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Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


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第13話「はじめての外」

 朝は、思ったより静かだった。


 いつもと同じ時間。


 いつもと同じ光。


 でも——


(……ちがうな)


 空気が、少しだけ違う。


 もう決まっているからだ。


 ここを出ることが。



 準備は、ほとんどなかった。


 持っていくものも、少ない。


 服と、少しの食べ物。


 それと——


(……これ)


 手の中の石。


 ルナからもらったもの。


 小さく握る。


 それだけで、少しだけ落ち着く。



 家の外に出ると、すでに人が集まっていた。


 多くはない。


 でも、見慣れた顔ばかりだ。


 誰も大きな声は出さない。


 ただ、静かに見ている。


(……みてるな)


 昨日と同じ。


 でも、嫌な感じではない。


 少しだけ、違う。



「行くぞ」


 調査員の声。


 短く、それだけ。


 振り返る。


 父と母がいる。


 すぐ近くに。


 でも、手は伸ばさない。


 昨日で、終わっている。


 言葉は。



「……エリシア」


 母が呼ぶ。


 顔を上げる。


「元気でね」


 それだけ。


 短い言葉。


 でも——


 全部入っている。


「……うん」


 小さく頷く。


 それ以上は言えない。


 言わない方がいい気がした。



 父は、何も言わなかった。


 ただ、こちらを見る。


 少しだけ、目を細めて——


 それだけで、十分だった。


(……わかる)


 言葉にしなくても、伝わる。


 そういう距離だった。



 歩き出す。


 一歩。


 もう一歩。


 足は止まらない。


 振り返らない。


 振り返ったら——止まりそうだったから。



 村の端。


 あの場所を、通り過ぎる。


(……ここか)


 最初に違和感を感じた場所。


 あの影が出た場所。


 少しだけ、空気が重い気がする。


 でも——


 何も起きない。


 そのまま、通り過ぎる。



 村の外に出る。


 そこから先は——知らない景色だった。


 道が続いている。


 遠くまで。


 見たことのない広さ。


(……ひろいな)


 自然と、そう思った。


 空も、広い。


 風も、少し違う。


 匂いも、違う。


 全部が——少しずつ違う。



「歩けるか」


 調査員が聞く。


「……うん」


 短く答える。


 本当は、少し疲れている。


 でも——


 止まりたくない。


「無理はするな」


 それだけ言う。


 優しくはない。


 でも、冷たくもない。


 ただ事実だけを言う感じ。


(……このひと)


 まだよく分からない。


 でも、悪い感じはしなかった。



 しばらく歩く。


 村の気配が、少しずつ遠くなる。


 声も、音も、全部。


 小さくなっていく。


(……ほんとに、でたな)


 今さら、実感がくる。


 もう戻れない。


 さっきまでの場所には。


 でも——


(……いいか)


 小さく思う。


 怖いのは、変わらない。


 分からないことも、多い。


 それでも——


 足は、前に出ている。



 ふと、手を見る。


 石を握っている。


 小さい。


 でも、確かにある。


(……ここにいる)


 ルナの言葉を思い出す。


 “待ってる”


 それだけ。


 でも、十分だった。



 前を見る。


 道が続いている。


 どこまで行くのかは分からない。


 でも——


 止まらない。


 止まらないと、決めた。


 小さく息を吸う。


 少しだけ、胸が軽くなる。


(……いくか)


 それだけ思う。


 それで、十分だった。

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