表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/25

第19話「触れる理由」

 その日の夜。


 なかなか眠れなかった。


 部屋は静かだ。


 物音も少ない。


 でも——


(……いる)


 感じる。


 遠く。


 薄く。


 黒い違和感。



 前みたいにはっきりじゃない。


 でも、分かる。


 どこかにいる。


 動いている。



 布団の中で、小さく息を吐く。


(……なんなんだ、あれ)


 何度も思う。


 でも、答えは出ない。



「……起きてる?」


 小さな声。


 横を見る。


 ミレアだった。


 同じ部屋。


 少し離れたベッドの上から、こっちを見ている。



「……うん」


「そっか」


 短いやり取り。


 でも、ミレアは少し安心したみたいだった。



「……怖い?」


 小さく聞かれる。


(……こわい)


 そう思う。


 でも——


「……ちょっと」


 前より、ちゃんと言葉が出る。



「私も、最初は怖かった」


 ミレアがぽつりと言う。


「……みえたの?」


 少し驚いて聞く。


 ミレアは、ゆっくり首を振った。


「見えないよ」


「でも、感じる人はいるって聞いた」



 そこで少し止まる。


 迷うみたいに。



「……エリシアは、特別なんだと思う」


(……また、それか)


 小さく思う。


 特別。


 普通じゃない。


 最近、何度も聞く言葉。



「……やだ?」


 ミレアが聞く。


(……いや、か)


 少し考える。



 前の自分なら。


 きっと嫌だった。


 周りと違うこと。


 浮くこと。


 見られること。


 そういうのが、苦手だった。



 でも——


(……いまは)


「……わかんない」


 正直に言う。


「でも……」


 そこで少し止まる。


 言葉を探す。



「……みえるなら」


「……たすけられる、かも」


 うまく言えない。


 でも、気持ちは本当だった。



 ミレアが、少しだけ目を見開く。


 それから——


「……うん」


 小さく笑った。



 静かな時間が流れる。


 窓の外では、風が揺れている。



「ねえ」


 ミレアが、また口を開く。


「局長、明日来るって」


(……きょくちょう)


 知らない言葉。


 でも——


 なんとなく、偉い人。



「えらいひと?」


「うん。すごく」


 少しだけ真面目な顔で頷く。



「エリシアのこと、直接見るって」


(……また、みられるのか)


 小さく息を吐く。


 最近、そればっかりだ。



「……へんなの」


 ぽつりと漏れる。


 ミレアが少し笑う。


「うん。変」



 でも——


 その空気は、悪くなかった。


 笑われている感じじゃない。


 一緒に思っている感じ。



「……ねる?」


 エリシアが聞く。


「……うん」


 ミレアが頷く。



 部屋の灯りが落ちる。


 静かになる。



 目を閉じる。


 少しだけ、呼吸が落ち着く。



 前なら。


 こんな場所、無理だったかもしれない。


 知らない場所。


 知らない人。


 ずっと緊張していたと思う。



 でも——


(……へいき、だな)


 不思議だった。


 怖さはある。


 分からないことも多い。


 それでも——


 ひとりじゃない。


 それだけで、少し違った。



 薄れていく意識の中で、ふと思う。


 どうして、自分だけ見えるのか。


 どうして、触れられるのか。



 そして——


(……なんで、なおせるんだ)


 あの時。


 触れた時。


 ただ消した感じじゃなかった。



 “戻した”


 そんな感覚だった。



 そこまで考えて——


 意識が、ゆっくり沈んでいく。



 静かな夜だった。


 でも——


 世界のどこかでは、まだ何かが動いている。


 そんな気配だけが、微かに残っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ