46 桂木の過去
「マサ殿、皆……アキナ殿のために……」
「ユキ、いつまで花壇を守る気だ?」
「えっ?」
首を傾げるユキに、マサは親指を立てて、ドラゴンに向ける。
「あんたが守るのは、あいつだろ?」
そう言われ、ユキは強く頷いて立ち上がり、マサたちと合流した。
「グオォーッ!」
再び、ドラゴンが氷の刃を放ってくる。
だが、全員が避け、レンとユキが攻撃態勢に入った。
「ユキ、彼女を助けるためだ。同時にいくぞ!」
「承知。火炎!」
「業火!」
レンとユキの炎が、氷の刃を打ち消した。
「かまいたち!」
ユミの風の刃が、ペンダントの鎖に当たり、外すことに成功する。
すかさずイグは、地面を蹴り飛びたった。
「あとは、俺に任せろ!」
イグは右手の手袋を取り、弓へと変形させる。
そして、自身の羽根の矢を、装着した。
「貫けーっ!」
放たれた矢は、落ちていくペンダントに命中する。
そして、粉々に砕けた。
「ガアァーッ!」
ドラゴンは悲鳴を上げ、光りだした。
そして、どんどん小さくなり、アキナの姿に戻っていく。
翼を失ったアキナは、そのまま落下してしまう。
「アキナ殿!」
ユキは強く地面を蹴り、アキナの元へと跳びはねた。
なんとか落下していくアキナを受けとめ、地面に着地する。
「うぅ……」
意識を取り戻したアキナに、ユキは優しく微笑む。
「もう、大丈夫でござるよ。なにも心配はいりませぬ」
ユキの言葉に、アキナは涙を浮かべる。
「ごっ、ごめんなさい……私、とんでもないことを!」
泣きじゃくるアキナを、ユキは優しく抱きしめる。
そこへ、ハルが近づき、アキナの肩に手を置いた。
「気にしなくていいよ。あなたは、なにも悪くないから」
「ハルさん……」
アキナは、潤んだ瞳でハルを見つめる。
そしてハルは、ある疑問を問いかけた。
「ねぇ、教えて。あなたに、この力を与えたのは、桂木博士なんじゃないの?」
ハルの問いかけに、アキナは俯く。
「確かに、父から与えられたものです」
気まずいアキナだが、ユキに背中を叩かれ、強く頷いた。
「お願いです、父を止めてください!」
「もちろん、そのつもりだよ」
ハルも頷き、近くに落ちている、ペンダントの欠片を見つめる。
「こんなこと、もうやめさせなきゃダメだ。それで、桂木博士はどこにいるの?」
「それは……」
アキナが黙っていると、マサがアキナの肩を掴んだ。
「あんた、なにか知っているんだろ。娘なんだからな!」
「マサ、あまり怒鳴らないであげて」
怒るマサを、ハルは必死になだめようとする。
「アキナちゃんも、今は混乱しているだろうから」
「いえ、大丈夫です……」
アキナは涙を拭い、ハルたちを見つめた。
「だけど、私が出ていってから、また移動しているかも」
「それでも、確認してみないとわからないな」
「アキナちゃん、教えてもらっていいかな」
「わかりました……」
それからハルたちは、桂木の研究所の場所を、アキナから聞いた。
「よしっ、そこは俺が調べておこう」
「一人では不安だ。俺も一緒に行こう」
「イグ?」
「空から行った方が、速いだろう?」
「二人だけで、大丈夫ですか?」
「おや、心配してくれるのかい?」
「だっ、だって、なにがあるかわからないですから……」
レンの微笑みに、ハルは顔を赤くする。
その光景に、マサとユミは落ち着かない様子で見つめていた。
★★★
とある山奥の研究所で、桂木はパソコンの画面から顔を上げた。
「やっと成功です。これで、私の研究が正しかったと、あいつらに認めさせられる!」
「よかったじゃねぇか、博士」
「おぉ、やっと出来たのですね!」
桂木が感極まっていると、ネイとレオがやってくる。
「あぁ、長かったよ。何度も、実験を続けた甲斐がありました」
微笑む桂木の前には、巨大な生物が静かに座っていた。
「本当に、長かった……君たちにも、手伝ってもらうよ」
「あぁ、それは構わないぜ。なぁ、レオ」
「そうですよ。あなたの喜びは、私たちの喜びです!」
「ありがとう……」
お礼を言った桂木は、あることを思いだしていた。
それは、ある研究の発表会でのことだった。
発表が終わり、桂木は満足しながら廊下を歩いていく。
すると、ある部屋から声が聞こえてきた。
「会長、本日の発表会はどうでしたか?」
「いやぁ、どれも子どもの発表会かと思ったよ」
会長と呼ばれた老人は、読んでいた書類を机に投げる。
「もっと、レベルの高いものを期待していたんだがねぇ」
「まったく……もう少し興味をひくものを、研究してもらいたいものですよね」
別の男がそう言うと、その場にいた全員が笑いだした。
その笑い声は、部屋の外にまで響いていた。
「特に、あの桂木という奴の論文はひどかった。なにが『アニマの生態』だ、笑わせる!」
ドアの前にいた桂木は絶句し、ふらふらとその場を離れる。
やがて、その表情は怒りに変わり、拳を握りしめた。
「……かせ、おい、博士!」
ネイに呼ばれ、桂木は我に返った。
「なにボーツとしてんだよ」
「すみません、少し過去を思いだしていました」
そして、またパソコンの画面を見つめる。
「さぁ、最終調整をしましょうか……」




