50 覚醒
「えっ、マサたちの体が、光ってる?」
ハルの指輪が光ると同時に、マサたちも光りだした。
「これは、一体……」
「体に力が、戻ってくる!」
そして、力を取り戻したマサたちは立ち上がる。
「ハル、助かったよ。なんだか、力がわいてくるようだ!」
「お嬢、やはり君と契約してよかった」
レンとイグは振り向き、ハルに微笑んだ。
それにハルも微笑む。
指輪がハルの想いに応え、マサたちに力を与えたのである。
「これなら、戦えますぞ!」
「あぁ、俺たちの本気を見せてやる!」
次第にマサたちの光が強くなり、全員が叫んだ。
「本能覚醒!」
すると、マサたちは光の玉になり、ひとつに集まっていく。
それはだんだん大きくなり、形を変えていった。
やがて光は消え、背中に翼が四つ生えた、大型の獣が立っていた。
しかも、後ろ脚で立っているため、さらに巨大である。
「えっ……これは、大型アニマ?」
ハルが驚いて見上げていると、桂木が喜びの声を上げた。
「おぉーっ、すごいぞ。やはり、あなたの指輪には秘密があるのですね!」
「秘密?」
「そうですよ。その指輪は、複数のアニマと契約できるだけでなく、大型アニマも生み出せるということですね!」
桂木は、子どもがはしゃぐように喜んでいた。
そして、目を輝かせ、アニマキングに命令を出す。
「ですが、私のアニマキングに、敵いますかねぇ。さぁ、やりなさい!」
桂木の言葉に、アニマキングは駆けだした。
「業火……」
アニマキングは、レンから奪った炎の渦を放ってきた。
それを避け、大型アニマは地面を蹴り、空へと飛び立つ。
「なにをしているのです。早く追いなさい!」
「ガアァーッ!」
アニマキングは、雄たけびを上げ、地面を蹴った。
すると背中から、コウモリの巨大な羽が生えた。
そして、大型アニマを追いかける形で飛び立った。
「うそっ、コウモリみたいな羽が生えた?!」
「あれは、私に入れたアニマの力と同じです」
「えっ、そうなの?」
「はい……私には、ワニとコウモリのアニマが混じっています」
アキナの言葉に、ハルは言葉を失う。
そんな二人をよそに、桂木は納得したように頷いた。
「そうです、それでいいのです。早く倒してしまいなさい!」
「桂木君……」
「これで、私が正しいと証明される」
笑みを浮かべる桂木を、薫は切なげに見つめる。
「もう、やめてお父さん!」
「アキナちゃんの言う通りです。もうやめましょう。あなたは間違っている!」
「そうだよ、お父さん。もうこんなこと、やめようよ!」
ハルとアキナは桂木に呼びかけたが、桂木は少し顔をしかめるだけだった。
「うるさいですね。なにを間違っているというのです?」
ハルたちを睨む桂木の目は、怒りに満ちていた。
「私は、なにも間違ってなどいない……」
怒気を含んだその声に、ハルは恐怖を感じた。
★★★
空中では、大型アニマとアニマキングが激突していた。
「サンダーボルト!」
大型アニマが電撃を放ったが、アニマキングは姿を消した。
「なに、どこへいった?」
大型アニマが、辺りを見回していると、その背後にアニマキングが現れる。
そして、ニヤリと笑い、水の玉を放ってきた。
「水の波動……」
「甘い!」
大型アニマは、それを軽々と避けた。
「そんな水しぶき、当たりはしない!」
「グウゥ……」
「水の波動とは、こういうことをいうんだ!」
大型アニマは、いくつもの水の玉を出し、アニマキングに放つ。
「グウゥ……」
アニマキングは避けきれず、びしょぬれになった。
「くらえ、サンダーボルト!」
「ギャァーッ!」
アニマキングは電撃を浴び、悲鳴を上げる。
「くっ……まだ、終わりではない……」
アニマキングは、右手を大蛇に変え、毒針を放ってきた。
「かまいたち!」
しかし、大型アニマは、風の刃でそれを吹き飛ばした。
「悪いが、負ける訳にはいかないんだ」
★★★
「なぜ、わからないんですか!」
空中戦が行われている間、下ではハルたちが、桂木に問いかけていた。
「アニマキングは、あなたのために戦っているんですよ!」
「それが、なんだというのです」
「それなのに、あなたは自分のことばかりじゃないですか!」
「言ったでしょう。レオもネイも、望んで実験体になったと」
「それは、あなたが契約者だから……」
「ならば、問題はないでしょう。責められる筋合いはないですね」
「お父さん……」
「さぁ、アキナ。あなたも、早くその娘を黙らせなさい」
言われたアキナは、ちらりとハルを見つめた。
行動をうつさないアキナに、桂木は肩を落とす。
「もう、私をガッカリさせないでください」
桂木はため息をつき、頭に手をやった。
「お父さん、私はハルさんたちに、呪縛を解いてもらいました」
「なんですって?」
眉間にしわを寄せる桂木を、アキナはまっすぐ見つめる。
そして、一歩前に踏みだし、言葉を続けた。
「だから、私は自由です。お父さんの言う通りにはしません!」
「アキナ……」
桂木は一瞬切なげな顔をしたが、すぐ顔を覆い笑いをこらえる。
「くくくっ……いやはや、君は本当に私の邪魔ばかりするんですね」
顔から手を離した桂木は、ハルを強く睨みつける。
それに、一瞬ハルは怯んだが、胸の前で指輪を握った。
「私は、皆を助けたいだけです」
「それは、傲慢です。助けることには、限度があるんですよ」
桂木の言葉に、ハルはある契約者の言葉を思いだしていた。
「そうだとしても、私は……」




