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35 私は、一人じゃないですから

「そうなると、なぜ穴が出来てしまったのか……お主、思い当たることはないか?」

「えっと……」

 考えていたハルは、ある人物のことを思いだす。

「研究者に桂木って人がいるんですけど、その人の研究が原因かもしれません」

「ほぅ、研究とな」

 『研究』と聞いて、神の遣いは眉をひそめた。

「研究と言っても、実験に近いもので、ユミちゃんもそれに巻きこまれたんです」

「なるほど。大型アニマは、その時に出来たのだな」

「その前にも、いろいろ実験していたみたいです」

「けしからん奴だな」

「もしかして、その実験で時空に穴が出来たんでしょうか」

「関係はあると思うが、確証がないな」

 神の遣いはため息をつき、ハルの指輪を見つめる。

「あと、気になることといえば、お主の指輪のことだ」

「この指輪ですか?」

「あぁ……この世界の者でないお主が、なぜそれに選ばれたのか」

「わかりません……あっ、でも洞窟の扉をくぐった時、声が聞こえました」

「ほぅ、なんと聞こえた?」

「えっと、確か選ばれし者とか言われました。ユミちゃんは神様とか言っていたような……」

 ハルがそう言うと、神の遣いはため息をついた。

「神は、なぜこのような娘を選んだのか。我には理解できん」

「あはは……」

 苦笑いを浮かべたハルは、はめている指輪を撫でる。

「それに、マサと契約した時は必死でしたから……」

 俯くハルに、神の遣いは優しく微笑む。

「知っているさ。あの小鳥のアニマの時も、必死に我に懇願しただろう」

「そっ、そうでしたね……」

 ハルは照れくさくなり、頭をかいた。

「もしかすると、お主がこちらに来たのは、なにか使命があるのかもしれんな」

「使命ですか?」

「そう、たとえば……」

 不敵に笑う神の遣いに、ハルは見とれてしまう。

「その桂木という男に罰を与えるとかな」

「罰って、そんな……」

「アニマの犠牲を考えれば、当然のことだ」

「そうかもしれませんが……」

 真顔で言う神の遣いだが、迷っているハルに首を傾げる。

「なぜ、迷う必要がある?」

「その人は、確かにひどいことをしたかもしれません。だけど……」

 ハルは、胸の前で手を握り、まっすぐ神の遣いを見つめた。

「私が、これ以上罪を犯さないように、止めてみせます!」

 ハルの発言に、神の遣いは呆気にとられていた。

 だが、すぐに笑い始めた。

「はははっ!」

「えっ、笑われた?」

 急に笑われて、ハルは戸惑っていた。

 神の遣いはひとしきり笑って、ハルの方を向く。

「お主は、面白い奴だ。あいつを止めると?」

「もちろんです!」

「多分、一筋縄ではいかないぞ」

「それでも、やります。それに……」

「それに?」

「私は、一人じゃないですから!」

 笑顔で答えるハルに、神の遣いも微笑んだ。

「そうだったな。お主には、仲間というものがあったな」

「はい!」

 すると、どこからかハルを呼ぶ声が聞こえてきた。

「あれ、私の名前?」

「どうやら、そろそろ目覚める時だな」

「えっ、神の遣い様?」

 不安になるハルの頭を、神の遣いは優しく叩く。

「そんな顔をするな。また近いうちに会えるさ」

「えっ、それってどういう……」

 まばゆい光が、ハルの視界を奪う。

 最後に見たのは、微笑む神の遣いの姿だった。

★★★

「おい、ハル、しっかりしろ!」

「はへ? 皆、帰っていたの?」

「帰ったのじゃねぇよ。心配したんだからな」

 目が覚めたハルだが、まだ頭の中がはっきりしない。

 しかし、心配するマサたちを見て、優しく微笑んだ。

「ごめんね、心配かけて……」

 ハルが時計を見ると、もう夕方の五時だった。

「えっ、もうこんな時間なの?!」

 驚くハルに、イグはため息をつく。

「大変だったんだぞ。俺たちが買い物から帰ってきた時、寝ているお嬢を見つけてな」

「少しして、寝言を言い始めたと思ったら、いきなり悲鳴が聞こえて……」

 あぁ、影に飲みこまれた時だ……と、ハルは思った。

 すると、ユキが話し始める。

「俺とマサ殿が帰った時、ユミ殿とイグ殿が慌てていたでござる」

「呼んでも、ゆすっても起きないから、心配したんだぜ」

「そうだったんだ。あのね……」

 頷いたハルは、マサたちに神の遣いのことを話した。

 最初は驚く者や、戸惑う者もいた。

 だが、やがて全員が頷いた。

「ハルの使命ってのは気になるが、まずは、あの桂木の研究をやめさせないとな」

「そうでござるな。もう、ユミ殿みたいな子を増やさないためにも……」

「ユキさん……」

「そうだね。でも、どこにいるかもわからないし……」

「こういう時こそ、俺を頼ってくれてもいいのに」

 全員が声のする方を向くと、庭にレンが立っていた。

「レンさん、お久しぶりです!」

「あぁ、久しぶり」

 ハルがレンに近づくと、マサは不機嫌な顔になる。

 レンに会えて、ハルが喜んでいるのが気に食わないのだ。

 それを知らないハルは、レンに問いかける。

「なんで、レンさんがこんな所に?」

「たまたま、近くを通りかかったから寄ったんだ」

 レンは、ハルの頭を優しく撫でる。

「桂木の隠れ家は、俺が探してみるよ」

「そんな、危ないんじゃ……」

「大丈夫、うまくやるさ」

 すると、レンは微笑み去っていった。

 レンが去った方を見つめるハルに、マサが近づく。

「ハル、桂木のことは、レンに任せようぜ」

「うん、そうだね……」

 ハルが頷いた時、家の電話が鳴った。

 電話をとると、少ししてハルの表情が変わる。

 ユミは、その変化を見逃さなかった。

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― 新着の感想 ―
ハルちゃんは桂木をこらしめるために来たの??どうなんだろう…?いきなりだったもんね〜。 でも、みんなが困ることにならないようにできればいいですよね♪ レンは何か知ってるのかな〜?
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