17 研究所
「ここが研究所かぁ、すごく広いね」
とある某日、ハルたちはある研究所を訪れていた。
その研究所の裏には、大きな山もあった。
ハルが周りを見回していると、マサが肩を叩く。
「ハル、あまり不審な行動をするなよ」
「不審て……ただ辺りを見ているだけじゃない」
「だが、そわそわしているし、落ち着きがないんだよ」
「しょうがないじゃない。こういう場所に来るの、初めてなんだから」
「まぁまぁ、お二人とも。ケンカはいけませぬぞ」
「「ふんっ!」」
ユキが止めに入ったが、ハルとマサはお互いそっぽを向いた。
「おやおや、来て早々ケンカかい?」
「あっ、レンさん!」
ハルはすぐ機嫌をなおし、レンに駆け寄る。
それを見たマサは、さらに機嫌を悪くした。
「マサ殿、顔が怖いでござる……」
怯えるユキに、レンも気づいて苦笑いをする。
「ハル、あまり俺に近づかない方がいい」
「えっ、どうしてですか?」
「嫉妬でひっかかれたくはないからね」
言葉の意味がわからず、ハルは首を傾げる。
「しかし、今日はよく来てくれた。さぁ、中に入ってくれ」
仕切り直したレンは、ハルたちを研究所の中へと促した。
なぜ、ハルたちが研究所を訪れているのか。
それは、こんな会話があったからである。
★★★
「レンさん、もっとアニマについて教えてください!」
突然ハルがそう言いだしたので、レンは食べていた団子を落としそうになる。
「ハル、いきなりどうしたんだい?」
「私、まだアニマや契約者について、知らないことが多いなと思って……」
「そうだね。なら、少しおさらいもかねて説明しようか」
「はい!」
「ルールは、少し知っているね」
「はっ、はい。えっと、確か……」
ハルは頬に手を当てながら、思いだそうとする。
「人間を攻撃してはいけないこと。契約者が死ねば、そのアニマも死ぬこと」
「その通り。それに、お互いの場所などは気配でわかることだね」
「あっ、そうでした!」
ハルは頷き、はめている指輪を見つめた。
「それに、契約をしたら、アニマは思いっきり力を出せるんですよね」
「そうだよ。あと、その契約の指輪なんだが……」
ハルの指輪に、レンが手を重ねてくる。
「すぐ外して、契約をなしにできるんだ」
「契約って、そんな簡単にやめれるんですか?」
「あぁ。だが、アニマにとっては平等ではないな。力がまた制御されてしまうのだから」
「そうですよね……契約者の一存で決められちゃうんですもん」
「そういえば、あのタカトって奴が、指輪を外して逃げたんだったな」
「しかも、イグ殿たちを見捨てて……」
「まぁ、誰でも自分の命が大事だよ」
レンの言葉に、その場に気まずい空気が流れる。
「そうだ! そろそろ休憩もかねて、昼食にしない?」
「おぉ、それはいい考えだ」
「あんた、まだ食うのかよ」
ハルの提案に喜ぶレンを見て、呆れるマサだった。
それから昼食をとり、レンがふと時計を見る。
「では、そろそろ俺は失礼するとしよう」
「えっ、まだいたらいいのに」
「そうもいかないよ。俺には役目があるからね」
「アニマがちゃんと、契約できるかってことですよね」
頷くレンを見て、ハルはある疑問が浮かんだ。
「そういえば、どうしてアニマたちは、契約の指輪を持っているんですか?」
「それは、政府のお偉いさんが配ったんだよ」
「政府?」
「確か、『人間とアニマの交流の証』として、アニマたちに配ったと聞いたな」
レンはそう言うと、席を立って玄関に向かう。
「あぁ、そうだった。これを言っておかないと」
レンは急に立ち止まり、ハルたちの方に振り向いた。
「俺は、君たちに協力することに決めたよ。なにかあれば、頼ってほしい」
「本当ですか! そう言ってもらえるだけでも、すごく有り難いです」
「あと、俺の知り合いの研究者が、君たちに会いたいと言っているんだ」
「研究者、ですか?」
『研究者』と聞いて、ハルの顔が曇る。
それに気づいたレンは、ハルの手を優しく握った。
「大丈夫、そこはとても良心的な所だよ。安心するといい」
そしてレンは、懐から小さな地図を取り出した。
「まぁ、よく考えておいてくれ。イグもハルに会いたがっていたからな」
「イグさんが?」
「アニマ専用の、病院があると言っただろう。その研究所の敷地内にあるんだ」
「……一応、考えてみます」
ハルが受け取ったのを確認して、レンはドアを開け出ていった。
「受け取っちゃったけど、どうしよう……」
「なぜ、悩んでいるのでござるか?」
ずっと地図を見つめているハルに、ユキは首を傾げる。
「だって、研究所に行ったら、マサやユキがユミちゃんみたいに……」
ハルは、大型アニマになったユミの姿を思いだしていた。
「そんなことになったら、私……」
「大丈夫だ、ハル」
震えているハルの肩に、マサが優しく手を置く。
「レンも言っていただろ? その研究所は良心的な所だって」
「う、うん……」
「それに、皆があの桂木みたいな奴らばかりじゃないはずだぜ」
「そうでござるよ!」
「マサ、ユキ……」
「あと、そこに行けば、元の世界に戻れるヒントがあるかもしれないしな」
「そうか、そうだね。イグさんにも会いたいし、一度行ってみようかな」
「……俺はずっと、ここにいてくれてもいいんだがな」
「マサ、なにか言った?」
「なんでもねぇよ」
リビングに戻るマサを、ハルは首を傾げながら見つめた。
こうしてハルたちは、あの研究所を訪れたのである。




