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Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


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第14話「知らないもの」

 歩く時間が、長くなってきた。


 同じ道。


 同じ景色。


 でも——


(……すこし、なれたな)


 最初より、足が動く。


 息も、乱れにくい。



「少し休む」


 調査員が言った。


 立ち止まる。


 近くの木陰。


 そこに座る。


 足を伸ばすと、少しだけ楽になる。


(……つかれた)


 正直に思う。


 でも、嫌じゃない。


 動いている感じがある。



 他の人たちは、水を飲んだり、周囲を見たりしている。


 無駄な動きはない。


 でも、止まっているわけでもない。


(……へんなかんじだな)


 静かだけど、緩んでいない。


 そんな空気だった。



「……さっきのことだ」


 調査員が、こちらを見る。


 急に話が来る。


「影喰いを見て、どう感じた」


(……どう、か)


 少しだけ考える。


 言葉にするのは、難しい。


「……へん」


 それしか出てこない。


 調査員は、わずかに頷いた。


「そうだな」


 否定しない。


 そのまま続ける。


「影喰いは、この世界の歪みだ」


 短い説明。


 それ以上は言わない。


 でも——


(……ゆがみ)


 聞いたことのない言葉。


 でも、なんとなく分かる。


 “普通じゃないもの”


 そういう意味だと。



「普通の人間には、触れられない」


 続ける。


「見えない場合もある」


(……じゃあ)


 思う。


 昨日のこと。


 あの場にいた人たち。


「……なんで、みえた」


 小さく聞く。


 調査員は、少しだけ考えてから答えた。


「濃度が高ければ、誰でも感じる」


 簡単な言葉。


「だが——触れられるのは別だ」


 その視線が、こちらに向く。


 まっすぐに。


(……やっぱりか)


 分かっている。


 普通じゃない。


 それは、もう。



「管理局の者は、訓練で触れられるようになる」


 少しだけ、周りを見る。


 他の人たち。


 あの場にいた者たち。


「だが、お前は違う」


 はっきり言う。


「最初から干渉している」


(……さいしょから)


 自分の手を見る。


 変わらない。


 普通の手。


 でも——


(……ちがう、のか)



「理由は分からない」


 調査員は言った。


「だから調べる」


 それだけ。


 無駄な言葉はない。


 でも——


(……しらべる)


 少しだけ、引っかかる。


 怖い、というより——


 分からない。


 どうなるのか。



「怖いか」


 また聞かれる。


 同じ言葉。


 でも、さっきとは少し違う。


(……うーん)


 少し考える。


 正直な気持ちを探す。


「……わかんない」


 そのまま言う。


 嘘じゃない。


 怖いとも違う。


 安心でもない。


 ただ——


 分からない。


 調査員は、少しだけ目を細めた。


「そうか」


 それだけ言う。



 しばらく、何も話さない時間が続く。


 風の音だけがある。


 葉が揺れる。


 遠くで、鳥の声。


(……さっきより、あるな)


 ふと気づく。


 音が戻っている。


 昨日の場所とは違う。


 ちゃんと、生きている感じがする。



「行くぞ」


 調査員が立ち上がる。


 それに合わせて、みんなも動く。


 自然と、体がついていく。



 また歩き出す。


 同じ道。


 でも、少しだけ違う。


(……すこし、わかった)


 影喰い。


 歪み。


 触れるかどうか。


 全部は分からない。


 でも——


 何も知らないわけじゃなくなった。



 前を見る。


 道は、まだ続いている。


 遠くまで。


 その先に何があるのかは、分からない。


 でも——


(……いくしかないか)


 小さく思う。


 足を動かす。


 止まらない。


 それだけで、今は十分だった。

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