95 可愛いお前にピッタリだ
ハルの声が聞こえ、マサたちは振り向いた。
最初に着替え終わったのは、ハルとユミだった。
「おぉっ、ハルは黄色のワンピースか」
「うん、あとワンポイントで、桜が描いてあるんだよ」
「へぇー、可愛いじゃねぇか」
「えへへ、ありがとう」
マサに『可愛い』と言われ、ハルは照れ笑いをする。
ユミもうれしくなり、そっと微笑んでいた。
「ユミは、イグに選んでもらったんだな」
「はいっ、でも……」
頷いたユミだったが、ふとハルが気になった。
「これ、本当はハルさんが着るはずだったんです」
「おや、そうだったのかい?」
「ユミちゃん、そんなこと気にしなくていいのにぃ」
「ですが……」
「ユミ、とても似合っているぞ」
ユミは俯いていたが、イグの言葉に顔を上げる。
すると、微笑んでいるイグと目が合った。
「可愛いお前にピッタリだ」
「もう、からかわないでください!」
ユミは顔を赤くし、そっぽを向いた。
わけがわからないイグは、首を傾げる。
その様子を、ハルは微笑ましく見つめていた。
だが、他のアニマたちは呆れていたのだった。
すると、アキナとヒロがやってきた。
「すみません、お待たせしました」
「アキナ殿は、スクール水着でござるか?」
「うん……あまり肌を見せたくなくて……」
「ヒロさんもよく似合ってるけど、なんでパレオ?」
「私も、足を見られたくなくて……」
だいぶネガティブな二人に、猿渡は首を傾げる。
そして一言、こう言ったのだ。
「女の人って、大変なんだねぇ」
「猿渡、そこは察してやれ」
猿渡に、悪意はなかった。
しかし、アキナとヒロの視線は冷たかった。
それを感じたイグは、猿渡の頭を軽く叩く。
そんなやり取りを見て、ハルは苦笑していた。
だが、あかりがまだ出てきていないことに気づく。
「あれ、それよりあかりさんは?」
「そういや、まだ出てきていないな」
「うーん……」
すると、試着室から唸る声が聞こえた。
なので、全員の視線が、そちらに向けられる。
やがて、カーテンが開き、あかりが姿を見せた。
「少しきついが、これで我慢するか」
あかりが着ていたのは、赤のビキニだった。
その豊満な体に、全員釘付けになる。
そして、ユミが一言呟いた。
「……いいな」
「えっ?」
それにまた、全員驚いたのだった。
「おーい、そろそろいいかな?」
ドアがノックされ、昴が入ってきた。
「昴さん!」
「おぉっ、よく似合っているじゃないか!」
昴は親指を立て、満面の笑みになる。
「じゃぁ、時間も惜しいし、移動しようか」
昴に促され、ハルたちは廊下を歩いていく。
「あの、私たちどこに向かっているんですか?」
「撮影場所のプールだよ」
「確か、広いプールがあるとか、言われていましたよね」
「あぁ、そうだよ。それと……」
頷いた昴は、見えてきたドアを指さした。
「そこに行く前に、ちょっと控え室に寄るから」
「なにか、忘れ物ですか?」
「いや、実はもう一組モデルがいるんだよ」
「えっ、私たちの他にもいたんですか?」
「彼らは、先に着替えていたからね」
苦笑した昴は、目の前のドアを開ける。
すると、まぶしい光がハルを襲った。
「うわっ、まぶしい!」
「オォッ、ゴメンナサイネー?」
「どっ、どちら様?」
「いやぁ、びっくりさせたね」
驚くハルに、昴はいたずらな笑みを浮かべていた。
そして、光を放った張本人を指さす。
そこには、金髪で青い瞳の陽気な男性が立っていた。
首には、大きなカメラを下げていた。
「彼は、カメラマンのマイケルだよ」
「ヨロシクデース!」
「よっ、よろしくお願いします……」
フレンドリーなマイケルに、ハルは戸惑っていた。
「あれ、他のモデルさんは?」
「あっちだよ」
昴が指さした方を見て、ハルは呆気にとられた。
なぜなら、昴よりさらに派手な二人組を見たからである。
片方は羽が派手で、もう片方はたくさんの装飾品をつけていた。
「はっ、派手過ぎじゃないですか?」
「それにどう見ても、あの二人アニマだよね」
「さっきから感じていた気配は、こいつらか」
「あぁ、しかもすごい派手だぜ」
「紹介するよ。孔雀のアニマのククと、烏のアニマのクロウだ」
ククは緑のシャツに、迷彩柄の短パンを着ていた。
しかし、羽の方が鮮やかなため、水着が目立っていない。
対してクロウは、紫のビキニを着ていた。
だが、装飾品をいくつかつけていたため、こちらも水着がかすれてしまっている。
それなのに、二人は気にしていない様子だった。
「うーん、しかし困ったなぁ」
「おや、なにがだい?」
「ククはともかく、クロウはそのアクセサリーを外してくれ」
「なんでよぉ、これ私のなんだけどぉ」
「それだと、水着が目立たないじゃないか」
「クロウサーン、ハズシテクダサーイ」
「むぅー……しかたないわねぇ」
そういうと、クロウは渋々装飾品を外した。
「だっ、大丈夫かな……」
マイペースな三人に、ハルたちは不安になった。
「昴サーン、今回ハイケテル写真ガ撮レソウデスネ」
「あぁ、楽しみにしてるよ」
「お主ら、我が少し手伝ってやろうか」
「えっ、小さな君は、なにかできるのかい?」
「ふふっ、任せておけ」
神の遣いは、いたずらっぽく笑ってみせた。
意図がわからない昴とマイケルは、顔を見合わせるのだった。




