアは木剣を見つめた。


(……きのうより。)


 軽い。


 少しだけ。


 本当に少しだけだった。


◆


(……なんで?)


 ふと疑問が浮かぶ。


 腕の力が強くなったのだろうか。


 それとも持ち方が変わったのか。


 理由は分からない。


◆


 もう一度だけ。


 誰もいない訓練場で木剣を構える。


 昨日と同じように振る。


 ブン。


◆


(……ちがう。)


 もう一度。


◆


 ブン。


◆


(……こっち。)


 今度は足の向きを少しだけ変えてみる。


 木剣を振る。


◆


 ブン。


◆


「あ……。」


 少しだけ軽い。


 腕ではなく。


 体全体で振れた気がした。


◆


(……そういうこと?)


 誰かに教わったわけじゃない。


 偶然だった。


 でも。


 昨日より振りやすい。


◆


 その時だった。


◆


「何してるの?」


◆


 後ろから声。


 ミレアだった。


◆


「……ためしてる。」


◆


「試してる?」


◆


「……うん。」


 木剣を見せる。


◆


「こっち。」


 足を動かす。


 もう一度振る。


◆


 ブン。


◆


「さっきより。」


「……かるい。」


◆


 ミレアは首を傾げる。


「そんなの分かるの?」


◆


「……なんとなく。」


◆


 自分でも説明はできない。


 でも。


 違うことだけは分かった。


◆


「ふーん。」


 ミレアは笑う。


「エリシアって、面白いね。」


◆


(……そうかな。)


 自分では普通だった。


 気になったから試した。


 ただそれだけ。


◆


 その様子を、少し離れた場所から見ている人がいた。


◆


 シアラだった。


◆


 隣には局長もいる。


◆


「教えたのですか?」


 シアラが尋ねる。


◆


 局長は静かに首を振る。


◆


「いや。」


◆


「自分で気付いた。」


◆


 その言葉に、シアラは驚く。


◆


「まだ三歳ですよ。」


◆


「ああ。」


◆


 局長は訓練場を見つめたまま言う。


◆


「だからこそだ。」


◆


「答えを教えるより。」


◆


「疑問を持つ子に育ってほしい。」


◆


◆


 昼休み。


◆


 エリシアは中庭の花壇へ座っていた。


◆


 一輪の花を見る。


◆


 昨日より少し開いている。


◆


(……なんで。)


◆


 朝だから?


 太陽?


 水?


◆


 分からない。


◆


 でも。


 知りたかった。


◆


 指先でそっと花びらに触れる。


◆


「エリシア。」


◆


 シアラが隣へ座った。


◆


「お花、好きですか?」


◆


「……うん。」


◆


「どうして?」


◆


 少し考える。


◆


「……かわる。」


◆


「昨日と。」


◆


「ちがう。」


◆


 シアラは少しだけ目を見開いた。


◆


「よく見ていますね。」


◆


 優しく笑う。


◆


「変わるものを知ることは、とても大切なんですよ。」


◆


 その言葉は。


 幼いエリシアには、まだ少し難しかった。


◆


 それでも。


 胸の奥には残った。


◆


 変わる。


◆


 昨日と今日。


◆


 花も。


 木剣も。


 自分も。


◆


(……もっと。)


(……しりたい。)


◆


 その小さな好奇心は。


 まだ誰にも気付かれない。


◆


 けれど。


 その日からエリシアは、毎日ひとつだけ「どうして?」を探すようになった。


◆


 木剣。


 花。


 風。


 魔力。


 影喰い。


◆


 すべては、小さな疑問から始まる。


◆


 そしてその積み重ねが、未来のエリシアだけが辿り着ける答えへと繋がっていくことを――


 今はまだ、誰も知らなかった。

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