29 作戦会議を始めたいと思います!
かほの発言に、ハルたちは驚いていた。
「かほ、あんたなに言っているか、わかっているのか」
「えぇ、わかっているわよ?」
呆れるマサに、かほは首を傾げる。
「私はマサの契約者だったんだから、連れて帰っても問題ないでしょ?」
「勝手にやめといて、俺がついていくとでも?」
「それは、さっき謝ったじゃない!」
「まっ、まぁ二人とも、落ち着いて……」
「そうだわ、あなたのせいね!」
「はい?」
言い合いが終わらないため、仕方なくハルが割って入った。
しかし、かほはとまらず、今度はハルに食ってかかる。
「かほさん、なに言って……」
「あなたがマサに、なにか吹きこんだのね。前は聞きわけがよかったもの」
「おい、ハルは関係ないだろ!」
「ほら、そうやって私じゃなく、彼女を庇うのね!」
そして、かほはまた両手で顔を覆い、泣く真似をした。
その行為に、マサは戸惑いを見せた。
「おっ、おい、なにも泣かなくても……」
「いや、あれは泣いてないと思うぞ」
「女子は怖いでござるな……」
イグとユキが小声で話していると、かほから睨まれた。
これ以上はラチガあかないと思い、マサはため息をつく。
「わかった、俺がついていけばいいんだろ」
「本当? うれしい!」
すぐ笑顔になったかほは、マサの腕に自らの腕を絡める。
「外に、車を待たせているのよ」
「おっ、おい待て、かほ!」
「じゃぁ、私たちはこれで失礼するわね」
そして、そのままかほは、マサを連れて家を出ていった。
「なんだか、嵐のような方だったでござるな」
「あんな女もいるんだな。お嬢、どうした?」
ハルは、ずっと俯いたままだった。
なんだろう、この気持ち……と、ハルは胸に手を当てる。
すると、イグがハルの頭を優しく撫でた。
「イグさん?」
「お嬢は、マサが他の女に取られるのが嫌なんだろう?」
「えっ、そんなこと……」
「まぁ、気持ちはわかるぞ。ちなみに、俺はあの女は嫌いだ」
「そんな、はっきり言わなくても……」
「マサだってそうだ。お嬢のために、ついていったと思うぞ」
「私のために?」
首を傾げるハルに、イグは頷く。
「あのままだと、お嬢が悪者にされていただろ?」
「確かに、責められていたでござるからな」
「さすがに、気になっている女が責められるのは、嫌だろうからな」
「気になっている女?」
「おっとすまない、忘れてくれ」
イグは咳ばらいをして、話をごまかした。
★★★
その頃、車の中では、かほがマサに寄り添っていた。
「なぁ、かほ。少し離れてくれないか?」
「あら、どうして?」
「もう俺たちは、そういう関係じゃないだろ」
「別にいいじゃない。それとも、あの子が気になる?」
「別に、そんなことないさ……」
かほが顔を近づけると、マサは顔を背けた。
「ふふっ、可愛い」
「からかうな! それより、あの時の奴は、まだいるのか?」
「えぇ。今はうちでお留守番しているんじゃないかしら」
「そうか……」
「大丈夫よ、マサ。心配しなくても、これからはずっと一緒なんだから……」
そう言ってかほは、マサの頬を撫でた。
★★★
ユミは帰り道を歩いていた。
すると、横を黒い車が通っていく。
そして、その車の中にいる人物に、ユミは驚いた。
「えっ、マサさん? それに、隣の人は誰?」
ユミは首を傾げたが、そのまま帰ることにした。
しばらくして家に着き、中に入ったユミは、また驚く。
「なっ、なんですか、この空気は!」
なぜなら、ハルたちの空気があまりにも重かったからだ。
「ユミちゃん、おかえり……」
「おかえりじゃありません! 一体、どうしたんですか?」
「マサ殿が、かほという女子に、連れていかれたのでござる」
「連れていかれた?」
そして、ユミは先ほどのことを思いだす。
「あぁ、だから車にマサさんが乗っていたんですね」
「それっきり、お嬢がこんな調子でな」
「なるほど、そういうことでしたか」
すると、ユミはハルの手を強く握りしめた。
「大丈夫ですよ、ハルさん!」
「えっ?」
ハルが驚いていると、ユキのお腹が盛大に鳴った。
「その前に、夕食にしませぬか?」
それから夕食をとり、四人はテーブルを囲み座っていた。
「これより、マサさんを取り戻すための、作戦会議を始めたいと思います!」
「ゆっ、ユミちゃん?」
「妙にはりきっているな」
「もしかして、楽しんでいるのでは?」
「そこっ、うるさいですよ!」
ユミのやる気に、全員呆気にとられていた。
「ユミちゃん、取り戻すって、なにもそこまでしなくても……」
「なにを言っているんですか、ハルさん!」
勢いよく近づいてきたユミに、ハルは思わずのけぞってしまう。
「マサさんも男です。女性に言い寄られて、心が揺らがないとも限りません」
「それはないと思うがな」
「わかりませんよ?」
「そういえば、かほ殿は、可愛らしい女子でござったな」
「ほら、やっぱり!」
ユキの発言に、ユミは素早く指をさす。
「これは、急がないといけませんね!」
「ユミちゃん、そんなはりきらなくても……」
ハルは止めようとしたが、ユミには届いていなかった。
それに気づいたハルは、ため息をついたのだった。




