48 あなたを止めるためです!
次の日の早朝、ハルたちは薫の研究所を出発するための、準備をしていた。
見送りには、猿渡が来ていた。
しかし、眠いのか目をこすっている。
「さぁちゃん、眠いなら部屋で寝ててもいいんだよ?」
「大丈夫……眠くないもん……」
「その割には、まぶたが閉じそうだけど?」
ハルが苦笑いを浮かべていると、猿渡が抱きついてきた。
「さぁちゃん?」
「……絶対帰ってきてね」
「うん……必ずここに帰ってくるからね」
ハルは猿渡の頭を撫で、出発の準備を再開した。
「それでは、そろそろ出発します!」
「よろしくお願いします」
「お姉ちゃんたち、いってらっしゃーい!」
猿渡に見送られ、ハルたちは出発した。
桂木のいる研究所までは、途中まで車での移動である。
「すみません、こんな朝早くに」
「いいえ、薫先輩から頼まれたことなので」
運転している研究員の言葉に、マサが口を開く。
「その薫は出発の時、見かけなかったな」
マサが腕組をして話していると、ハルがマサを見つめる。
「まだ、なにかの研究をしていたからじゃないの?」
「……だといいんだがな」
マサの言葉に、ハルは首を傾げた。
「ねぇ、それってどういう意味……」
「あんたは、なにも気にすることはねぇよ」
ハルは、心配な目でマサを見つめた。
だが、マサは前を向いて黙ったままだった。
その後は、目的地に着くまで、気まずい空気が流れた。
しばらくして、目的地の山までやってきた。
マサたちは車からおり、ハルは運転手に近づいた。
「ありがとうございます。後は大丈夫ですから、戻っててください」
「わかりました。お気をつけて」
「はい!」
それから、ハルたちは山を登った。
ハルはユミに、アキナはイグに抱えられていた。
後の三人は、走って登っていく。
「ユミちゃん、重くない?」
「大丈夫ですよ。ハルさんは、軽いくらいです」
「そんなことないでしょ!」
ハルとユミが話していると、マサがため息をついた。
「アキナ、桂木博士のいる研究所は、まだなのか?」
「もうすぐです。ほら、あれです!」
長時間進んでいると、アキナが少し先を指さした。
「けっこう大きい所だね」
やがて研究所に着き、全員辺りを警戒する。
だが、研究所の周辺は、とても静かなものだった。
「もしかしたら、もういないのかな?」
ハルがそう言うと、目の前の自動ドアが開いた。
「入ってこいってことだろうな」
「皆、気をつけろ。なにか罠があるかもしれん」
レンの言葉に、ハルたちは頷き、中へ入っていった。
「誰もいないのかしら……」
中はとても静かで、人の気配はなかった。
しばらく進んでドアを開けると、広い敷地内に出た。
「こんな所があったなんて……」
「ようこそ、いらっしゃいました」
ハルが驚いていると、奥の方から声が聞こえた。
全員が振り向くと、桂木がゆっくり歩いてくる。
「くくく……あなたと直接会うのは、初めてですね」
桂木は、ハルを見つめると、軽く頭を下げた。
「改めて、桂木と申します、神崎ハルさん」
「……ここに来たのは、あなたを止めるためです!」
ハルは警戒しながら、まっすぐ桂木を見つめた。
桂木は、にこやかに笑っていたが、その目線はユミへと移る。
「おや、君はユミ君だね」
「……」
「あの時死んだとばかり思っていましたが、これもハルさん……」
もう一度ハルに視線を戻し、桂木は口角を上げる。
「あなたが、関係しているのでしょうか?」
桂木の問いかけに、ハルは押し黙った。
そんなハルを、ユミは見つめていた。
だが、一歩前に踏みだした。
「私は、ハルさんに救われました。だから、もうあなたとは関係ないです!」
「おやおや、大きく出ましたね」
ユミの発言に、桂木は笑いをこらえていた。
それはまるで、バカにしているように。
しかし、アキナを見つけると、大きく肩を落とす。
「アキナ、あなたにはガッカリですよ」
アキナを見つめる桂木の目は、とても冷ややかだった。
「その者たちを始末しなさいと言ったのに、あなたはなにもできなかった」
「お父さん……」
「ペンダントも失くしてしまうし、本当に悲しいですねぇ」
桂木は、深いため息をついた。
そして、手を二回叩く。
「しかし、君たちは運がいい。私の研究成果を見ることができるのですから!」
「研究成果?」
「さぁ、いらっしゃい!」
桂木が大声を出すと、奥の方から地響きが聞こえてくる。
そして、姿を現したのは、あの巨大生物だった。
「あれが、レンさんたちが言っていた、巨大生物?」
ハルたちがぼう然としていると、桂木が両手を広げて話し始めた。
「どうですか、すごいでしょう! 研究に研究を重ね、やっと作りあげたのです」
桂木は巨大生物に触れ、うっとりした顔をする。
「作品には、名前が必要ですね。では、『アニマキング』と名付けましょう!」
「アニマキング?」
ハルが首を傾げていると、桂木は右手を軽く上げる。
「この指輪も、いい出来じゃないですか?」
桂木は、薬指にはめた指輪を、ハルたちに見せた。
「あなたも、アニマの契約者なんですか?」
「そうでしたが、これは私が、ある研究を元に作り出した物です」
「ある研究?」
「そう、あなたのおかげですよ!」
桂木がそう言って振り返ると、ある人物がこちらに歩いてきた。
「えっ……薫さん?!」




