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Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


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第23話「見えないもの」

 訓練が終わったあと。


 エリシアは少しだけ落ち込んでいた。



 ミレアはできた。


 他の子たちもできた。



 小さな光。


 小さな魔力。


 それでも、ちゃんと形になっていた。



 なのに——


(……なんにも、ない)


 自分だけ。



 部屋へ戻る途中も、頭の中はそのことでいっぱいだった。



「エリシア」


 ミレアが声をかける。


「だいじょうぶ?」



「……うん」


 反射的に答える。



 でも。


 たぶん顔に出ていた。



 ミレアは少し困った顔をした。


「先生も言ってたよ」


「人によって違うって」



「……うん」



 分かっている。


 分かっているけど。



 心は、そんなに簡単じゃない。



 前世でもそうだった。



 頭では分かる。


 でも、気持ちが追いつかない。



(……だめだな)


 小さく思う。



 そこで。


 ふと、違和感を感じた。



(……あれ?)



 足が止まる。



 廊下の窓。


 その向こう。



 庭の端。



 黒い何かが見えた。



(……いる)



 影喰い。



 小さい。


 今まで見た中で、一番小さい。



 人の子供くらい。



 でも——


 間違いない。



「ミレア」



「え?」



「あそこ」


 指を向ける。



 ミレアが見る。


 でも首を傾げる。



「何もないよ?」



 やっぱり。



 エリシアには見える。



 でも、他の人には見えない。



 その時だった。



 影喰いが動いた。



 庭の花壇へ近づく。



 そして——



 花が一輪。


 ゆっくり萎れた。



(……え)



 息を飲む。



 今まで知らなかった。



 影喰いは人だけじゃない。



 植物にも影響する。



 それとも——



 もっと別の何かなのか。



(……だめだ)



 考える前に。


 体が動いていた。



 走る。



「エリシア!?」


 後ろでミレアが呼ぶ。



 庭へ出る。



 影喰いは気づいていない。



 ふらふらと揺れている。



 近づく。



 手を伸ばす。



 少し怖い。



 でも——



(……やる)



 触れる。



 その瞬間。



 世界が静かになった。



 音が消える。



 風も止まる。



 そして——



 見えた。



(……なに、これ)



 黒い霧の奥。



 壊れた糸。



 絡まった線。



 ひび割れた何か。



 そんな光景。



 理解はできない。



 でも。



 なぜか分かる。



(……こわれてる)



 影喰いじゃない。



 もっと奥。



 何かが壊れている。



 だから——


 影喰いが生まれる。



 そんな気がした。



 気づけば。


 手が動いていた。



 直すように。



 整えるように。



 優しく。



 触れる。



 すると——



 黒い霧が崩れた。



 さらさらと。



 砂みたいに。



 消えていく。



 そして。



 花壇の花が、少しだけ元気を取り戻した。



(……あ)



 その瞬間。


 頭の奥が少し痛んだ。



 ふらりと体が揺れる。



「エリシア!」



 誰かが支える。



 ミレアだった。



「だいじょうぶ!?」



「……うん」



 本当は少し違う。



 疲れた。



 ほんの少しだけ。



 でも。



 今までとは違うことが分かった。



 自分は影喰いを倒しているんじゃない。



 影喰いの原因になった何かに触れている。



 そんな気がした。



 その時。



 二階の窓から。



 局長が静かにその光景を見ていたことを——



 エリシアは知らなかった。

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