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Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


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第18話「静かな場所」

 管理局での生活は、思っていたより静かだった。


 人は多い。


 でも、騒がしくない。


 みんな、必要なことだけ話して動いている。


(……へんなかんじ)


 村とは全然違う。


 でも、不思議と嫌じゃなかった。



 朝。


 起きる時間は決まっている。


 食事の時間も。


 移動する時間も。


 全部、ちゃんと決まっていた。


(……きまってるな)


 最初は少し疲れた。


 でも——


 慣れるのは、早かった。



「エリシア」


 名前を呼ばれる。


 振り向く。


 ミレアだった。


「ごはん、行くって」


「……うん」


 短く返す。



 一緒に歩く。


 ミレアは、あまり喋らない。


 必要以上に近づいてもこない。


 でも——


 ちゃんと隣にいる。


(……らくだな)


 自然とそう思う。


 ルナとは違う。


 あっちは、もっと近い。


 こっちは、静か。


 でも——


 どっちも嫌じゃない。



 食堂に入る。


 朝より、人が多い。


 でも、やっぱり静かだ。


 話し声はある。


 でも、大きくない。



「ここ」


 ミレアが席を指さす。


 座る。


 向かいに、ミレア。


 少し横には、知らない大人たち。


 誰も、無理に話しかけてこない。


(……みられてるけど)


 視線は感じる。


 でも、それだけ。



「慣れた?」


 突然、ミレアが聞いた。


 少しだけ驚く。


 でも——


「……ちょっと」


 ちゃんと答える。


 前より、言葉が出る。



「そっか」


 ミレアが小さく頷く。


 それで終わり。


 でも、変な感じはしない。



 食事を終えて、部屋へ戻る途中。


 ふと、足が止まる。


(……ん?)


 違和感。


 小さい。


 でも、確かにある。



「……エリシア?」


 ミレアが振り返る。


 その声で、少し戻る。


「……あっち」


 廊下の奥を指さす。


 誰もいない。


 でも——


(……いる)


 薄い。


 本当に少しだけ。


 黒い“にじみ”みたいなもの。



 ミレアには見えていない。


 でも、すぐに顔色が変わった。


「……また?」


 小さな声。


「……うん」



 その瞬間だった。


「何を見た」


 後ろから声。


 振り向く。


 昨日の調査員。


 いつの間にか立っていた。



「……あそこ」


 指を向ける。


 調査員の目が細くなる。


 ゆっくり歩いていく。


 そして——


 何もない空間に、手を伸ばした。



 一瞬。


 空気が揺れる。


 黒いにじみが、ぶれる。


 そのまま——消えた。



「……やはり見えているか」


 小さく呟く。


 その顔は、昨日より少し真剣だった。



「普通、支部の中までは入ってこない」


 短く言う。


(……はいってきた)


 つまり、それは。


 前より近い、ということ。



「ミレア」


「……はい」


「しばらく、エリシアから離れるな」


 静かな命令。


 ミレアが頷く。


 迷いなく。



(……なんで)


 少しだけ引っかかる。


 自分から離れるな。


 それはつまり——


(……まきこまれる?)


 自然と、そう考える。



「だいじょぶ」


 気づけば、口にしていた。


 ミレアが、少し驚いた顔をする。


 調査員も、一瞬だけ止まった。



「……たぶん」


 小さく付け足す。


 自信はない。


 でも——


 不思議と、そう思った。



 調査員は、しばらくこちらを見ていた。


 それから、小さく息を吐く。


「無茶はするな」


 それだけ言って、歩き去っていく。



 静かになる。


 でも——


 さっきまでと同じ静けさじゃない。


(……ふえてる)


 少しずつ。


 確実に。


 何かが近づいている。


 そんな感じがした。



「……部屋、戻ろ」


 ミレアが言う。


「……うん」


 短く頷く。


 一緒に歩き出す。



 廊下を進みながら、ふと思う。


 村の外へ出た。


 管理局へ来た。


 知らない世界に入った。


 そして——


(……まだ、おわってない)


 あの影は、ずっと続いている。


 見えない場所で。


 静かに。


 でも、確実に。



 小さく息を吐く。


 怖さは、まだある。


 でも——


 逃げたいとは、少し違った。


(……しりたい)


 なぜ見えるのか。


 なぜ触れられるのか。


 なぜ、自分だけなのか。


 分からないことは、多い。


 でも——


 その答えを、知りたいと思い始めていた。

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