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Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


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第20話「局長」

 朝。


 目を覚ますと、部屋の空気が少し違っていた。


(……?)


 静か。


 でも——張っている。


 そんな感じ。



 ミレアも、もう起きていた。


 服を整えている。


 少しだけ、いつもより動きが早い。



「……きた?」


 エリシアが聞く。


 ミレアが、小さく頷いた。


「うん。局長」



 その名前を聞いた瞬間。


 廊下の空気が変わった気がした。


 人の動く音。


 短いやり取り。


 でも、無駄がない。



(……えらいひと、か)


 まだ実感はない。


 でも——


 みんなの反応で分かる。


 普通じゃない。



 部屋の扉が叩かれる。


「準備はできてるな」


 調査員の声。


「……うん」



 廊下を歩く。


 昨日より静かだった。


 いや、違う。


 みんな“静かにしている”。


 そんな感じ。



 途中ですれ違う局員たちも、動きが早い。


 でも慌ててはいない。


 整っている。



(……すごいな)


 自然とそう思う。


 誰も大声を出さない。


 それでも、全部動いている。



 昨日の部屋の前で止まる。


「入れ」


 短い声。



 中へ入る。


 昨日と同じ部屋。


 でも——


 空気は全然違った。



 一人、座っている。


 年齢は分からない。


 若くも見えるし、年上にも見える。


 黒い服。


 装飾は少ない。


 でも——


(……ちがう)


 入った瞬間に分かる。


 この人は、他と違う。



 目が合う。


 一瞬。


 それだけで——


 見られている感じがした。


 表面じゃない。


 もっと奥まで。



「その子か」


 静かな声だった。


 大きくない。


 でも、部屋にちゃんと届く。



「……エリシアです」


 調査員が答える。



 その人——局長は、しばらくエリシアを見ていた。


 何も言わず。


 ただ静かに。



(……なんだ)


 怖いわけじゃない。


 でも、落ち着かない。


 隠せる気がしない。



「こちらへ」


 局長が言う。


 短く。


 でも、逆らえない感じがある。



 前へ行く。


 小さな足音。


 部屋が静かだから、少し響く。



「手を」


 昨日と同じ。


 透明な板が置かれている。



(……またか)


 少しだけ息を吐く。


 でも、ちゃんと手を伸ばす。


 触れる。



 一瞬。


 光が揺れる。


 昨日より、強く。



 部屋の空気が止まる。


 誰も動かない。



 そして——


 透明だった板に、細い線が浮かび上がった。


 黒ではない。


 白でもない。


 淡く揺れる、不思議な色。



「……初めて見るな」


 局長が、小さく呟く。


 初めて。


 その言葉に、周囲の空気が変わる。



「属性反応が存在しない」


 静かな声。


「だが、拒絶もしていない」



(……ぞくせい?)


 分からない言葉。


 でも、誰かが驚いているのは分かる。



「通常、人は何かしらに偏る」


 局長の視線が、板へ向く。


「炎、水、風、土、光」


「あるいは、それ以外か」



 そこで少し止まる。


 そして——


「だが、この子には“境界”がない」



 部屋が静かになる。


 誰も、すぐには反応しない。



(……きょうかい)


 また知らない言葉。


 でも——


 なぜか、少しだけ引っかかった。



「……局長」


 調査員が口を開く。


「それは——」


「まだ断定はしない」


 静かに遮られる。


 でも、その声は強かった。



 局長が立ち上がる。


 ゆっくりと、エリシアの前まで来る。



「エリシア」


 名前を呼ばれる。


 顔を上げる。



「君は、自分の力を知りたいか?」



 真っ直ぐな問いだった。


 試すようでもなく。


 誘うようでもない。


 ただ、確認するみたいに。



(……ちから)


 少し考える。


 見える理由。


 触れられる理由。


 戻せる理由。



 分からないままは——少し嫌だった。



「……しりたい」


 自然と、言葉が出る。



 局長が、小さく頷く。


「ならば学べ」


 静かな声。


「君の力は、まだ形になっていない」



 その言葉は、不思議とすんなり入ってきた。



「今日から、正式に保護対象とする」


 局長が言う。


「同時に——観察対象でもある」



(……かんさつ)


 少しだけ嫌な言葉。


 でも——


 それ以上に。



(……まなぶ)


 そっちの方が、少し気になった。



 局長は、最後にもう一度だけ板を見る。


 揺れる光。


 淡い色。


 普通じゃない反応。



「……面白い」


 小さく呟いた。



 その瞬間。


 エリシアは初めて感じた。



 自分の中にある“何か”を。


 まだ小さい。


 形もない。


 でも——


 確かに、そこにあるものを。

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