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あやかし街の看板娘~不当解雇された私はあやかし達をデザインの力で魅了します~  作者: MURASAKI


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第9話 お仕事楽しい!

「では、今の時点で間違っている文字や改善したい箇所がありましたら、ご指摘いただけますか? ご迷惑でなければこの場をお借りしてすぐに修正します。修正完了しましたら、そのまま駅前のプリントサービスで少し厚めの雰囲気の良いおしゃれな紙に印刷してお持ちしますよ」


「わあ、有難いです! じゃあ、今からじっくり読ませてもろて間違いないかチェックしますね」



 狐崎(こざき)はそう言うと細い目を見開き、気合いを入れてメニュー表をチェックしはじめた。

 その間に、私はパソコンを立ち上げてデータを確認する作業に入る。

 栗栖は私のパソコンに目を輝かせている。

 Bnnはデザイナー御用達メーカーで、八割のデザイナーはここのメーカーのパソコンを使っている。文系出身が多いデザイナーでも操作しやすく、グラフィック系ソフトがサクサク動くのが人気の理由だ。

 ほかに、デザイナー同士はデータをやり取りすることが多いので、互換性の問題でBnnを使っているデザイナーも多い。


 そんな理由で、Bnnはお洒落なイメージが定着していて一種の憧れの象徴になっている。お値段が少々お高いところも、低年齢層からブランド価値があると認識されているのかもしれない。

 私は会社がBnnで、人生で自分が触ったことがあるパソコンがBnnだけだったので、値が張るけど使い勝手優先でこのメーカーを利用している。



板狩(いたかり)ちゃん、ここ! ここのとこを上と入れ替えたりしたらどうなるかな?」



 チェックを終えた狐崎(こざき)が修正内容を伝えてきたので、一緒に相談しながら修正を上げていく。

 修正するうえで問題のありそうな場所は丁寧に説明し、イメージが伝わらない場合は実際にやってみせて納得してもらいながら進める。



 直接お客様の前で修正するなんて、今まで経験したことがなかったけど……意思疎通しやすくてラク! 持ち帰って作業すると臨場感がなくって、何度もやり取りしなきゃいけないからなあ。

 お客様とは基本電話かメールのやりとりしかしたことなかったから、こういうのありかも。



 お客様と話し合いながら一緒に作り上げていくのは、正直楽しくて仕方ない。

 こうなりますよ?というイメージが、実際の操作で私の言葉で説明した通りだとわかると、その度に狐崎(こざき)は「ホンマや、すごい!」と感嘆の声を挙げるので、少しこそばゆくて恥ずかしかった。


 納得のいくメニュー内容になったところで、駅前のプリントサービスのお店まで移動した。栗栖が人型のままついてきてくれたのだが……その人間離れした美貌に注目を浴びてしまった。

 私が注目されているわけじゃないのに、視線が痛くて委縮してしまう。


「何であんたが縮こまってるんだ? 世の人間は、俺の美貌を放っておけないから俺が注目を浴びてしまうのは仕方ないけどさ」



 栗栖のその堂々とした姿を見て、この子の自分を知っている力はなかなかのものだ、と感心する。

 引率が私みたいな冴えない女でごめんなさいと心の中で思いながら、プリントアウトしたものを確認して、店の端に用意された机で断裁する。



「それ、何で切るんだ? ちょうどいい紙に印刷すれば切らなくていいんじゃねーの?」


「うん、そうなんだけどね。ここが紙の端まで入っているデザインだから、印刷領域を超えちゃうから。

 少し大きい紙に印刷してきれいに端まで入るようにしてるの」


「へえ、面倒なことするんだな。別に見えなくても誰も気にしないぜ」


「まあそうなんだけど……そう言うところが気になるのが、デザイナーって言う職業なのよ。今回は枚数も少ないから私が自分で切ればいいかなって」


「ふうん」



 今回の注文は三セット。メニューは見開き二ページで両面印刷。お試しで置くので簡易的にラミネート加工して二つ折りにすることになっている。

 このプリントサービスのお店では、ラミネート加工もしてもらえるので切ったメニュー表をラミネート加工と、折りやすくするために真ん中に線を入れてもらうスジ入れしてもらう。



「栗栖くん、興味があるならやってみる?」


「いや、俺はいい。見てるのが楽しいから」



 暇かな?と思って栗栖に作業をふってみたところ、ぶっきらぼうに断られてしまった。一連の流れを側で見ていた栗栖の目が輝いていたので、ひょっとしたらデザインに興味があるのかもしれない。



 もう少し仲良くなったら、デザインに興味あるのか聞いてみようかな?



 かつての自分も、子どもの頃仲の良かった近所のお姉さんが、デザイン関係に努めていて憧れたのを思い出す。その頃の自分と重ねて、栗栖の様子をかわいいなと思う。

 お会計を済ませて店を出ると、栗栖は出来上がったメニュー表を受け取ってその場で別れることになった。



「え? 私お店までお届けするけど?」


「ここまでしてもらって、また店まで来てもらうのは申し訳ないから受け取って帰ってくるようにって、狐崎(オーナー)から言われてるんだよ。今日はありがとな」



 そう言って踵を返した栗栖は、一旦立ち止まり私に向かって振り返る。



「次は明後日じゃなくて五日後にデザイン案持ってきて欲しいって狐崎(オーナー)が。詳細はメールするって。じゃーな!」



 爽やかな笑顔を浮かべて、手を振りながら帰って行った。

 そういえば、お店をお借りして結構長く打ち合わせをしてしまった。次の予定があったかもしれない。

 貴重な時間を沢山いただいてしまい申し訳なくなったが、次もまたデザインが提案できる喜びの方が増して、帰り道の心は軽かった。



 今度、お祈りした神社にお礼を言いに行かないと。こんなに素敵な出会いがありましたって。

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