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36 白い小鳥の好きと暴走(前編)

「様子がおかしい……」

「真剣な顔で、なに言っているんだ?」

 唸っているユミに、マサがツッコミを入れる。

「ハルさんのことですよ。ずっとそわそわしているし、高木さんの話をしている時も、うわの空だったんですから!」

「そういえば、高木とはちゃんと話せたのか?」

「もちろんです。ハルさんによろしくと言っていました」

 そして、ユミは考え始めた。

「全部あの電話から、ハルさんの態度がおかしくなりました」

「あぁ、確かこの前かかってきてたな」

「その時、ハルさんの表情が変わったんです!」

「ふむ、ここの番号を知っている奴は少ないだろうからな」

 本を読んでいたイグも、会話に入ってくる。

「もしかしたら、薫からだったかもしれないぜ」

「それなら、私たちに教えてくれてもいいじゃないですか」

「それもそうだな……」

「それに、今日もハルさんはおかしかったんですから!」

 それは、数時間前にさかのぼる。

 ハルは、鏡の前で服を選んでいた。

 それも、真剣な眼差しで。

 そこへ、ユミがひょっこりと顔を出す。

「ハルさん、どこかに出かけるんですか?」

「うん、ちょっと用事があって……」

「なら、私も一緒に……」

「あぁ、ごめん。今日は一人で大丈夫だよ」

「でも……」

 すると、ハルは時計を見て慌てだした。

「やばっ、もうこんな時間!」

 そう言うと、ハルは急いで着替えて、家を出ていった。

 そして、今に至る。

「やっぱりおかしい。ハルさんが、あんなオシャレして出ていくなんて」

「そんなに、気にすることないんじゃないか?」

「なにを言ってるんですか!」

 マサが呆れていると、ユミにきつく睨まれた。

 睨まれたマサは、少し怯む。

「ユミ、そんな怖い顔するなって……」

「そんな悠長なこと、言っていられませんよ」

 ユミの勢いが、とまることはなかった。

「大事な用が、男と会うことだったら、どうするんですか!」

 そう言われて、マサは固まった。

 ユキは戸惑っていたが、イグはお茶をすすっている。

「まっ、まさかハルに限って、それはないだろ」

「わかりませんよ。あんなオシャレしているんですから、否定はできません!」

「確かに、オシャレしたお嬢は、いつもと違ったな」

「可愛かったでござるなぁ」

 イグとユキは、のんきに話している。

 それを聞いたマサの顔は、だんだん青ざめてきた。

「だからって俺たちが、ハルのプライベートにまで、口を出すことじゃ……」

「私、ちょっと見てきます!」

「あっ、おい!」

 マサが止める間もなく、ユミは出ていってしまった。

「ユミの奴、マサの時みたいに暴走しているな」

「あぁなったユミ殿を止められるのは、ハル殿だけかもしれませぬな」

「はぁー……」

 マサは深いため息をつき、窓の外を見つめる。

「……なにもなければいいんだが」

★★★

「見てくると言って、出てきたはいいけど……」

 帽子を被り、変装しているユミは空を見上げる。

「ハルさんがどこに行くか、なにも聞いてなーいっ!」

 突然の大声に、周りの人々が振り返った。

 それに気づいたユミは、足早に歩いていく。

「しまった……こんなところで目立つわけにはいかない」

 呟いていたユミは、あるファミレスの前を通りすぎようとした。

 そこで、ふと中を見ると、そこにいたのは……

「えっ、ハルさん?!」

 窓から少し離れた所に、ハルはいた。

 探していた人物を見つけたため、ユミもファミレスに入った

 中に入ったユミは、辺りを見回す。

「ハルさんは、どこだろう……」

「お一人様ですか?」

「はっ、はい!」

「では、お好きな席にどうぞ」

 店員に案内されると、ユミはハルを探す。

 すると、すぐ近くのドリンクバーに、ハルがいた。

 慌てたユミは席に着き、メニュー表で顔を隠した。

 そんなことを知らないハルは、ユミがいる席から一つあけて座る。

 ハルの対面には、中年でひげを生やした男性が座っていた。

 どうやら会話が盛り上がっているようで、ユミは落ち着かなかった。

「二人は、なにを話しているのかしら……」

 ユミが聞き耳をたてていると、少しずつだが会話が聞こえてきた。

「いやぁ、……付き合ってくれてありがとう」

 男性が、ハルに笑いかけながら言った。

「付き合うですってーっ!」

 ユミは声を抑えていたが、小刻みに震えていた。

「私たちがいるのにぃー……」

 歯を食いしばるユミの耳に、ハルの声が聞こえてくる。

「それで、話とはなんですか?」

「あぁ、この前の大型アニマについて、聞きたいんだよ」

「それは、私じゃなくてもいいのでは?」

「君と、君が契約しているアニマが倒したと聞いているんだが、本当かい?」

「はい、そうですけど……」

 口ごもるハルに、男性は首を傾げる。

「実際は、私を庇ったせいなんです」

「ほぅ、詳しく聞きたいねぇ」

「これ以上は、話せません」

「金ならいくらでも出すよ?」

「お金の問題じゃありません!」

 ハルが断っていると、男性が舌打ちをした。

「ちっ、こっちが優しく聞いていれば、偉そうにしやがって……」

 そして、男性はハルを睨みつける。

「どうせ、契約しているアニマと、いちゃついてたりするんだろ?」

「そんなこと……」

「いいねぇ、契約者様は」

 男性は口角を上げて、持っていたカメラを手に取る。

「ちょっとでも優しくしたら、アニマの奴らは懐いてくれるんだからな」

 その発言に、ユミの中で何かが切れる音がした。

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― 新着の感想 ―
ハルは誰と会っていたんだろう?なんか嫌な人だね… ユミはハルのことが好きなのかな?
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