34 夢の中の対話
ある日の午後、ハルはリビングでくつろいでいた。
「はぁー、やっぱり家は落ち着くわ……」
なんか、前にも言ったような……と、ハルは首を傾げる。
しかし、日差しの暖かさに、睡魔が襲ってくる。
「今日は、皆出かけているからいっか」
現在、家にはハル一人である。
マサとユキは、公園でトレーニング中。
ユミとイグは、商店街に買い物に行っているのである。
そのため、ハルはのびのびとしていた。
「皆、まだ帰らないし、ちょっと昼寝でもしようかな」
そして、座布団を持ってきて、枕がわりにする。
横になったハルは、すぐ眠ってしまった。
★★★
夢の中で、ハルは思いっきりはしゃいでいた。
「すごーい! 私、空飛んでるよ!」
今のハルは、空高く飛んでいた。
下を見れば、街が小さくなっている。
「空飛ぶのって、こんなに気持ちいいんだ」
ハルが自由に飛んでいると、遠くに黒い影を見つける。
「ん? あれ、なんだろう……」
立ち止まったハルは、それをじっと見つめる。
すると、影はどんどん大きくなり、ハルに近づいてくる。
「ヤバい、逃げなきゃ!」
ハルは、急いでその場から離れた。
だが、黒い影は速度を上げ、ハルに追いついてくる。
「やだ、来ないで!」
やがて追いつかれ、ハルは影に飲みこまれてしまう。
「きゃあぁーっ!」
暗闇の中、ハルの叫びだけが響いていた。
何もない空間で、ハルは倒れていた。
気を失っていたハルのところに、光の玉がやってくる。
「おい、いつまで寝ているんだ」
「うぅ……」
やがて、ハルは目を覚ますが、まだ状況が飲めないでいた。
「ここ、どこだろう……」
周りが真っ暗なため、不安を覚える。
しかし、目の前にいる光の玉を見つけ、首を傾げた。
「なんで、これだけ輝いているの?」
「ふんっ、やっと起きたか」
「ひえぇっ、しゃべった!」
予想していなかったことに、ハルは驚く。
「そんなに、驚くことはなかろう。一度、会っているのだから」
「えっ、会っている?」
すると、光の玉は大きくなり、神の遣いの姿になった。
「かっ、神の遣い様?!」
「やっと、我だとわかったか」
「じゃぁ私、またあの場所に行ってしまったんですか?」
「いや、今回は我が、お主の夢の中に入っているのだ」
「そんなことが、可能なんですか?」
「我に、不可能は無い」
すごい自信だなと、ハルは思ったが、黙っていることにした。
「おい、どうした。なぜ黙っている?」
「いえ、大きいからか、圧がすごくて……」
「ふむ……なら、これでどうだ」
神の遣いは少し考え、脚を鳴らした。
すると、だんだん小さくなり、人の姿になった。
「これなら、少しは話しやすいのではないか?」
その姿は、見た目が二十歳ぐらいで、長い銀髪を一つに結い上げていた。
そして、頭に鹿の角があり、切れ長の瞳はキレイな赤い色をしている。
「かっこいいですけど、なぜ着流し?」
「おや、現世では、皆こういうのを着ているのではないか?」
「今、そういうのを着ている人は少ないですね」
しかも、蛇の模様は珍しいんじゃないかな……と思ったが、また黙ることにした。
「まぁ、よかろう。そろそろ、この景色にも飽きただろうからな」
神の遣いが指を鳴らすと、景色が変わり、ハルの知る公園へと変わった。
「えっ、ここって近くの公園?」
「その通り。お主の記憶から借りたのだ」
そして、神の遣いは、近くのベンチを指さす。
「さぁ、少し話そうか」
「はっ、はい……」
ハルは、恐る恐る神の遣いについていく。
二人はベンチに腰かけ、静かに時が流れる。
その空気に耐えられず、ハルが口を開いた。
「あっ、あの、話ってなんでしょうか」
「あぁ、あの小鳥のアニマは、元気にしているのか?」
「はっ、はい。この間、私と契約しました」
「そうか、それはなによりだ」
「あのー、話ってそれだけですか?」
「そんな訳あるまい」
「ですよねぇ……」
苦笑いを浮かべるハルを、神の遣いは真顔で見つめる。
「あの、私の顔になにかついていますか?」
「いや、お主の気配が、この世界の者たちと違うと思ってな」
「あっ、それはそうだと思います」
ハルは、この世界に来た時のことを、神の遣いに話した。
「ふむ……その黒いものに吸いこまれて、こちらに来たと?」
「はい……アニマがいること以外は同じなので、最初はわかりませんでした」
「もしかすると、何かの現象が原因で、時空にゆがみが出来たのかもしれん」
「ゆがみ、ですか?」
話についていけず、ハルは首を傾げる。
「つまり、世の理に反したことをすれば、時空に穴が出来てしまう、ということだ」
「なっ、なるほど……」
頷くハルだが、目が泳いでいるのを、神の遣いは知っていた。
「お主、わかっていないだろう」
「そっ、そんなことないですよ!」
ハルは否定したが、神の遣いにはバレバレだった。
「お主には、ちと難しかったな」
「大丈夫です。その出来てしまった穴に、私は吸いこまれたってことですよね?」
「その通りだ」
頷く神の遣いを見て、ハルはほっとする。
しかし、ほとんど理解できなかったことは、秘密である。




