47 偵察
レンとイグが出発し、ハルたちは談話室に来ていた。
「でも、ハルさんって、けっこう体力あるんですね」
「えっ、どういう意味?」
「普通、契約する時は、ひとり一体だな」
「多くても、二体ですね」
マサとユミに説明され、ハルはぽかんとしていた。
「つまり、どういうこと?」
「多くのアニマと契約するのは、契約者にとってリスクなんだ」
「リスク?」
「私たちが力を使えば、ハルさんに負担がかかるということです」
「そうなの?」
「ですが、ハル殿は俺たちが戦っている時、疲れているようには見えませんでしたぞ?」
「やっぱり、その指輪になにかあるんじゃねぇか?」
「契約者に、負担をかけないようにセーブされているとか、ですかね」
心配するマサたちを見て、ハルは両手を振る。
「大丈夫だよ。これでも、元気なのが取り柄だから!」
ハルが笑顔で言うと、マサが茶化すように笑みを浮かべる。
「でも、山登りとか、ユミを追いかけるのにも、息切れがすごかったみたいじゃないか」
「そっ、それは、昔から体動かすのが苦手なだけだもん!」
「なら、いいけどな」
「マサのお兄ちゃんだけ、お姉ちゃんと話すのズルい!」
マサとハルが話していると、猿渡が間に入ってきた。
「こらっ、邪魔するな、猿渡」
ハルに抱きついている猿渡は、そっぽを向いた。
それに、マサの機嫌は、だんだん悪くなっていく。
「ははは……レンさんとイグさん、大丈夫かなぁ……」
★★★
レンとイグは、アキナに教えてもらった場所に到着していた。
「ここが、桂木博士のいる研究所か」
「油断するなよ。なにがあるか、わからないからな」
二人は高い窓まで飛び、そこから中を覗いた。
中では、桂木たちが研究をしていた。
「まだ奴らは、中にいるようだな」
「またなにか、実験をしているのか?」
「おや、どうやらネズミが二匹ほど、やってきたみたいですね」
桂木は、巨大生物から目を離さずに、レンたちのいる窓を指さした。
「なら、私が始末して参りましょう」
そう言うと、レオの姿が消えていく。
「なぁ、イグ。あの奥にいる生物は、なんだと思う?」
「それよりも、桂木博士の近くに、もう一人アニマがいなかったか?」
レンとイグが顔を見合わせていると、突然二人がはじき飛ばされる。
「ぐっ!」
「やはり、もう一人いたか!」
レンとイグが体制を整えていると、レオが姿を現した。
「その通り。私はカメレオンのレオ」
レオは不敵な笑みを浮かべ、攻撃態勢に入る。
「あの方の邪魔は、させませんよ?」
「レン、お前の炎でなんとかできないか」
「ダメだ。それだと、山火事になってしまう」
レンは少し考え、イグの肩に手を置く。
「イグ、一度戻った方がよさそうだ」
「わかった。シューティングアロー!」
イグは、自身の羽根を無数に出し、矢のように飛ばしてレオの足止めをする。
「ちっ!」
レオが矢を防いでいると、レンとイグは遠くに飛び立っていた。
「……逃がしてしまいましたか」
「あれ、もう終わったのか?」
レオが振り向くと、研究所からネイが出てきた。
「どうやら、偵察に来たようですね」
「それなら、近々あいつらがここに来るな」
「お嬢さんも、あいつらを始末できませんでしたからね」
ため息をつくレオに、ネイは親指を立てて研究所に向ける。
「『あれ』がいるから、大丈夫だろ」
「そうですね。私たちも戻るとしましょうか」
そう言うと、二人は中に入っていった。
★★★
レンとイグは、ハルたちの所に戻っていた。
「二人とも、大丈夫でしたか?」
「あぁ、なんとかな」
「しかし、また桂木博士は、なにかよからぬことを企んでいるらしい」
「よからぬこと?」
ハルの問いかけに、レンが頷いた。
「少ししか見えなかったが、巨大生物がいたよ」
「えっ、じゃぁまた、大型アニマが!」
「それはわからない。だが、桂木博士はそれに、アニマを利用するみたいだ」
「そんな……」
ハルは、力なく椅子に腰かけた。
そんなハルの肩を、ユミが優しく抱く。
「大丈夫ですよ、ハルさん」
「ユミちゃん?」
「二度と、あんなことはさせないようにすればいいのですから」
「そっか……そうだよね!」
ハルがほっとしていると、イグが口を開いた。
「もう一度、あの研究所に行くが、今度は全員で行こうと思う」
「なら、私も連れていってください!」
「アキナちゃん……」
「父の所に行くのであれば、私もついていきます!」
アキナの言葉に、マサが口を開いた。
「あんたは、あの桂木博士の娘だろ。一緒に行って、裏切らないとも限らない」
「マサ殿、アキナ殿も被害者ですぞ!」
「だからって、裏切らない保証はない」
マサとユキが睨みあっていると、ハルが割って入った。
「今は、ケンカしている場合じゃないよ!」
「そうですよ。皆で力を合わせないと!」
すると、イグがマサの肩に手を置く。
「マサには悪いが、アキナも一緒に連れていくつもりだ」
その言葉に、マサはそっぽを向いた。
「出発は、明日の朝だ。早くしないと、桂木博士たちが移動するかもしれん」
「わかりました!」
レンの言葉に、ハルやマサたちは頷いた。




