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Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


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第10話「外へ」

 影が消えたあとも、しばらく誰も動かなかった。


 風だけが戻る。


 さっきまでの重さが、嘘みたいに消えている。


「……本当に、消えたのか」


 誰かが小さく呟く。


 答える者はいない。


 ただ、視線だけが——エリシアに集まっていた。


(……またか)


 居心地が悪い。


 見られている。


 それも、さっきまでとは違う意味で。



「下がれ」


 あの男の声。


 大人たちが、少し距離を取る。


 その中で、父が一歩前に出た。


「……話をしよう」


 静かに言う。


 誰に、というわけじゃない。


 でも、その場の全員が聞いている。


「このままにはしておけない」


 短い言葉。


 重さだけが残る。


「管理局に報告する」


 その一言で、空気が変わった。


(……かんりきょく)


 聞いたことのない言葉。


 でも、周りの反応で分かる。


 軽いものじゃない。


「ここだけの話じゃ済まない、ということか」


 別の男が言う。


「……ああ」


 父は短く答える。


 それ以上は言わない。


 でも——十分だった。



 その日の夕方。


 村の空気は、朝よりもさらに重くなっていた。


 人の声は少ない。


 視線だけが増えている。


 家の中でも、同じだった。


 母は、いつもより静かだった。


 言葉は少ない。


 でも、何度もこちらを見る。


 何か言いたそうにして——やめる。


(……分かるけどな)


 簡単じゃない。


 自分でも分からないのだから。



 夜。


 食事が終わって、少し時間が経ったころ。


 父が口を開いた。


「……エリシア」


 名前を呼ばれる。


 顔を上げる。


「数日中に、人が来る」


 短く言う。


「管理局の者だ」


(……来るのか)


 少しだけ、胸がざわつく。


 何をされるのか。


 何を聞かれるのか。


 分からない。


「お前のことも、聞かれる」


 視線が向く。


 まっすぐに。


「……こわいか」


 少しだけ、間を置いてからの言葉だった。


(……こわい)


 正直に思う。


 知らないもの。


 分からないこと。


 そして——


(……自分のことも)


 小さく息を吐く。


「……ちょっと」


 素直に言う。


 父は、ほんの少しだけ目を細めた。


「そうか」


 それだけ言う。


 否定もしない。


 励ましもしない。


 ただ、受け止める。


 その距離が——少しだけ、心地よかった。



 次の日。


 ルナが、いつもより早く来た。


「ねえ、ほんとなの?」


 息を切らしながら言う。


「へんな人たち、来るって」


(……もう広がってるな)


 小さく思う。


「……うん……」


 短く答える。


 ルナは少しだけ黙る。


 そのあと——


「……エリシア、いなくならないよね?」


 ぽつりと聞いた。


 その声は、いつもより小さい。


(……そこか)


 分かる。


 昨日のこと。


 周りの反応。


 全部合わせれば——そう考える。


 少しだけ考える。


 正直、分からない。


 どうなるかなんて。


 でも——


「……だいじょぶ」


 言葉が足りない。


 でも、続ける。


「……ここに、いる」


 自分でも驚くくらい、はっきり出た。


 ルナが、じっとこちらを見る。


 そして——


「……うん」


 小さく頷いた。


 それだけで、少しだけ空気が軽くなる。



 その日の午後。


 村の入口が、少しだけ騒がしくなった。


 遠くからでも分かる。


 普段とは違う音。


 足音。


 複数。


(……来たか)


 自然と、体が動く。


 外へ出る。


 人が集まり始めている。


 村の入口。


 そこに——


 見慣れない服の人間が立っていた。


 黒を基調とした装備。


 無駄がない。


 動きも静かだ。


 数人。


 その中心に、一人。


 周囲よりも、少しだけ空気が違う。


(……あれか)


 なんとなく分かる。


 あれが——管理局。


 その人物が、一歩前に出る。


 周囲を見渡す。


 そして——


 エリシアで、止まった。


「……その子だな」


 低い声。


 無駄がない。


 まっすぐに向けられる視線。


 逃げ場がない。


 でも——


 逸らさない。


 逸らしたくない。


 ほんの一瞬。


 静かな時間が流れる。


 そして、その人物は言った。


「境界管理局、調査員だ」


 短く名乗る。


 それだけで、十分だった。


 空気が変わる。


 村の空気が——完全に変わった。


(……外、か)


 小さく思う。


 もう、戻れない気がした。


 昨日までの、ただの時間には。


 それでも——


 目を逸らさない。


 前を見る。


 そう決めて——


 エリシアは、その視線を受け止めた。

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