96 楽しい撮影のはずが……
屋外プールへと移動したハルたちは、昴から説明を受けていた。
説明といっても、簡単なものだった。
プールサイドを走るなといった、本当に些細なことである。
「今伝えたことを守ってくれれば、自由にしていいからね」
「自由って言われても……」
「皆サン、自然体デイテクダサーイ!」
マイケルは、笑顔でカメラを構えていた。
しかし、困惑したハルたちはざわつき始める。
すると、あかりがマサの手を取る。
「マサ、今から鍛練するぞ!」
「あかり、いきなりどうした?!」
「自由にしていいなら、あたしたちはこれだろう」
「いや、俺はハルと……」
「鍛練なら、俺もやるでござるーっ!」
「ゆっ、ユキ?!」
「さぁ、覚悟しろマサ!」
「俺はやらねぇっての!」
「待つでござるーっ!」
あかりとユキに追いかけられ、マサは敷地内を駆けまわる。
「なるほど……自然体って、あぁいうことね」
「あの、ここのプールにも入っていいんですか?」
「もちろんさ」
「では、お言葉に甘えて、マーメイドモード!」
昴の了解を得て、ユミは人魚の姿になった。
そして、勢いよくプールに飛びこんだ。
「ハルさーん、プール気持ちいいですよーっ!」
「ユミちゃん、危ないから飛びこんじゃダメだよ!」
「はーい!」
先ほど注意を受けたばかりなのに、ユミの行動にハルは驚く。
「大丈夫ですよ、マスター」
「サラさん?!」
突然現れたサラに、ハルは再度驚いた。
「幸い、私たちしかいないので、害はありません」
「ところで、サラさんはどこに潜るつもり?」
ハルが疑問に思うのも、無理はない。
サラが着用していたのは、スキューバダイビングのスーツだったのだ。
「私が潜るとしたら、ネットの海にでしょうか」
「ネットって……サラさん、ちょっと性格くだけました?」
「そうでしょうか。でも……」
頬に手を当て、サラはぎこちなく微笑んだ。
「少しでも人間らしくあれたのなら、うれしいです」
サラの少しの変化に、ハルはうれしくなった。
それからは、各自好きなように楽しんだ。
鍛練をする者や、ハンモックで休む者がいたり、
他には準備運動をしたり、プールに潜ったりと様々である。
マイケルも、ハイテンションでシャッターを切っていた。
しかし、なんの前触れもなく事件は起こった。
プールの水が、突然襲いかかってきたのである。
「なっ、水が勝手に!」
「ハルさん、早くプールから上がってください!」
「マスター、こちらに」
戸惑うハルの腕を引き、サラはプールの端まで泳いでいく。
ユミも、おいていかれないように泳いだ。
そこにマサが駆けつけ、ハルを引き上げた。
「ハル、俺に掴まれ!」
「マサ!」
マサの首に腕を回し、ハルは引き上げられた。
サラも脱出し、ユミも上がろうとしたが……
「ごぼっ?!」
「ユミ?!」
ユミの足に水が巻きつき、プールに引きこまれてしまう。
「ユミちゃん!」
ハルが手を伸ばそうとしたが、襲いかかる水に阻まれる。
「ハル、マサ、早くこっちに来るんだ!」
レンの呼びかけに、ハルたちは水を避けつつ合流した。
「よかった、君たちは無事だな」
「でも、ユミちゃんが……」
「あんな水、俺の電撃で……」
「まっ、待って、マサ!」
慌てるハルに、マサは首を傾げた。
「なんで止めるんだよ」
「それだと、みんな感電しちゃうよ!」
「あっ……」
マサは、やっと状況を理解した。
足元を見れば、水びだしだったのだ。
電撃を使えば、全員タダでは済まないだろう。
「一体、どうすれば……」
「だったら、凍らせるのはどうですか?」
ヒロの提案に、皆の視線がアキナに向けられる。
だが、アキナは首を横に振る。
「私のは広範囲になるので、皆さんが凍えてしまいます」
「そっ、そうですか……」
「なら、蒸発させるのはどう?」
「でも、水の方が勝るのでは?」
「大丈夫、ここには炎を出せるアニマが、二人もいるんだもん!」
ハルの意見で、今度はレンとユキが注目された。
すると、水が変化を始める。
だが、その姿には見覚えがあった。
「おい、あれって……」
「ユミ殿が核となった、大型アニマの姿ですぞ!」
「見て、あそこにユミちゃんが!」
ハルが指さしたのは、大型アニマの胸の所である。
そこに、気を失ったユミが捕らわれていた。
「まずは、彼女を救出しないと……」
「なら、私が協力してあげるけどぉ?」
ヒロが必死に考えていると、けだるそうな声が聞こえた。
ハルたちが振り向くと、クロウが小さく手を上げていた。
「クロウさん?」
「私の技でぇ、あの子助けられると思うんだけどぉ」
「今は、悩んでいる暇はないな」
「すまないが、頼む!」
イグに頼まれ、クロウは微笑を浮かべる。
すると、大型アニマが雄たけびを上げた。
「どうやら、作戦を考える余裕は、与えてくれないようですね」
「しかたねぇ、ぶっつけ本番だ!」
そして、マサたちは戦闘態勢に入った。
「よしっ、いくぞ!」
小さな島で、ひとりのアニマを救う戦いが、始まろうとしていた。
「ユミちゃん待ってて、絶対助けるから……」




