97 狙われたのは……
水の大型アニマとハルたちは、お互い睨み合ったまま動かない。
すると、水の大型アニマの方が先手をうってきた。
水のムチが、勢いよくハルたちに向かってくる。
「あかり、あれを蹴散らすぞ!」
「了解だ!」
マサとあかりは、同時に駆けだした。
そして、拳や足技で防いでいった。
「すごい、マサとあかりさん息ピッタリ!」
ハルは、二人の無駄のない動きに驚いていた。
だが、それと同時にさびしさもあった。
マサとあかり、二人の息がピッタリなこと。
それは、彼らの関係性をあらわしていた。
ハルにはそれがわかり、胸がしめつけられた。
すると、水のムチがハルに向かってきた。
「わわっ!」
「マスター、下がってください」
サラはとっさに、ハルの腕を引いた。
しかし、床が濡れていたため、ハルは足を滑らせた。
しかも、尻もちをついてしまう。
「きゃぁっ!」
「ハルさん、大丈夫ですか?」
「私、最近こんなのばっかり……」
ハルが落ちこんでいても、相手の攻撃は止まらない。
イグは上空へ飛び、ムチを自分の方へ向ける。
クロウも、黒い羽をはばたかせ、突風をおこした。
「ソニックブーム!」
「ユキ、俺たちも行くぞ!」
「承知!」
レンとユキも、ムチをかわしつつ攻撃する。
そして、一歩前に出たサラは、両手をライフル銃に変えた。
「援護します」
サラは弾を連射し、水のムチをはじいていく。
アニマたちとサラの連携は、きちんととれていた。
そのことに、ハルはほっとする。
「みんな、頑張って……あれ、神の遣い様?」
ハルが振り向くと、近くにいた神の遣いがいなかった。
辺りを見回しても、どこにもいない。
「神の遣い様、どこーっ?」
神の遣いを探すため、ハルは背中を向けた。
だが、それが悪かった。
「ハル、逃げろーっ!」
「えっ?」
ハルが振り返ると、巨大な水の手に吹き飛ばされた。
「っ?!」
「お姉ちゃん!」
ハルの危機に、猿渡は駆けだした。
その際に、自身の中にあるアニマの力を使った。
瞬発力や筋力が格段に上がり、ハルを抱えて跳んだ。
そして、少し離れたテーブルに着地する。
「あっ、ありがとう、さぁちゃん……」
「よくも……」
「さぁちゃん?」
「よくも、お姉ちゃんをぶっとばしたなーっ!」
怒りが頂点に達した猿渡は、炎の玉を作りだす。
そして、勢いよく殴り飛ばした。
放たれた炎の玉は、水の大型アニマの頭部に命中する。
その暑さで、頭部は蒸発した。
一瞬のことに、その場にいた全員が呆気にとられる。
ハルも驚いていたが、すぐ頭を振った。
「さぁちゃん、ダメだよ!」
「なんで?」
「だって、ユミちゃんに当たったらどうするの!」
「ごっ、ごめん……」
「待って、ハルさん」
「アキナちゃん?」
ハルと猿渡の元に、アキナとヒロが駆け寄ってくる。
しかし、アキナは少し怒っていた。
その相手は猿渡でなく、ハルに、だ。
「彼を怒るのは、間違っています」
「そっ、そうですよ」
猿渡を一瞥し、ヒロはハルを見つめる。
「その子は攻撃しちゃったけど、あなたを助けたんですよ?」
二人に言われ、ハルは慌てて猿渡を見つめた。
ハルに怒られ、猿渡はだんだん縮んでいく。
「ごっ、ごめんさぁちゃん、言い過ぎたよ!」
「お姉ちゃん……」
「守ってくれて、本当にありがとう!」
猿渡は顔を上げ、ハルを見つめた。
ハルの微笑みに、猿渡もはにかんだ笑顔になる。
「まったく、世話のやける人たちですね」
アキナは、微笑む二人に苦笑する。
しかし、ある疑問が浮かんだ。
「だけど、さっきからハルさんばかり、狙っているような……」
「もしかして、彼らより契約者の命を奪った方が、手っ取り早いと思ったんでしょうか」
「もしくは、私が一番弱くて鈍いからってことも……」
「お姉ちゃん、卑屈にならないで!」
猿渡は、必死にハルを慰めたのだった。
★★★
ハルの無事がわかり、マサたちはほっとしていた。
だがその隙を、水の大型アニマは、見逃さなかった。
上空にいたイグは、水のムチに絡めとられる。
さらに、水の大型アニマは両手を伸ばした。
そして、あかりとユキを掴み上げる。
「しまった!」
「くっ」
「あかり、イグ、ユキ!」
「ちょっとぉ、これってヤバくなーい?」
「救助対象が、増えてしまいましたね」
人質をとられ、マサたちは動けずにいた。
その頃、離れた場所で、マイケルはシャッターを切っていた。
「昴サン、彼ラチョット苦戦シテマスケド、大丈夫デスカ?」
「心配ないさ。まだ切り札があるんだから」
昴は、いたずらな笑みを浮かべていた。
その意味がわからず、マイケルは首を傾げる。
マサたちはというと、増える水のムチに苦戦していた。
「あのムチ、いくらでも出てきやがる!」
「なるほど……それで、ハルを狙っていたのか」
「どういうことだよ」
「契約者に危機が及べば、俺たちはすぐ駆けつけるだろ」
「相手は、それを狙っていたのですね」
「くそっ、少しでも隙を作れれば……」
「皆の者、ここは僕に任せたまえ!」
すると、今まで大人しかったククが、高らかに言い放つ。
しかし、クロウは苦い顔をしていた。
「ちょっとあんたぁ、まさかあれをやる気じゃぁ……」
「あれ?」
首を傾げるマサたちに、クロウはため息をついた。
一番前に出てきたククは、水の大型アニマを指さす。
「僕のダンス、とくとご覧あれ!」




