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25 通い合った心

 ハルがそばに行くと、猿渡は絵を描いていた。

「へぇー、君、絵を描くの上手いね」

 その言葉に、猿渡は顔を上げ振り向く。

 だが、すぐスケッチブックの方を向いてしまう。

「なに描いているの?」

「……」

「お姉さんも、見てみたいなぁ」

「……」

 なにを話しかけても、猿渡は無言である。

 やっぱり、話してはくれないか……と、ハルは肩を落とした。

 困り顔のハルだったが、もう一度猿渡に話しかけた。

 今度は、しゃがんで目線を合わせるようにする。

「はじめまして。私はハルっていうの。あなた、お名前は?」

「……猿渡あきら」

「そっか、あきら君っていうんだね」

「お姉さん、さっきあのお兄さんから聞いていたよね」

「えっ?」

 驚くハルをよそに、猿渡は離れた所にいるレンを指さした。

「僕、ちゃんと聞こえてたよ」

 ハルを見つめる猿渡の顔は、無表情だった。

 それから、また絵を描き始める。

「じゃあ、私たちの話、全部聞こえてたの?」

 ハルが不安げに聞くと、猿渡は頷いた。

 あちゃー、なら私にも警戒心が強くなるわけだと、ハルは頭を抱えた。

 どうしようか迷っていたハルだが、強く頷いて振り向いた。

 すると、猿渡と目が合った。

 猿渡も、ハルをじっと見つめていたのである。

「あれ、どうしたの?」

「お姉さん、なんか見てて面白い」

「そっ、そうかなぁ」

 ハルは照れを隠すように、頭をかく。

 しかし、猿渡の声は小さく、不安が感じられた。

「ここの人たちは、皆どこか隠し事しているみたいで、嫌だった」

「そっ、そっか……」

 ハルも思い当たることがあったので、後ろめたかった。

「私も、君の名前を知っていたのに、言わなかったよね。ごめんね?」

 ハルが謝ると、猿渡は首を横に振った。

「謝らなくていいよ。でも、お姉さんとてもわかりやすいね」

「えっ、そんなに?」

「思っていること、全部顔に出ちゃってるんだもの」

 猿渡に言われて、とっさにハルは顔をおさえる。

 しかし、次の猿渡の言葉に、ハルは思わず二度見することになる。

「お姉さんなら、いろんな人たちとうまくいくね」

「はぅっ!」

 ハルは、猿渡の何気ない一言に、大ダメージを受けた。

 それはもう、雷が落ちたような衝撃だった。

 ハルがよろけたので、猿渡は驚いて近寄る。

「お姉さん、大丈夫?」

「へっ、平気だよ……」

 小さい子は、思ったことをそのまま言うから、怖いわ……と、ハルは苦笑した。

「えっとね、お姉さんはアニマの人たちはいるけど、人間のお友達は少ないのよ……」

「そうなの?」

「うん……人付き合いも苦手だしね」

「ふーん……」

 猿渡は、ハルの話を聞きながら、絵を描いていた。

「さっきから、なにを描いているの?」

「お姉さんだよ」

「本当?! 見せて見せて!」

「うん、いいよ」

 ハルは、猿渡から絵を受け取る。

 そして、予想外の絵に驚愕した。

「なんで、私が困った顔をしているところなのよ!」

「だって、一番面白かったんだもの」

 この子の感性が、まったくわからん……と、ハルはまた苦笑した。

 そして、そっと猿渡の頭を撫でた。

 猿渡は、くすぐったそうに照れ笑いをする。

「でもお姉さん、人付き合い苦手って言っていたけど……」

 照れを隠すように、猿渡はマサたちに視線を向ける。

「あのお兄さんたち、お姉さんといると楽しそうだよ」

「えっ、本当?」

 ハルが振り向くと、ユキやユミが手を振っていた。

 それを見て、ハルはそっと微笑んだ。

「ふふっ、本当だね」

 そう言ってハルは、マサたちに手招きをした。

 マサたちがやってくると、猿渡はハルの後ろに隠れてしまう。

「俺たちのこと、警戒しているみたいだな」

「あきら君、皆なにもしないよ?」

「……」

「さっきまで、ハルさんとおしゃべりしていたのに」

「まだ、他の者は怖いのでござろう」

 レンたちが話していても、猿渡はハルの服を握って離さない。

「おい、このお姉さんは、そろそろ帰らないといけないんだぜ」

「えっ……」

 マサの言葉に、猿渡は小さく声を発した。

「そっか、あまり家を留守にするのもなぁ」

 苦笑したハルは、猿渡に目線を合わせるためしゃがんだ。

「じゃぁあきら君、また遊ぼうね。今度は、ちゃんと可愛く描いてよね?」

「もう行っちゃうの?」

「うん、そうだよ?」

 ハルの言葉に、猿渡は不安な顔をして俯く。

 だが、その握られた手を、ハルは優しく握りしめた。

「大丈夫、なるべく早く、会いにくるからね」

「うん……」

 ハルがまた、猿渡の頭を撫でていると、薫がやってきた。

「あれ、こんなところで集まって、どうしたんだい?」

「今、この少年とハルが話していたんだよ」

 レンが猿渡を指さすと、薫は納得したように頷く。

「あぁ、猿渡君ね。もう、彼と仲良くなったのかい?」

「はい、絵も上手で、私のことも描いてくれたんですよ!」

「へぇ、すごいね!」

「薫、ハルには、不思議な力があるのかもしれないな」

 薫とレンが話していると、ある人物が近づいてきた。

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― 新着の感想 ―
思っている事が顔に出るという事は「嘘がつけない」という事であり、それは「裏表がない」という事にもなりますからね。 それは間違いなく、彼女の美徳であると思います。
あきらくんはハルちゃんのこと気に入ったのかな〜? ハルちゃんには、何かみんなを惹きつける力があるのかな?
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