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Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


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33/54

第33話「支部という場所」

 朝の鐘が鳴る。


 管理局の一日は、今日も変わらず始まった。


 食堂には子どもたちの笑い声が響く。


 パンを頬張る子。


 眠そうに目をこする子。


 ミレアは今日も静かに本を読んでいた。


「おはよう。」


「……おはよ。」


 エリシアが隣へ座る。


 少しずつ、この席が自分の居場所になっていた。


◆


 朝食を終えると、子どもたちは講義室へ集められた。


 今日はシアラではない。


 見慣れない女性局員が前に立っていた。


 年齢は三十代くらい。


 腰には一本の細剣。


 落ち着いた雰囲気をまとっている。


「私はリゼット。」


「今日は管理局について教えます。」


◆


 教室が静かになる。


 リゼットは黒板へ世界地図を描き始めた。


 中央大陸。


 西方。


 北方。


 南方。


 東方。


 海の向こうの島々。


◆


「管理局は、一つではありません。」


 丸を描く。


 そこから線が伸びる。


 また丸が増える。


◆


「世界各地に支部があります。」


「この支部同士が協力しながら、影喰いから人々を守っています。」


◆


(……いっぱい。)


 エリシアは目を丸くする。


 村しか知らなかった自分には、想像もできない広さだった。


◆


「でも。」


 リゼットの声が少しだけ低くなる。


「全ての支部が同じように平和ではありません。」


◆


 教室が静まり返る。


◆


「影喰いの発生が少ない地域。」


「毎日のように討伐が行われる地域。」


「支部そのものが壊滅した地域。」


◆


 最後の言葉に、子どもたちが息を呑む。


◆


「だから管理局は、互いに助け合います。」


「一つの支部だけでは守れない場所もあるからです。」


◆


 エリシアは昨日の報告書を思い出した。


 西方第二支部。


 被害多数。


(……あそこ。)


 きっと今も誰かが戦っている。


◆


「先生。」


 一人の子どもが手を挙げた。


「全部の影喰いを倒したら、平和になるの?」


◆


 リゼットは少しだけ考える。


 そして静かに答えた。


「……それができれば、いいのですが。」


◆


「影喰いは、どこから現れるのか。」


「なぜ現れるのか。」


◆


「それは、今も分かっていません。」


◆


 エリシアは思わず顔を上げた。


(……わかってない。)


 管理局でも。


 誰も。


◆


(……じゃあ。)


(……なんで。)


◆


 自分にだけ見えるのだろう。


◆


 胸の奥に、小さな疑問が残る。


◆


 講義が終わる。


 子どもたちが教室を出ていく。


◆


 エリシアも立ち上がろうとした、その時だった。


◆


「エリシア。」


◆


 リゼットが呼び止める。


◆


「はい。」


◆


「あなたが局長の話していた子ね。」


◆


(……?)


◆


 意味は分からない。


 首を傾げる。


◆


 リゼットは優しく笑った。


「頑張ってね。」


「あなたなら、きっと大丈夫。」


◆


 それだけ言って歩いていく。


◆


(……なんで。)


 何が大丈夫なのか。


 分からない。


◆


 でも。


 その言葉は、不思議と温かかった。


◆


 廊下へ出る。


◆


 窓から外を見る。


 訓練場では局員たちが剣を交えている。


 魔術が飛び交う。


 掛け声が響く。


◆


(……ひろいな。)


 管理局も。


 世界も。


◆


 そして。


 そのどこかで。


 今日も誰かが、影喰いと戦っている。


◆


 同じ頃――


◆


 雪に覆われた北の地。


◆


 一人の少女が、凍った湖の前に立っていた。


 年は五歳ほど。


 白い息を吐きながら、小さな木槍を握っている。


◆


「まだ終わらない。」


 少女は誰に言うでもなく呟く。


◆


 湖の向こう。


 黒い霧がゆっくりと揺れていた。


◆


 その瞳には恐怖はない。


◆


 あるのは――


 静かな覚悟だけだった。

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