85 アニマとの共存
突然入ってきたニュースに、ハルは驚きを隠せなかった。
「サラさんたちを作ったのが、違法?」
「そうみたいだね」
「それに、逮捕って……」
「二人は、彼らを知っているのかい?」
「はい……」
「俺たちを人質にして、ハルにある作戦を持ちかけた奴らだ」
「ある作戦とは?」
「確か、『アニマ一掃作戦』って言っていました」
「それは、とんでもない作戦だね」
作戦名を聞いた薫は、腕を組んで眉間にしわを寄せた。
それに苦笑したハルは、再度テレビに目を向ける。
「でも、作ったのは防衛のためって言っていたのに……」
「それは建前だろうね。国のためと言えば、予算がおりるとかありそうだけど」
薫は呆れながら、テレビを見つめる。
すると、警察に両腕を持たれ、藤原がわめいていた。
『対アニマ用アンドロイドを提案したのは、柊君だ。私は利用されただけで、悪くないんだーっ!』
「この男、わめき散らしてみっともないな」
「あれ、そういえば……」
「ハル、どうかしたのかい?」
レンと薫が呆れていると、テレビを見ていたハルが首を傾げる。
「柊さんがいない?」
テレビには、連行されていく藤原たちが映っていた。
しかし、柊の姿はどこにもなかったのだ。
「多分、通報したのは、その柊という男で間違いないだろう」
「廃工場で俺たちと会った時、すでに通報していたんだな」
「彼らは、囮として利用したんだろうね」
「ひどい……」
「違法ということも、彼は知っていた可能性があるね」
薫の言葉に、ハルは俯いた。
だが、レンが近づき、優しく肩に手を置く。
顔を上げたハルは、微笑むレンにほっとする。
すると、場面が切り替わり、女性アナウンサーが原稿を読み上げる。
『なお、製作されたアンドロイドは、すべて処分することになりました』
「えっ、処分?!」
「まぁ、そうなるだろうね」
「藤原が『対アニマ用』と叫んでいたから、こうするしかないんだよ」
「そうしないと、アニマたちとの共存は、難しくなるからね」
「でも……」
不安な顔をするハルを見つめ、薫は苦笑した。
「連れてきた契約者の人たちも、ほとんどがアニマとの契約をやめると言っているよ」
「そんな……アニマの子たちはどうなるんですか?」
「一応、ここで保護するつもりだよ」
「そうですか、よかった……」
ほっとしたハルを見て、薫は微笑む。
そして、リモコンを操作した。
『警察によると、上層部のひとりである、柊という男を探しており……』
ニュースはまだ続いていたが、薫はテレビを切り立ち上がる。
「さて、私はそろそろ業務に戻ろうかね」
「あの、私たちもそろそろ家に帰ります」
「おや、もう少しゆっくりしていくといいのに」
「ありがとうございます。でも、留守番している方が心配なので……」
「そうか。なら、車を手配しておくよ」
薫はそう言うと、片手を振って談話室を出ていった。
それと入れ違いに、ユミとイグが入ってくる。
「あら、薫さん休憩だったんですか?」
「あっ、二人ともお願いされたこと終わったの?」
「あぁ、備品の運搬を頼まれた」
「ほとんどはあまり大きくなかったんですけど、量が多くて……」
「あらぁ、それはお疲れ様」
「猿渡も、外から運んだ方がいいと思って、俺たちに頼んだらしい」
「それは、大変だったな」
「それで二人とも、お昼はまだだったりする?」
「いえ、軽くですが食べました」
「じゃぁ、よかった。薫さんが車を手配してくれるって言っていたから、家に帰りましょう」
「わかりました」
「あっ、ユミのお姉さんとイグのお兄さん、ここにいた!」
ハルたちが談話室を出ようとすると、猿渡が息を切らして入ってきた。
手には袋を持っており、息を整えてからユミとイグに近づく。
「猿渡さん、どうしたんですか?」
「あの、これ!」
「まぁっ、お菓子がいっぱい!」
「手伝ってくれたお礼です!」
猿渡が持ってきた袋には、たくさんの種類のお菓子が入っていた。
受け取ったユミは、目を輝かせながら喜んでいた。
「猿渡さん、ありがとうございます!」
ユミにお礼を言われ、猿渡は照れ笑いをする。
すると、猿渡が外に目を向け、首を傾げる。
「あれ、車の音?」
「どうやら、手配できたようだな」
「お姉ちゃんたち、もう帰るの?」
「うん、だいぶゆっくりできたから助かったよ」
「また、来てくれる?」
「うーん……いつもは来れないけど、なるべく顔は出すね!」
「うんっ、わかった!」
「神崎さんとアニマの皆さん、家までお送りしますので、車に乗ってくださーい!」
「はーい、今行きます!」
そしてハルたちは、薫に挨拶を済ませ、車に乗りこんだ。
車の中で、ハルは心配していた。
家で留守番しているのは、神の遣いだけ。
「どうか、なにもありませんように……」
ハルはただ、必死に祈るのみだった。




