51 桂木の末路
「そうだとしても、私は……」
ハルは言葉に詰まってしまい、三人は次の言葉を待つ。
その頃、空中での戦いは、まだ続いていた。
「なぜ、そこまで戦う!」
「あの方のためです……」
「あの方とは、桂木博士のことか」
お互い、拳や足技を繰り出しながら戦っていた。
「あの方が望むなら、この命、尽きても構わない……」
「そんなことは、しなくていい」
「ぐはっ!」
大型アニマの拳が、アニマキングにヒットする。
「今、あきらめさせてやる。ダイヤモンドクラーッシュ!」
「グワァーッ!」
大型アニマの全力の一撃が、アニマキングに直撃した。
アニマキングは気を失い、そのまま落下してしまう。
「なにっ、あれが負けただと?!」
「あなたが信じているのは、自分だけですよ」
「……なんだと?」
「私は、彼らが勝つと信じていました」
ハルの言葉に、桂木は口を噛みしめた。
「認めない……私は、間違ってなどいない!」
「まだ、そんなことを!」
「すべて、私が正しいのだ!」
桂木は、自分が正しいと疑わなかった。
いや、本人はわかっているのだろう。
しかし、それを認めたくないのだ。
すると、上空から大きな音を立てて、アニマキングが落ちてきた。
「なにをしているのです、アニマキング」
アニマキングに駆け寄った桂木は、しゃがんで激しくゆする。
その表情にいつもの余裕はなく、焦りを見せていた。
「早く起きて、あの者たちを始末しなさい!」
「桂木君、もうやめよう」
薫が桂木の肩に手を置いたが、桂木はそれを拒んだ。
「私は、まだあきらめませんよ!」
「桂木君……」
桂木は薫に振り向かず、ゆっくり立ち上がった。
そして、ハルを睨みつけながら指をさす。
「あの娘にできて、私にできないわけがない!」
桂木が指輪を握りしめると、指輪はボロボロと崩れていった。
「なぜだ……私の研究は、うまくいったはず……」
「お父さん……」
絶望し、膝から崩れ落ちる桂木を、ハルたちは複雑な表情で見つめる。
やがて、桂木は顔を引きつらせて笑った。
「くくくっ……もういい……」
桂木は笑いながら、懐から拳銃を取りだす。
「全員私がこの手で、始末してあげましょう!」
その銃口は、ハルへと向けられる。
「まずは、お前からです!」
「ハルっ!」
契約者の危険を察知し、大型アニマが駆けつける。
そして、ハルを庇うように前に立った。
すると、その場に似合わない、大きな扉が現れた。
「なんですか、この扉は……」
桂木は、眉をしかめて扉を警戒する。
ハルと薫は、その扉を見て驚いた。
「あれは、あの時の……」
「あの時?」
桂木がハルに視線を移すと、扉が開き、あの影たちが現れる。
「なっ、なんですか、これは!」
「薫さん、早くこっちへ!」
影たちに桂木が慌てていると、ハルが薫をそばまで引き寄せた。
「はははっ!」
笑いながら影たちは、桂木とアニマキングをからめとっていく。
「離しなさい、私を誰だと思っているのです!」
「あはははっ!」
「こらっ、なにをしているのです。早く、私を助けなさい!」
桂木は叫んだが、アニマキングは気を失ったままだった。
「なぜです……私は、どこで間違った……」
「お父さん!」
「アキナ、早く私を助けなさい!」
アキナは近づこうとしたが、影たちに阻まれる。
「くっ、近づけない……」
「力を使えばいいのです、この役立たず!」
桂木にそう言われ、アキナの足が止まる。
「……ごめんなさい、お父さん」
アキナは涙を流しながら、目をそらした。
桂木は、初めて絶望した顔をする。
すると、扉から声が聞こえてきた。
『アニマの命を弄んだ罪、その身をもって償うがいい……』
その声は、あの神の遣いのものだった。
そして、桂木たちはどんどん、扉に引きずりこまれていく。
「嫌だ、まだ死にたくない!」
桂木は、暴れて影を引き離そうとした。
しかし、さらにしめつけられていく。
「私はまだ、やり残したことがある!」
「桂木君……」
「私はただ、私をバカにしたあいつらを、見返したかっただけなのに……」
桂木は泣きながら、最後の抵抗とばかりに拳銃を放った。
だが、影にはきかなかった。
「ははははっ!」
「嫌だ、助けてくれーっ!」
桂木の叫びとともに、アニマキングと桂木は、扉の中に引きずりこまれていった。
彼らを飲みこんだ扉は、静かに閉まる。
そして、また跡形もなく消えていった。
「終わったの?」
ハルは、気が抜けたようにぽかんとしていた。
「そうみたいだね」
「はぁー……よっ、よかったぁ。ねぇ、アキナちゃん……」
アキナに目をやると、アキナは声を殺して泣いていた。
「アキナちゃん、辛かったね。今は泣いていいんだよ」
ハルがアキナを抱きしめると、アキナはその胸の中で、大声で泣いた。
「うっ……うわぁーん!」
その声を聞いたハルは、強く抱きしめる。
「しかし、彼らはいつまで、この状態なのかな」
薫は大型アニマを見上げ、苦笑いを浮かべる。
すると、大型アニマが突然光りだし、マサたちの姿に戻った。
「あっ、自然に戻れるんだね」
「やっぱり、この方が動きやすいぜ」
ユキにアキナを任せ、ハルはマサに近づいた。
その時、ハルの指輪が強い光を放つ。
「えっ?!」
驚くハルの背後に、白くて丸い空間が現れたのだ。




