22 脱出
無数の黒い影たちは、ハルたちを捕まえようと迫ってきた。
「あの時、洞窟で襲ってきた影だわ!」
「ハルさん、しっかり掴まっていてください!」
ユミが、羽ばたいてスピードを上げた
すると、一部の影が姿を変える。
それに見覚えがあったハルは、驚きを隠せなかった。
「えっ、あれってユリアって子じゃ……」
その姿は、大型アニマに取りこまれたユリアの姿だった。
「あははははっ!」
ユリアの影は、笑いながら二人に迫ってくる。
「私を殺しておいて、一人だけ生き返ろうなんて、許しませんわ!」
「ユリアさん……」
ユリアの顔は、狂気に満ちていた。
ハルたちを捕えようと、手を伸ばしてくる。
「ひぃっ!」
「絶対、捕まるわけにはいかない! かまいたち!」
「ぎゃあぁーっ!」
ユミの風の刃が当たり、ユリアの影は消える。
ハルたちは、影を振り払うように飛んでいく。
その頃、マサとユキは影たちと戦っていた。
「ハル殿は、一体どうなってしまったのでござるか」
「俺たちは、まだ生きている。だから、ハルも大丈夫だ!」
「しかし……」
「今は、戦いに集中しろ!」
「言われなくても!」
二人が戦っていると、割れた地面からハルたちが現れた。
「マサ、ユキ!」
「ハル殿、ご無事でござったか!」
ユキが喜んでいると、ユミが慌てだした。
「話は後です!」
「えっ、ユミ?」
「また、影たちが集まってきています」
ユミがそう言うと、アニマの姿になった影が襲ってくる。
「あはははっ!」
「くっ!」
「とにかく、ここから逃げてください!」
「皆、早く扉の方へ!」
そして、四人は扉に向かっていった。
影たちとも戦いながら走っていると、扉が見えてきた。
「もう少しよ、皆頑張って!」
しかし、だんだん扉が閉まってきていた。
「待って、閉まらないで!」
「ハル、皆も急ぐんだ!」
レンの声が響く中、扉は止まらない。
すると、一つの影がハルを掴もうとする。
「えっ……」
「させません! かまいたち!」
ユミの風の刃が、影に当たりはじけた。
マサとユキが抜けだし、閉まるギリギリで、ハルとユミも抜けだした。
「あはははははーっ!」
閉まる寸前、影たちの笑い声が響き渡る。
そして跡形もなく、扉は消えていった。
「消えた?」
「多分、神の遣い様が、もう誰もあの場所に来ないようにしたんだと思います」
「そっか……許してもらえたのかな」
「わかりません……でも、私はここにいます」
「うん、また会えてうれしいよ!」
二人が微笑みあっていると、レンと薫が近づいてくる。
「ちょっと、大丈夫?」
「あっ、薫さん。それにレンさんも」
「急に飛びだしてくるから、びっくりしたよ」
ほっとした薫だったが、ふとハルの隣にいる、ユミに目が留まる。
「あれ、君は確か……」
薫が言い終わる前に、洞窟が揺れ始めた。
「全員、急いで出口に走るんだ!」
レンの指示で、ハルたちは全速力で、出口に向かった。
どんどん揺れは大きくなり、ハルはつまずいてしまう。
「きゃぁっ!」
「ハル!」
マサが駆けつけようとすると、レンが先に駆けつける。
「ハル、大丈夫かい?」
「はっ、はい。なんとか……」
「ほら、しっかり掴まって」
レンに抱えられて、ハルは少し照れてしまう。
その二人を見て、マサは眉間にしわを寄せる。
全員が外に出たところで、大きな岩が動き、出口をふさいだ。
そして、岩に書かれていた文字も、きれいに消え去った。
「もうここには、立ち入らない方がよさそうだな」
レンが、洞窟の方を見て呟いた。
「そうですね……あと、レンさん」
「なんだ?」
「そろそろ下ろしてもらえると、助かるんですが……」
「あぁ、すまない」
うぅ……まだ、ドキドキが止まらないよぉ……と、ハルは胸をおさえながら離れた。
それを見ていたマサは、より不機嫌な顔になる。
「マサ殿、また顔が怖いでござるよ?」
「……ほっとけ」
「マサ、なにを怒っているの?」
「なんでもねぇよ。それより、ユミをよみがえらせたんだな」
「うん……ちょっと、いろいろあってね」
「あぁっ、思いだした!」
ハルが苦笑いを浮かべていると、薫の声が響いた。
「薫さん、どうしたんですか?」
「思いだしたんだよ。君は確か、資料に載っていた子だね」
薫はそう言うと、ユミを指さした。
驚いたユミは、慌ててハルの後ろに隠れてしまう。
「あぁ、驚かせてすまない。でも、本当に『黄泉がえり』はあったんだ」
子どものように、目を輝かせている薫は、ハルに視線を向ける。
「お手柄だよ、ハルさん!」
そう言われて、ハルは少し俯いた。
「私は、別にそんなつもりじゃなかったです。ただ、この子に会いたくて……」
「それでも、君は大したことをしたんだよ」
薫がほめても、ハルは俯いたままである。
それに肩を落とした薫は、次にユミを見つめた。
「君はユミ、と言ったね。私の研究に、付き合ってくれないかい?」
『研究』というフレーズに、反応したのはハルだった。
「研究はダメです!」
「あら、なんで?」
「そのせいで、この子は辛い思いをしました。もう、ひどいことしないでください!」
薫はきょとんとした顔で、首を傾げた。
「ひどいことなんてしないよ。ただ、身体検査するだけだから」
「検査?」
今度は、ハルが首を傾げた。
「彼女はよみがえったわけだから、その体がどうなっているか、調べる必要があるしね」
「なら、私も一緒に付き合います」
「まぁ、好きにしたらいいさ」
そして、薫は意気揚々と、山を下りていった。
ハルたちも、遅れないように後に続いていく。
すると、レンがハルに話しかけてきた。
「まさか、本当に連れて帰ってくるとは思わなかったよ」
「ははは……」
その言葉に、ハルは苦笑いを浮かべる。
だがレンは、ハルの頭を優しく叩いた。
「君は、やっぱりすごい子だね」
「そんなことないです。今回は、たまたまよかっただけで……」
ハルは俯いたまま、前に歩きだした。
それを見送ったレンは、洞窟の方を振り返ったが、また前を向き歩いていくのだった。




