表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あやかし街の看板娘~不当解雇された私はあやかし達をデザインの力で魅了します~  作者: MURASAKI


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/17

第8話 捨てる神あれば拾う神あり

「そ、それ……聞いちゃいます?」



 凍り付いたその場を少しでも和らげるために、私は少しおちゃらけた言い方で場の雰囲気を変える。

 最初は自分が悪かったけど、その後くだらない理由で辞めさせられてしまったことをかいつまんで話すと、狐崎(こざき)と栗栖は顔を見合わせている。

 空気に耐えられず、私は自分から自分を貶めるように付け足した。



「本当に、くだらない理由ですよね。親に聞いたことがありますけど、昭和の時代みたいです。えへへ」


「人の本質を見れない経営者やったんですね。自分で確かめもしないで人の言う事を信じるなんて、大会社なら仕方なくても人数が少ない中小企業の経営者としては、あってはいけないことです。

 いやあでも、ほんまにその経営者の人に感謝せんとね。そうやなかったら板狩(いたかり)さんに逢えへんかったわけやから」


「ほんとだよな! 言っとくけど、狐崎(オーナー)がここまで()()()()話す相手って、心を許してる奴だけだからな!?」


「あれ、栗栖くん。僕、そんなになまってました?」



 私と栗栖は同時に頷いた。そう言われてみると、話を進めていくうちにどんどん京なまりが強くなってきていた気がする。

 わたしたちの顔を交互に見ると、狐崎(こざき)は顔を赤くして両手で顔を隠し、うつむいた。

 なんとも可愛い仕草にこちらもちょっと照れてしまう。



「大丈夫ですよ、狐崎(こざき)さん。私はそういうの、気にしませんから。むしろ素敵で憧れちゃいます、京なまり!

 それに……」



 そこまで言うと、私は狐崎(こざき)と栗栖の顔を交互に見て、嬉しさ100%の顔でお礼を言った。



「私のデザインを喜んでいただけて、認めてくださってありがとうございます! 本当に嬉しいです。

 まだまだ若輩者ですが、きちんとご満足いただける物を制作しますので、よろしくお願いします!」



 勢いよく下げた頭が、テーブルにぶつかり「ゴン」という音を立てる。

 慌てて私がまた謝ると、その様子を見て狐崎(こざき)と栗栖は涙が出るほど大笑いをした。そこにプレゼン現場の緊張感など一切ない。

 つられて私も笑うと、狐崎(こざき)は笑いながらこう言った。



「ははは。僕はアナタのことが気に入ってしもた。就職先、探してあげるかわりに、しばらくこの<あやかし街>で困ってる店の人らを助けてやってくれんかな? もちろん、助けてくれた分はきちんと報酬は支払うし、なんやったらうちの食事も付けますよ」


「ええ!!? そんな、就職あっせんまでしていただけるんですか!?」


「もちろん。うちの店に来る人らはみんな訳アリな人ばっかりやけど、大きな会社の社長さんとかも居てはるから。声かけておけば情報は入るしね」


「何から何まで、ありがとうございます! よろしくお願いします!」



 たった一日で無職になった私だったけど、捨てる神あれば拾う神ありとは良く言ったもので、たった数日でこんなにも転じるものなのかと震える。


 あの日、神様にお願いして良かったと感謝の気持ちでいっぱいになる。神様が聞いてくださったから神の眷属という二人に出逢う事が出来た。

 行動しないとチャンスは手に入らないと誰かが言っているのを見たことがあるけど、本当にそうなんだと思う。



「それから、僕は今後板狩(いたかり)ちゃんって呼ばせてもらうことにする。ええ会社紹介するから、前の会社の人ら見返してやろやないか!」



 そう言ってニヤリと笑う狐崎(こざき)は、今まで見た中で一番悪い顔をしている。隣の栗栖は半眼で、こうなったらどうにもならないという呆れた顔をしている。



「で、では! 狐崎(こざき)さん、栗栖さん、本日いただいた修正案を後日お持ちしますね。いつ頃お手すきでしょうか?」


「うちはいつでも。夜以外は閑古鳥(このとおり)ですから」


「では、明後日の同じ時間はいかがでしょう?」


「ええね、早う板狩(いたかり)ちゃんのメニュー表、使ってみたいわー! お客様の反応が楽しみや」


「あー、では……そうですね。お客様の反応を見るためでしたら本日お持ちした、文字だけのメニューをしばらくご利用いただくのはいかがでしょうか?

 どちらにしろ写真を使うデザインの場合は撮影が必要となりますので、まだしばらくお時間がかかりますし……。実際使ってお客様の反応を見ながらメニューの改善をすることも可能ですよ」


「なるほど。でも、それやと板狩(いたかり)ちゃんの負担にならへん?」


「いえいえ! 改善していくって楽しいですよ! 今回の部数でしたら印刷に出さず、プリントアウトで対応しても良いと思っていましたから。お店にプリンターはございますか?」


「そんなもの、あると思ってんの? うちの店見たら分かる通り超アナログだぜ? しかもこの男がパソコン得意そうに見えるか? かろうじてネットが使えるだけだ」



 栗栖がオーナーの事をこの男呼ばわりし、さらに親指で刺すという失礼なことをしているにもかかわらず、狐崎(こざき)はそれを注意することもなくヘラヘラと笑っている。

 その様子を見て、二人の関係が信頼のもとに構築されたものだと感じた。



 ちょっと、うらやましいかも。



 ついついぼそっと、そんな言葉が口からこぼれる。



「そんな良いもんじゃねえよ」



 私の独り言を聞いた栗栖が、少し照れながら否定をしてきた。でも、言葉とは裏腹に顔は照れているので肯定と取りますよ!と心の中で返しておいた。



「それで、板狩(いたかり)ちゃん。文字だけのメニューはいつから使えそう? 出来れば早く使ってみたいと思うんやけど」


「そうですねぇ。プリントアウトはこの近くにあるプリントサービスを利用すれば問題ありません。一応念のため、これ持ってきていますので!」



 そう言うと、私は荷物の中からバナナ(Bnnというメーカーの製品)のノートパソコンを取り出して見せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ