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第二百二十九話 水と油。犬と猿。クソガキとメスガキ

 いつの間に来ていたのだろうか。

 さやちゃんは俯いていたので気付かないのも当然だが、俺ですら湾内さんが隣に座ったことを知覚できなかった。いくらさやちゃんを気にかけていたとはいえ、コーヒーに大量のシロップが投入されても気付けなかったことが、ちょっと悔しい。俺のコーヒーが……。


「てか、さやはクッキー食べないの?」


「食べますが」


「じゃあ一個もらうね!」


「ダメです。触らないでください……はぁ。言っても無駄ですよね、知ってました」


「もぐもぐ♪ なにこれうめー! ちょっと、シェフを呼ぶわよ。おーい、しぇふ~」


 あ。こら、勝手に呼び鈴を鳴らすな。

 俺には迷惑をかけてもいいが、さすがに無関係なお店側を巻き込むのはやめてほしい。しかしもう呼び鈴が鳴っていて、店主のおじいさんがこちらに歩み寄ってきたから、止めようがなかった。


「はいはい。どうしたのじゃ?」


「ねぇ、これっておじいちゃんが作ったの?」


「うむ。ケーキを作った時に材料が余ったからサービスじゃ」


「へー! ちょーおいしかった!」


「そうかのう。それは何よりじゃ……よしよし」


 ……迷惑、ではないのか?

 おじいさんはクッキーの味が褒められて満更でもないのだろう。美味しそうに咀嚼する湾内さんを見て目を細めている。しかも、そっと彼女の頭を撫でていた。初対面だが可愛がっているように見える。


「少年。今日はまた賑やかじゃな」


「すみません。うるさいのが来ちゃって」


「構わんよ。子供は元気で何より」


 あ。分かった。

 おじいさんの態度がやけに優しい気がしていたのだが……たぶん、湾内さんを女児だと思ってるのでは? さやちゃんと接するときの態度と同じだった。


 まぁ、迷惑じゃなければいいか。

 おじいさんが懐の大きな人で良かった。


「なるべく静かにしますね」


「はぇ? 奈良の鹿が増えたのは知っておるが」


 ……訂正。耳が遠いからうるさいと感じないのかな。ご高齢だからか、たまに俺の言葉が届いていないが、まぁいいや。


「それでは、ごゆっくり」


「うん! おじいちゃん、ばいばーい」


「うむ。そこの女の子も、いっぱい食べるのじゃぞ」


「……はい。いただきます」


 最後におじいさんがさやちゃんにも一声かけてから、再び厨房へと戻っていった。

 一応、さやちゃんも返答はしてくれたのだが、やっぱり元気はない。


 無駄に元気というか、うるさい湾内さんがいるせいか、対比が顕著だった。


「にひひっ。田舎のおじいちゃんを思い出したわ……お正月に毎年パパと遊びに行くんだけどね、いっつもあんな感じで可愛がってくれるのよ」


「そうか。君はたしかにおじいさん世代から見たら、可愛い孫娘でしかないかもな」


「あたし、おじいちゃん大好き♪ お年玉いっぱいくれるし~」


 そう言ってから、湾内さんは俺のほっぺたをつついてきた。ちょっかいを出されるのはいつものことなので適当にあしらったが、それを見ていてあの子は、なんだか不快そうである。


「湾内美鈴さん。さやのお兄さまに触れないでほしいのですが」


 ……あれ。

 さっきまでと、少し態度が違う。

 湾内さんが来るまではしょんぼりしていたが、今はちょっとだけ不愉快そうだった。


 どっちがいいのかは分からないが、変化があることは良い兆しだろうか。

 あるいは、悪化する前兆なのか。


「は? なんでこいつがさやの兄なのよ。あんたの兄は才賀でしょw」


「あれはさやの兄を自称する『何か』であって、さやのお兄さまはそちらの佐藤悟さんだけです」


「うわぁ。才賀が兄とかすごい奇跡的なことなのに、相変わらず反抗期かぁ。子供ってこれだから嫌いなのよ。年上が優しくしすぎてつけ上がってるのよね」


「さやも同じ気持ちです。精神的に未熟な子供さんはあまり好きではありませんね……お兄さまに優しくされて肯定されていると勘違いしている様が滑稽です」


「――クソガキ」


「――ばか」


 あー。

 うーん。

 まぁ、この二人の仲がいいわけないよな。


 何せ二人とも、精神年齢がかなり近い。だからお互いに譲歩することはない。


 性質も真逆で、水と油であり、犬猿の仲なのだろう。

 純正の幼女とメスガキが分かり合えるはずはないか。


「『ばか』って言った方がバカなんですけど~」


「その理屈なら『クソガキ』と言った方がクソガキになりませんか?」


「あたしは高校生だからガキじゃないですぅ」


「その言動で高校生なら、それこそ残念で仕方ありませんね」


「需要はあるのよ。メスガキって今はトレンドだからw あんたみたいな堅物ロリと違ってね!」


「ロリって言わないでください。不愉快です」


「ろーり! ろりろりろりろり!!」


「……ひんにゅー」


「あんたも同じくらいでしょ!?」


「さやには『未来』という大きさがあるので」


「あたしにもあるわよ!」


「w」


 バチバチだった。

 遠慮なく罵り合うする二人を見て、つい苦笑してしまう。


 当人たちはちゃんと喧嘩しているつもりだろうが。


(子供の喧嘩すぎて微笑ましいな)


 険悪というよりは、どうしてもコミカルに感じてしまうんだよなぁ。

 まぁ、程よくガス抜きしたら二人とも落ち着くだろうし。もうちょっと後で仲裁に入ればいいか――。




お読みくださりありがとうございます!

もしよければ、ブックマークや評価をいただけると更新のモチベーションになります!

これからも執筆がんばります。どうぞよろしくお願いしますm(__)m


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