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Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


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第12話「ここにいる約束」

 その日の夜。


 家の中は、いつもより静かだった。


 誰も、すぐには口を開かない。


 食事は並んでいる。


 でも、手が進まない。


(……重いな)


 分かっている。


 昼の話。


 あれが、全部を変えた。



「……エリシア」


 母が、先に口を開いた。


 少しだけ迷ったように。


 それでも、ちゃんとこちらを見る。


「あなたのこと、大切に思ってる」


 ゆっくりとした言葉。


 ひとつずつ、確かめるように。


「だから——守りたいの」


(……うん)


 分かる。


 言われなくても。


 その気持ちは、ずっと感じていた。


「でもね」


 そこで少しだけ、声が揺れる。


「ここにいたら……守りきれないかもしれない」


 その一言が、重く落ちる。



 父は、すぐには口を開かなかった。


 しばらく黙ってから——


「……選べ」


 短く言った。


 顔を上げる。


「ここに残るか」


「外へ行くか」


 それだけ。


 強制はしない。


 でも——逃げ道もない。


(……選ぶのか)


 少しだけ考える。


 怖い。


 分からない。


 知らない場所。


 知らない人間。


 でも——


(……ここにいたら)


 思い出す。


 あの影。


 あの違和感。


 そして——


(……また来る)


 確信があった。


 あれは終わっていない。


 ここにいれば、また起きる。


 その時——


(……守れるか?)


 答えは、出ている。


 小さく息を吐く。


「……いかなきゃ……だれか、アレに……」


 声は小さい。


 でも、迷いはなかった。



 母の手が、わずかに震える。


 でも、すぐに笑った。


 無理にじゃない。


 ちゃんとした笑顔で。


「……そっか」


 それだけ言う。


 それ以上は言わない。


 言えないのかもしれない。


 父も、静かに頷いた。


「……分かった」


 それで終わりだった。


 決まった。



 そのあと。


 ルナに会いに行った。


 場所は、いつものところ。


 もう暗くなり始めている。


 それでも——


 いた。


 最初から分かっていたみたいに。


「……ほんとに行くの?」


 背中越しに言われる。


 振り向く。


「……うん」


 短く答える。


 ルナは少しだけ黙る。


 それから——


「そっか」


 同じ言葉。


 でも、さっきとは違う重さ。



「ねえ」


 ルナが近づいてくる。


 いつもより、少しだけゆっくり。


「……すぐ帰ってくる?」


(……分からない)


 本当は。


 どれくらいかかるのか。


 戻れるのか。


 何も分からない。


 でも——


「……かえる」


 そう言った。


 嘘じゃない。


 そうするつもりだから。


 ルナが、じっとこちらを見る。


 少しだけ目が揺れる。


「……ほんと?」


「……ほんと」


 短く返す。


 少しの間。


 何も言わない時間。


 そして——


「じゃあ、待ってる」


 ルナが言った。


 迷いはなかった。



「これ、あげる」


 小さなものを差し出される。


 手のひらに乗るくらいの、石。


 少しだけ丸い。


「前に見つけたやつ」


 覚えている。


 あのときの花と一緒に持っていたものだ。


「お守り」


 そう言って、笑った。


(……そっか)


 ゆっくり受け取る。


 小さな手で、しっかり握る。


「……ありがと」


 少しだけ、言葉が出た。


 前より、自然に。


 ルナが、少しだけ驚いた顔をして——


 すぐに笑った。


「うん」



 風が吹く。


 少しだけ冷たい。


 でも、嫌じゃない。


「エリシア」


 ルナが呼ぶ。


「ちゃんと戻ってきてね」


 その声は、少しだけ強かった。


「……うん」


 頷く。


 短く。


 でも、ちゃんと。


 それだけで——


 十分だった。



 帰る道。


 手の中の石を、もう一度握る。


 小さい。


 でも、確かにある。


(……ここにいる)


 ふと、思う。


 この場所。


 この時間。


 この関係。


 全部——消えるわけじゃない。


 離れるだけだ。


 だから——


(……戻る)


 小さく決める。


 誰に言うわけでもなく。


 自分の中で。


 静かに。


 でも、はっきりと。


 そう決めた。

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